弱い文明

「弱い文明」HPと連動するブログです。 by レイランダー

なんとなく思い出す3つの言葉~3つで済むはずもないけど

2006年12月01日 | 言葉/表現
 今頃言うことでもないが、つくづく北朝鮮は、自民党にとって良い時期に核実験をやってくれたものだと思う。安倍新政権にとって、これ以上の追い風はない。
 金正日と安倍ちゃんは事実上の盟友である。どちらもおぼっちゃん同士、気が合いそうだというだけではない。僕は彼らが、それこそ一部で囁かれている統一教会というパイプを通じてであろうとなかろうと、とにかくお互いの利益になるように何らかの密約を結んでいるということが明るみに出ても、一向に驚かないだろう。そうしたことが一切ないとしたら、逆に意外な気がするだろう(ちなみに僕が安倍晋三を「ちゃん」づけするのは、親しみを込めているつもりではなく、根っから軽蔑しているからである)。
 だが、実際に密約があったとしても、それで得をしたのは結局安倍ちゃん/自民党であり、日本を利用して自分が得しようと目論んでいたキムやんは、むしろはめられたのではないか。そして、これらすべてが、アメリカが元から描いていたシナリオだったのではないか──北朝鮮を叩く絶好の口実を確保し、中国を譲歩させ裏で手を結び、北東アジアに「新世界秩序」をもたらすために──という気がする。もう数年経ってしまったが、僕はいまだに、北朝鮮があっさり「拉致」を認めたことが、腑に落ちないのである。

 そんな憶測の話は別にしても、「国家の危機」が追い風になるような政治というのは、危険な政治である。古今東西、そうだ。多くの場合、その危険な政治によって、情勢は好転するどころか、悪化する。「危機」を前提にした政策が固定化されてしまい、逆に危機を深めるからだ。それが現実に小泉内閣発足以降に起こってきたことだし、防衛「省」昇格法案もその延長線上にある。
 小泉政権のやってきた「外交」(むしろ「害交」か「内交」だったかもしれない)の結果、日本は以前より安全になった、と答えられる人がいるなら、ぜひお目にかかりたい。もちろん小泉だけのせいで悪くなったというのではないが、悪くするための積極的な歯車のひとつであったことは明らかだ。そして安倍政権が基本的にその路線を踏襲するものである以上、危機がさらに深まるのは理の当然である。
 現にいきなり北の核実験。戦後、こんなにご丁寧な祝儀をもらってスタートした政権はない。安倍政権を生むに至った与党の連中とその支持者たちの願いが叶ったのである。
 なのに彼らに言わせれば、すべては日本以外の国が「悪い国」であるせいなのだと言う。アジアの野蛮な隣人が、か弱い我が国をいじめるのだと言う。いつの間にそういうキャラになったんでしょう、この国は。

太田昌国氏が『「拉致」異論』の中で書いている。
「自分が属する国家(社会)は常に正しく、悪なるものは常に外部に、すなわち外国(の社会)にしかない、という主張を、植民地支配と侵略戦争の現代史を主導的に生き抜いた国にあって行なうことには、歴史的かつ論理的な欺瞞、あるいはよく言っても飛躍が要る。」

続いてN・チョムスキーの言葉。
「─私たちは自由な社会に住みたいのだろうか、それとも自ら好んで背負ったも同然の全体主義社会に住みたいのだろうか。
 とまどえる群れが社会の動きから取り残され、望まぬ方向に導かれ、恐怖をかきたてられ、愛国的なスローガンを叫び、生命を脅かされ、自分たちを破滅から救ってくれる指導者を畏怖する一方で、知識階級がおとなしく命令にしたがい、求められるままスローガンを繰り返すだけの、内側から腐っていくような社会に住みたいのだろうか。」(『メディア・コントロール』より)

最後に、イクバール・アフマドの言葉から。
「世界中の人々は現代に住んでいる。けれども世界中の人々のうえに君臨するのは、中世的な精神の持ち主たちなのです。」
「わたしたちの時代の中心的な問題とは、現代の状況と相容れない昔ながらのやり方から精神的に脱却できない政治家たちが、あらたな現実を生み出しているという矛盾なのです。」(『帝国との対決』より)


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3 コメント

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Unknown (rei)
2006-12-03 21:34:30
どうも。お久しぶりのreiです。
金さんちの坊ちゃんと我が国の坊ちゃんは確かに通じる所が多いですな。庶民の苦しさを知らないお坊ちゃん達が社会主義の理念だの“再チャレンジ”だのほざいたって中身が空っぽなのは当たり前のことですね。
しかし、彼らの最大の協力者が他にいることを忘れてはなりません。メジャーリーグへの移籍だのバレーだの芸能人の離婚だのに目を向けて、目の前の自分達の社会からは適当な言い訳を言って目をそらしている、私たち自身です。
私たちが馬鹿だからこそ、彼らは好き勝手ができるのです。アメリカやイスラエルがどれだけ国連憲章や国連決議を無視しようと許されるような世界。北朝鮮やアルカイダの非道がどれだけ報道されようと、サウジやエジプトやトルコやグアンタナモでの似たような事件は全くと言っていいほど報道されない“自由な”社会。
一体本当の責任者はだれだ?
何とか兄弟よ、今の時期に「V For Vendetta」を映画化してくれてありがとう。
はじめまして (村野瀬玲奈)
2006-12-03 23:04:17
はじめまして。TBありがとうございます。Bookmarkにも入れていただいて、感謝感激です。

>「国家の危機」が追い風になるような政治というのは、危険な政治である。古今東西、そうだ。多くの場合、その危険な政治によって、情勢は好転するどころか、悪化する。「危機」を前提にした政策が固定化されてしまい、逆に危機を深めるからだ。

という一文、うまい表現ですね。私たちはそのことを歴史から学んだと思っていましたが、歴史的健忘症が進行していたようです...。

その歴史的健忘症を治療できるのは、言論を通じて常にそのことを意識しようという営みだけですね...。

これからもよろしくお願いいたします。m(__)m
ありがとうございます (レイランダー)
2006-12-04 10:42:12
>reiさん

お久しぶりっす。「V For Vendetta」まだ観てないっす。面白そうなのに・・・・レンタル・ショップとかにあるんすかね?
ちなみに次回書く予定ですけど、マーズ・ヴォルタってすげえいいね!まだ聴いてなかったら、絶対おすすめ。

>玲奈さん
はじめまして!感謝感激なのはこちらです・・・ブックマークに入れたことは、こちらから普通に報告しなければいけなかったのに、うっかりしててごめんなさい!

いつも玲奈さんのブログ見るたびに、俺も少しはこういう役に立つこと書かんといかんよなあ・・・と、頭が下がる思いでした。怠惰なブロガーのはしくれですが、これからもよろしくお願いします。

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