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無印良品のイスラエル出店計画

2010年09月02日 | パレスチナ/イスラエル
 すでにパレスチナ/イスラエル問題に関心を持つ人達には周知のことだけれど、一般の人にはどれだけ広まっているのか心許ない話題として、無印良品(株式会社良品計画)のイスラエル出店計画がある。
 イスラエルとの間で製品の輸出入を行なっている日本企業、何らかの商取引関係を持っている日本企業は元々けっこうあるが(それ自体問題にされなければならない部分があるが──ひとまず話を端折る)、一般庶民に比較的よく知られた小売店舗を現地に出すという、分かりやすい・見えやすい形で「関係」を持とうとするのは前代未聞だ。裏を返せば、他の企業はそれをしたくとも我慢していた・遠慮していたところがある。イスラエルという国は、そうした「関係」をおおっぴらに取り結ぶには問題があるということを、薄々でも認知していたからだろう。しかしこのたびの無印良品の企ては、分かっていながらその微妙な一線を越えてしまおう、という決意によるものと推定される。この、世界的にイスラエルに対するBDS(ボイコット/投資・資本の引き揚げ/制裁措置)への要望が市民社会で高まっている現況において(端的な一例:イギリス労働組合がイスラエルボイコットを選り抜く)、その決意が意味するところは大きい。

 問題は大きく分けて2つほどある。
 一つは言うまでもなく、この一企業の「商業的」行動が、イスラエル政府とイスラエル社会に対して、「あなた達のやっていること・在り方は特に問題ないでっせ」というメッセージを送ることになるという、「政治的」効果。
 もう一つは、これが他の日本の企業(および海外の企業)への「それじゃ我々も─」という呼び水になってしまうかもしれないという効果。そしてそれによって、一つめにあげた「政治的」効果をさらに増幅させることにもなる。
 今のイスラエルのパレスチナに対する占領/併合の有様というのは、かつてのアパルトヘイト全盛の頃の南アフリカよりもさらに悪質だ、という話を南アフリカの人自身が語っている(「パレスチナの皆さんへ、ある南アフリカ人より」─パレスチナ情報センター)。そのような場所へ──最近の突出したニュースだけを拾っても、1400人もの死者を出したガザへの侵攻や、そのガザへの人道支援に向かった平和船団を襲撃するなど、これほど分かりやすい「ならず者国家」のサンプルはないというくらいに分かりやすいことをやっている国へ、今どうして臆面もなく「ビジネス」をやりに行けるのか。
 自身がならず者の、アウトローの行商人だというなら、それもいいだろう。だが海外にも名の通ったブランドである無印のような企業が、このような形でマーケットの拡大を企て、「政治と商売とは無関係ですから」などとうそぶくことは許されない。

 パレスチナ情報センターのスタッフを中心に立ち上げたStop無印良品キャンペーンのサイト、これは非常によくできたものだ。必要な情報はほとんど網羅されている、といっていい。FAQ(よくある質問)のコーナーなど(ちょっと笑ってしまうくらい)特によくできている。それ以外でも、パレスチナ/イスラエル問題のことがよくわからない人へのツボを心得た優しい解説(ただ今荒稼ぎ中の池上某氏よりも──というより、あの人より優しく解説できなければ本来おかしい)も入っている(「イスラエルとパレスチナ?」の項)。
 もちろん抗議のための実践的なアプローチの仕方についても、さまざまなツールを紹介しながら教えてくれる。一番お手軽なのはメールやハガキによる抗議だろうか。それらにしても何通りもやり方はあるので、誰しも一つくらいは試みてくれたらと思う。もちろんその前に、この問題をどんな形でもいいから、できるだけたくさんの人に知らせることが肝心だけれど。
 ちなみに、「知らせる」にあたって肝心な点を強調しておく。サイトの方でもくり返し断っているけれど、このキャンペーンは現時点では「無印良品のボイコット」ではない。あくまでイスラエルへの出店取り止めを求めるキャンペーンであって、無印という企業に対していかなる敵意も悪意もけしかけるものではない、ということだ。
 もしも無印がこの要請を検討して出店計画を白紙にしてくれたら、こちらは今までよりいっそう無印の「良品」ぶりを称えてもいいのではないだろうか。それは一企業の問題のみならず、金儲けのことだけを考えたら出店したいけどあえてしない、そのような多くの他企業をも勇気付けることになる、ポジティヴかつ重要な判断だ。
 逆に、要請を無視して出店に踏み切った際には、無印という企業全体に対するボイコットもやむをえない。そういう順序であることを踏まえておきたい。

 僕個人は、無印でモノを買ったことがほとんどない(一度傘を買ったくらいかな)、ものすごく縁の薄い人間なので、はじめにこの話を聞いた時には、正直あまりピンとこなかった。だがこの数ヶ月調べていくうちに、だんだんと事の大事さが飲み込めてきた。
 もしも出店を止めることができたら、これは関係者全員にとって財産になる。関係者、というのは日本でパレスチナに関わっている者のことだけでない。社のモットーに従い、消費者の声に耳を傾けて模範的な判断を下した企業にとっての財産、そのような前例を持つまでの成熟に至った日本経済界にとっての財産。あるいは、アメリカの属国の立場でがんじがらめになっている中で、その意向に与しない、独立した企業の社会的責任を引き出すことを目指す、日本の広範な社会運動にとっての財産、などなど。簡単にいえば、世の中ってこのままじゃさすがにやばいよね、と考え・行動する、すべての日本人にとっての勝ち点になると思う。
 出店計画は2011年、まだ時間はある。ぜひこの問題を広く知らせ、一人でも多く、自分なりの形でキャンペーンに参加してもらいたい。

