執事・メイド・従僕・使用人について。あらゆる作品が対象。出版元の詳細は記事中の作品名をクリック。amazonに行けます。
執事たちの足音
メイドの名前の定番
この間のブログに「執事の名前といえばセバスチャン」を書きました。
では、メイドの名前といえば?
メアリー? ベッキー?(あ、これは「小公女」)
とにかく短い名前でしょう。呼びやすいように。
とまあ、あれこれ思いをはせていたところ、こんなのを見つけました。
19世紀英国のサーヴァントservantの生活ついて書かれた、
Frank Dawes著 Not in Front of the Servants からの引用です。(太字は筆者)
19世紀、メイドの名前はメアリーやジェーンが普通だったようです。
(たとえば)エイダやマリオンなどの一般的でない、
思い上がった名前は許されなかった、とまで書いてあります。
さらには、主人は使用人の名前を勝手に変えたりもしてました。
(この頃の召使に「人権」なんてありゃしません)
当家のご令嬢とメイドの名前がおなじ、なんてことは、お嬢さまに失礼なのでしょう。
とうぜん、名前(呼び名)を変えられるのは、メイドのほうです。
この本の著者あてに送られた、
19世紀の祖母の邸宅での思い出をつづった方の手紙によると、
なんと、受け持つ仕事で名前が決められていた。(名付けるのは女主人。)
メイド頭がエミリー、その下のメイドがジェーン、
コックがシャーロット、キッチンメイドがメアリー。
新しく雇われたメイドふたり、本名がそれぞれジェーンとメアリーだとして、
ジェーンがキッチンメイドを受け持てばメアリーと呼ばれ、
メアリーがセカンド・メイドに就けばジェーンと呼ばれる。
ああ、ややこしい、と思うのは使用人側からの視点であって、
女主人からいえば
「メイドが変わるたびに、下々の名前なんかいちいち覚えてられないワ」
…ごもっとも。
downstairs(階下=地下にいる使用人たちを指す代名詞)の世界では、
使用人どうしの恋愛はご法度でした。
好きな相手の本当の名を知る(または自分のを教える)ことは、
胸のトキメク恋の喜びだったのではないだろうか。
(ここらへんの微細な使用人どうしの関係は、
ロバート・アルトマン監督・脚本の映画「ゴスフォード・パーク」につぶさに描かれています。)
最近、メイド萌えで話題の漫画「エマ」。(作者:森薫)
メイドの名前で、エマってぇのは、どうなんでしょう?
ジェーン・オースティンの小説「エマ」が有名なので、
「名家のご令嬢」というイメージがあるのですが。
(もちろん、漫画「エマ」もそうしたイメージをねらっているのでしょうが)
新しく勤めるお屋敷での面接で、ハウスキーパーから名字を問わたエマは、
「…ただ エマ と」
と答えます。(第3巻)
このことから推察するに、
幼かった孤児エマを雇って、いちから教育をほどこした
前のエマの女主人、亡きケリーさんが名付けた、とも考えられます。
もとはガヴァネス(家庭教師)をなりわいとしていたケリーさん。
「私ね 前から 思ってたのよ。教育ってのが どれほどの ものなのか」(第2巻)
ありがちなメイドの名前を与えないことが、
ケリーさんの教育魂のあらわれではないか、と。
(漫画をじっくり読んでの想像。)
では、メイドの名前といえば?
メアリー? ベッキー?(あ、これは「小公女」)
とにかく短い名前でしょう。呼びやすいように。
とまあ、あれこれ思いをはせていたところ、こんなのを見つけました。
19世紀英国のサーヴァントservantの生活ついて書かれた、
Frank Dawes著 Not in Front of the Servants からの引用です。(太字は筆者)
Mary or Jane were common generic names for survant girls. Anything varying from the norm (Ada, or Marion, perhaps) was pretentious, and not allowed. |
19世紀、メイドの名前はメアリーやジェーンが普通だったようです。
(たとえば)エイダやマリオンなどの一般的でない、
思い上がった名前は許されなかった、とまで書いてあります。
さらには、主人は使用人の名前を勝手に変えたりもしてました。
(この頃の召使に「人権」なんてありゃしません)
Even the kindliest of employers seemed to regard thier servants as chattels, thinking nothing, for instance, of changing thier names arbitrarily if they happened to clash with those of “family.”(同上引用) |
当家のご令嬢とメイドの名前がおなじ、なんてことは、お嬢さまに失礼なのでしょう。
とうぜん、名前(呼び名)を変えられるのは、メイドのほうです。
この本の著者あてに送られた、
19世紀の祖母の邸宅での思い出をつづった方の手紙によると、
…maid were called by the names which that vererable lady had chosen for each position. Thus the head maid was always Emily, the next Jane, the cook Charlotte and kitchenmaid Mary. Whatever their own names happend to be, they were ignored. |
なんと、受け持つ仕事で名前が決められていた。(名付けるのは女主人。)
メイド頭がエミリー、その下のメイドがジェーン、
コックがシャーロット、キッチンメイドがメアリー。
新しく雇われたメイドふたり、本名がそれぞれジェーンとメアリーだとして、
ジェーンがキッチンメイドを受け持てばメアリーと呼ばれ、
メアリーがセカンド・メイドに就けばジェーンと呼ばれる。
ああ、ややこしい、と思うのは使用人側からの視点であって、
女主人からいえば
「メイドが変わるたびに、下々の名前なんかいちいち覚えてられないワ」
…ごもっとも。
downstairs(階下=地下にいる使用人たちを指す代名詞)の世界では、
使用人どうしの恋愛はご法度でした。
好きな相手の本当の名を知る(または自分のを教える)ことは、
胸のトキメク恋の喜びだったのではないだろうか。
(ここらへんの微細な使用人どうしの関係は、
ロバート・アルトマン監督・脚本の映画「ゴスフォード・パーク」につぶさに描かれています。)
最近、メイド萌えで話題の漫画「エマ」。(作者:森薫)
メイドの名前で、エマってぇのは、どうなんでしょう?
ジェーン・オースティンの小説「エマ」が有名なので、
「名家のご令嬢」というイメージがあるのですが。
(もちろん、漫画「エマ」もそうしたイメージをねらっているのでしょうが)
新しく勤めるお屋敷での面接で、ハウスキーパーから名字を問わたエマは、
「…ただ エマ と」
と答えます。(第3巻)
このことから推察するに、
幼かった孤児エマを雇って、いちから教育をほどこした
前のエマの女主人、亡きケリーさんが名付けた、とも考えられます。
もとはガヴァネス(家庭教師)をなりわいとしていたケリーさん。
「私ね 前から 思ってたのよ。教育ってのが どれほどの ものなのか」(第2巻)
ありがちなメイドの名前を与えないことが、
ケリーさんの教育魂のあらわれではないか、と。
(漫画をじっくり読んでの想像。)
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
« 召使をグラフ... | おりこう者・... » |
御書きの通り、召使や女中の名前は固定が普通です。
彼らの必要なものは、主人が整えて与えます。それらの品は
それぞれ、何が誰の物か記名しておきます。
ですから、前の子が「梅」で、その梅の後釜に入った子は、
「今日からお前は梅と呼びますから、そう呼ばれたら返事
をしなさい」と言われます。
今でも「「前の営業担当者が鈴木だったけど、すぐ辞めたから、お前は今日から鈴木と名乗って、鈴木の残して行った名刺を使え。新しいのを印刷するの、勿体無いだろ?」という会社があるそうです。社員を召使と思ってるのでしょう。