アジア映画巡礼

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<香港映画祭2023>の多彩なラインアップを楽しみました

2023-11-05 | 香港映画

TIFF2023が済んだと思ったら、次は<香港映画祭2023>と、映画祭の続く秋です。一昨日、<香港映画祭2023>の初日の様子をお伝えしたのですが、本日5日(日)は早や最終日。『ホワイト・ストーム 世界の果て』『夢翔る人/色情男女』を見に、恵比寿ガーデンシネマまで行ってきました。恵比寿ガーデンシネマは2015年にリニューアルオープン、ユナイテッドシネマ傘下に入って新しくスクリーンも生まれ変わりました。でも、上映作品がミニシアター系の欧米作品中心、というのは変わらず、飲食物もシネコン仕様ではなくて独自のラインアップです。今回は、定員187人の、大きな方のスクリーンでの上映でした。

『ホワイト・ストーム 世界の果て』(日本初上映)

 2023/125分/原題:掃毒3:人在天涯
 監督:ハーマン・ヤウ(邱禮濤)
 主演:ルイス・クー(古天樂)、ラウ・チンワン(劉青雲)、アーロン・クォック(郭冨城)、ラム・シュー(林雪)、ロー・ガーリョン(羅嘉良)

©2023 Universe Entertainment Limited. All Rights Reserved.

「掃毒」シリーズは、ルイス・クーが主演の一人で、麻薬と戦う香港警察を描く、という大枠だけ決まっていて、毎回設定が変わります。前回の「2」は、ルイス・クーが麻薬組織の人間、という設定でしたが、今回は「1」にも出演したラウ・チンワンが中華系タイ人で麻薬密輸組織のボス、そしてルイスとアーロン・クォックが別々に組織に潜入した警察官、という設定になっています。物語は前半が香港、後半がタイ北部の山中、ゴールデン・トライアングルにある村が舞台となり、この3人の他、麻薬組織のボスで軍隊を持つ将軍をロー・ガーリョン、ラウ・チンワンの昔なじみの中華系タイ人ヤクザを謝君豪(ツェー・クワンホウ)、香港裏社会の大物をラム・シューが演じているほか、紅一点としてタイの村に住む中華系タイ人の娘役で『芳華-Youth-』の楊采鈺(ヤン・ツァイユー)が出演しているという豪華版。監督は「2」に続いてハーマン・ヤウで、相変わらず巧みな脚本に見せ場のアクションシーンを盛り込み、多彩な出演者を見事に動かしていきます。前半は「4ヶ月前」「1年前」「3年前」等々やたらとフラッシュバックが登場してちょっと混乱しましたが、後半はアーロンとヤン・ツァイユーの恋物語もからませながら、怒濤のアクションでラストへとなだれ込んでいきます。2時間を超える長さとは思えぬダレない見応えで、たっぷりと楽しめました。

《掃毒3人在天涯 The White Storm 3 Heaven Or Hell》- 正式預告 Regular Trailer

 

『夢翔る人/色情男女[2kデジタル・レストア版]』(日本初上映)

 1996/99分/原題:色情男女
 監督:イー・トンシン(爾冬陞)
 主演:レスリー・チャン(張國榮)、スー・チー(舒淇)、カレン・モク(莫文蔚)、ラウ・チンワン(劉青雲)

© 2006 Gala Film Distribution Limited. All Rights Reserved. 

ずいぶん久しぶりに見ました、『色情男女』。デジタル・レストア版なのでとてもきれいです。レスリー・チャンが、これまで作った2本の監督作はいずれも全然ヒットせず、3本目の崖っぷちにいる監督を演じ、いい味を出しています。その同棲相手で、警察官である活発な女性にカレン・モク(今、どうしているのかしら? 2011年に41歳で結婚した後、2019年にはコンサートもやったようですが...)、レスリーが撮ろうとしているⅢ級片(ポルノ映画)の主演女優にスー・チー、その相手役に徐錦江(チョイ・カムコン)、映画のプロデューサーにはこの頃コメディアンとして絶大な人気を誇っていた羅家英(ロー・カーイン)、映画の資金提供者のヤクザに秦沛(チョーン・プイ)、そして映画監督イー・トンシン(爾東陞)にカメオ出演のラウ・チンワンが扮しています。そうそう、ほかにもカメオ出演で、アンソニー・ウォン(黄秋生)が監督役で出ています。香港での映画製作の大変さを、自虐ネタも交えながらコメディとして撮った作品ですが、それぞれのキャラクターが生きていて、見応えがあります。中でも、実際にⅢ級片女優を経験したことのあるスー・チーの大胆な演技が光りますが、これ以降の彼女の成長ぶりは皆さんもご存じの通りです。

香港映画祭2023 Making Waves『夢翔る人/色情男女[2Kデジタル・レストア版]』

 

『毒舌弁護人~正義への戦い~』

 2023/133分/原題:毒舌大状
 監督:ジャック・ン(呉煒倫)
 主演:ダヨ・ウォン(黄子華)、ツエー・クワンホウ(謝君豪)、ルイーズ・ウォン(王丹妮)、フィッシュ・リウ(廖子妤)、マイケル・ウォン(王敏徳)、ホー・カイワ(何啓華)

© 2022 Edko Films Limited, Irresistible Beta Limited, the Government of the Hong Kong Special Administrative Region. All Rights Reserved. 
提供・配給:楽天グループ株式会社

こちらは、同じユナイテッドシネマでもお台場で見たのですが、とてもいい作品でした。今年の香港映画興収第1位になったことが頷けます。ダヨ・ウォン(というより我々にはウォン・ジーワーでお馴染みですが)が演じる主人公は、元はグータラ裁判官で、そのダメダメぶりが目に余り閑職に追われようとしたため退職、弁護士に転身した男です。知人の法律事務所に拾ってもらい、助手の弁護士(楊偲泳/ヨン・シーウィン)も付けてもらって、最初に担当したのが幼児虐待事件。母子家庭で、幼い娘が台所で血を流して意識不明で倒れており、母親(ルイーズ・ウォン)が不注意だとして幼児虐待に問われたものです。母親は、富豪の鍾家の娘婿である医師の愛人であり、娘は彼の婚外子でした。弁護士側は何とか刑期を短くしようとしますが、マンションの管理人の証言で娘を虐待していたとされ、7年の刑期を言い渡されます。しかし、あることをきっかけに弁護士としての目を開かれた主人公は、当時の状況を丹念に調べて行きます...。という、ダメ人間が再起する話ですが、それと共に、富裕層の人間の傲慢さや横暴さを余すところなく描き、庶民側としては拍手パチパチの作品でした。現在公開中の劇場をこちらの公式サイトでチェックしていただき、ぜひ劇場で見ていただきたいですが、楽天が配給していますのでソフト化、あるいは配信化されると思います。その時でもいいですから、ぜひご覧になってみて下さい。

香港映画「毒舌弁護人~正義への戦い~」60秒予告

 

というわけで、私の見た3本だけでも充実のプログラムだった<香港映画祭2023>。特に注目すべきは謝君豪(ツエー・クワンホウ)で、上記の新作2本に出演しているほか、もう1本『風再起時』にも重要な役で出演しています。もともとは演劇人で、「南海十三郎」という舞台で評価され、それの映画化や、同じく舞台を映画化した作品で1990年代後半から映画でも活躍している人です。ここ10年ほど、映画への出演が増えてきたな、と思っていたら、『毒舌弁護人』などは助演男優賞をあげたいぐらいの名演技を見せてくれて、主演以上に強い印象を残してくれました。来年もまた、いろんな俳優の名演技が見られることを期待しています。香港映画、加油!!

 


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