Stop無印良品キャンペーン
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イスラエル支援企業はディズニーで (ジブリはスルーですね。)
2010-09-05 00:34:41
l
Unknown (オピノキ)
2010-09-05 21:37:08
どうも、おひさしぶりです。

私自身はけっこう無印良品のファンで、デザインに込められた哲学とかが好きなだけに、なんだかショックというか複雑な気持ちであります。

パレスチナ問題というのが日本人にとって地理的にも心理的にも「遠い」問題である上に、
今日、ユーゴスラヴィア紛争に関する演劇を見てきたんですが、日本人にとって「民族紛争」というものが非常にイメージを持ちづらいのだと思います。
そのへんがまず分からないと、そもそも問題意識も持てないのではないか、ということを考えました。
このままでは、無印側もキャンペーン側を「困ったやつだ」と思い、逆もまた「困ったやつだ」のままで、
平行線をたどって、結局支店が進出されてしまうような気がしてなりません。何らかの話し合いの場が作れればいいのですが。
>イスラエル支援企業はディズニーで (レイランダー)
2010-09-08 11:34:07
だいぶ前から続いている書き込みで、よくわかっていないようなので簡単に説明するね。
ポイント①
イスラエルに直接関係のある「支援企業」っていうのがまずあって、それが以下のようなものだったりして。
 http://palestine-heiwa.org/choice/list.html
これだけでも数が多くて、しかも効果的なボイコットはまだ試行錯誤の途中(特にここ日本では)。そのうえにジブリのような、その「支援企業」と提携関係にある「間接支援企業」まで調べ始めたら膨大な数になって、とても手が回らない。それが現状だし、実際「間接」にエネルギーを注ぐのは無駄が多い。少ない方の「直接」をどうにかすれば、自然に片がつく話だからね。
他人のブログや掲示板に文字を書き込んでるだけの人にはピンとこないかも知れないけどね。

ポイント②
だから何度も書いているけど、この件で人のことをダブル・スタンダードだとか言いたいなら、まずその前に君がジブリのディズニーとの提携を批判する活動を始めてよ。俺は応援するし、何かのヒントがないかと真面目に考えてもいるから。
>オピノキさん (レイランダー)
2010-09-08 12:37:16
お久しぶりです。というか、僕の書く頻度が減ってるから、自然にどなたでも「久しぶり」になっちゃうんですよね。すいません。

世界各地に民族問題があって、確かに日本人はどっちかというとそれに鈍感なんだとは思いますね。
ただパレスチナ問題に関して「イメージを持ちづらい」のは、それとは別に、メディアが明瞭な違反行為をそれとして伝えることをしないから、という面が大きいと僕は思うんです。

たとえばチベットやウィグルの独立ないし自治拡大を願う民衆の動きを中国の軍隊が弾圧したら、メディアを通してそれを見る僕らは「ひでえことをしやがる」「弱い者のいじめの中国人、嫌いだな」とか感じるでしょう。
でも、パレスチナ(この場合西岸・ガザ)はイスラエルに対して「独立運動」なんてやってません。なにしろ違う国だし、国連でもそう認められている。何度も何度もイスラエルは人の国から即刻出て行きなさいという国連決議が出ている。特定の軍事行動に対してではなく、毎日の「占領」に対して、出ているんです。でも延々無視され続けている。こんなことが許されているのはイスラエルだけなんです。
対してチベットやウィグルが中国領なのは国際的に認められています(その国境の線引きが妥当かどうかは別として)。だからといって全ては「内政問題」という中国側の言い分を、いつでも通らせていいわけではない。国境を越えて守られねばならない人の権利というものがある。それくらいのことだって、みんな分かっているわけです。
なのに、それよりもっとあからさまな国としての侵害行為を継続、さらにより過酷に進展しているイスラエルについては放置。たまに(もっぱらアメリカの都合で)二国間協議なんてものをやっていかにも「対等な二国同士が和平に向けて話し合っている」絵が電波に乗って届けられてくるけど、そんなものが二国の片方、圧倒的弱者のパレスチナの安全・権利拡大につながった試しは一度もない、という厳然たる歴史についてはまず触れられないわけで。
「戦争」があった時以外は、当地は「平和」、なわけではない。毎日が国際法違反・人権侵害状態なんです。イスラエルとパレスチナは、お互いに「紛争」をやっている状態なのではなく、イスラエルによって確実にパレスチナが飲み込まれていく、その途中なんです。それが、中国の中のチベットやウィグルのような「自治区」の形で残るならまだしも、国民のアイデンティティの基礎を「ユダヤ人であること」に置くイスラエル政府の下では、「パレスチナ」は確実に消える運命なんです。
この異常さが、メディアを通して伝わらない。伝わっていれば、無印の幹部もそんな行為の加害国にの進出させたりしないでしょう。企業のイメージ・ダウンにもつながるわけですから。

無印側との直接の話し合いのような機会も、最終的には視野には入れています。以前『地球の歩き方 イスラエル編』の記述に関して話し合いをしに行った人達も、このキャンペーンには加わっていますし。そうなる前に、向こうが考え直してくれることを期待してますが。
Unknown (オピノキ)
2010-09-08 16:29:52
なるほど、チベットやウイグルの例だと、確かに我々でも反感を持ちますね。
ただ、もともと日本には漠然とした反中国ムードがあるような気はしますが。
それと比較すれば、ユダヤ人というのは「ホロコーストの民」という被害者イメージが強いですねどうしても。

そして、その「占領」のイメージが伝わっていないから、無印もイメージダウンだと考えない。
イメージの力は恐ろしいですね。あるいは雰囲気ともいえます。
直接の話し合いで、まず無印側のイメージが変わってほしいですね。

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