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小菅の演奏には~きわめて構築的で構造的な超ソナタを目指したまさにベートーヴェンの~

 きのうの毎日新聞夕刊「音楽」コラムに、クリエイト卒業生小菅優さんの名前を見つけました。


超ソナタの現出

小菅優のベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏会   

                       評・平野昭

 ほぼ半年のサイクルで進行している小菅優のベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全曲演奏会の第3回。このピアニストの独創的な世界がいよいよ明確な輪郭を見せだした(7日・紀尾井ホール)。曲目は作品14の2曲、第9番のホ長調と第10番のト長調、前半最後に第27番、作品90のホ短調を置いて、後半に作品27の2曲、第13番の変ホ長調と第14番の嬰ハ短調「月光」。つまり、長短3度でリンクする調的響きで組み立てられている。
 
 いつも小菅の解釈には驚かされるところ少なくないのだが、当夜も大きな新発見があった。前半3曲からはベートーヴェンの音楽に秘められていた女性的情感が現された。叙情的でリリカルな表情、というのではない。なにかすべてのものを包み込むような温かさと優しさに満ちた心地よい響きなのだ。それでいながら骨格は凜としている四重奏書法による第9番ソナタの旋律声部が織り成す綾の美しさ、主旋律と伴奏の性格の弾き分け、素朴で微笑ましいまでの第10番ソナタのポリフォニーによる2声部対話など、どちらかと言えばソナチネ的に扱われるこの2曲から新しい魅力を引き出した。作品90も短調の叙情性ではなく、むしろ生き生きした響きの中にリートの世界に通じるようなロマン主義ピアノ音楽特有の旋律主題の美しさを聞かせた。

 圧巻は作品27の2曲。「クワジ・ウナ・ファンタジア」の概念を一新する音楽つくりが、特に第13番の変ホ長調ソナタに見られた。小菅の演奏には幻想的な世界もなければ自由即興的な世界も見られず、きわめて構築的で構造的な超ソナタを目指したまさにベートーヴェンの何物にも妨げられない強い創作精神が現出されていた。妥協のないアクセント奏法と強弱法を駆使したシンコペーションによる音響ダイナミズムはこの解釈の正当性を宣言し、そして保証するものであった。また、「月光」で、時間の流れさえ緩めてしまうような悠久の宇宙のしじまにこだまする第一楽章は、夢から覚めた現実の時間の流れでほっとする第二楽章を経て息をも継がせぬ超絶速度の終楽章クライマックスへと突入する布石となっていた。 (音楽評論家)



 小菅さんは1983年生まれですから、いま28歳。

 クリエイトに通っていたのは、8歳9歳のとき

 もう20年も前になります。

 お母さんと一緒に教室に通っていたのですが、折り目正しく、小3とは思えない大人の雰囲気がありました。



 「ドイツに留学させます。一緒についていきます

 優さんのピアノの先生だったお母さんは、「才能的に私の手から放さないといけなくなりましたので」と話していました。

 
 10年ほど前、突然、お母さんがくも膜下出血で亡くなられてからはつきあいはなくなってしまいました。

 音楽的な独創性はわかりませんが、CDはよく聴いています。     







           ※クリエイト速読スクールHP

記者が選ぶ今週はコレ!・クラシック:小菅優のベートーベン・ピアノソナタ全曲演奏会

 小菅優が東京・紀尾井ホールで進めている、ベートーベンのピアノソナタ全曲演奏会シリーズの第2回を昨夏、聴いた。取り上げられていたのは、第16番、第17番「テンペスト」、第18番と、第28番。

 彼女の極めて優れた特性は、作品の本質的な個性を明晰(めいせき)に把握し、際だたせることである。思いがけない音が跳びはねるように生き生きと会話を交わす第16番、玄妙な神秘性が霧の中に消えてゆくような「テンペスト」、リズムが空気までを切り取ってゆく第18番と、各曲の本質的な魅力を堪能したが、とりわけ第28番イ長調・作品101の、憧憬に満ちた音の繊細なたゆたいと、必然性をもった構造の腑分(ふわ)けに、深く心打たれた。

 2月7日午後7時から同ホールでシリーズ第3回が開かれる。取り上げられるのは第9番ホ長調、第10番ト長調、第27番ホ短調、第13番変ホ長調、第14番嬰(えい)ハ短調「月光」。小菅自身は今回の各曲を貫くテーマを「愛」と語っている。それぞれの曲からどのような愛を聴かせてくれるだろうか。小菅の繊細な感受性と理知を併せ持つ新鮮な音楽性によって、絶対に月並みな「月光」だけは出てこないだろう。

 ぜひ聴かれることをおすすめしたい。問い合わせは0570・06・9960へ。【梅津時比古】

毎日新聞 2012年1月23日 東京夕刊                                           

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