アジア映画巡礼

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『チェイス!』の履歴書

2014-10-18 | インド映画

アーミル・カーンとヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督の来日も決定した東京国際映画祭での『チェイス!』の上映。10月29日(水)という平日の昼間の上映は、お仕事をお持ちの方にはちょっと厳しいかも知れませんが、『チェイス!』との初顔合わせはTOHOシネマズ六本木スクリーン2での上映チャンスをお勧めします。スクリーンが大きく、音響もすごくいいのです。『チェイス!』は様々な音が華麗にデザインされており、中でもバイクのエンジンやタイヤがうなる音は、重低音でものすごい迫力のため、まさしくボディソニック。自分の体が共振するあの感覚をぜひ味わって下さい。

公式サイトにアップされた劇場一覧を見ると、その多さにため息が出ます。その数ざっと100館超。インド映画では前代未聞、これが日活と東宝東和共同配給の力なんですね。あなたのお近くの劇場は見つかりましたか? お近くに何館かある方は、なるべくスクリーンの大きなホールでご覧になって下さいね。

ところで、公式サイトで流れているのはなぜか、アラビア語版「Dhoom Macha Le(ドゥーム・マチャー・レー/騒ぎを起こせ)」の歌。どーしてヒンディー語版、あるいは英語版ではなくてアラビア語版が選ばれたのでしょう? 初っぱなから、サスペンス映画にふさわしく謎が登場しました。冗談はさておき、今日は初お目見えする『チェイス!』のために、この映画の履歴を少しご紹介しておこうと思います。まずは『チェイス!』のデータから。

 

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『チェイス!』 公式サイト

2013/インド/ヒンディー語/147分(インターナショナル版)/原題:Dhoom 3
 監督・脚本:ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ
 主演:アーミル・カーン、アビシェーク・バッチャン、カトリーナ・カイフ、ウダイ・チョープラー、ジャッキー・シュロフ
 提供:日活
 配給:日活/東宝東和
 宣伝:アルシネテラン
※12月5日(金)より全国ロードショー

舞台はシカゴ。1990年の雪の日からお話は始まります。シカゴの由緒ある劇場で興行を行っているThe Great Indian Circus(大インドサーカス)の一座。団長はイクバール・カーン(ジャッキー・シュロフ)で、息子のサーヒルは父を助け、経営難のサーカスを救おうと質屋に走ったりしていました。そして今日は、Western Bank of Chicago(シカゴ西銀行)の責任者アンダーソンらがサーカスに融資をするかどうか判断にやってくる日。一生懸命演技をして見せた父と子でしたが、アンダーソンは融資を拒否。父は彼らの前でピストル自殺をしてしまいます。

それから20数年、大人になったサーヒルは、銀行に復讐するためシカゴに戻ってきました。見事シカゴ西銀行から大金を盗み出し、警察の追跡も振り切ったサーヒル。盗まれた銀行の壁には、ヒンディー語の文字で「Bankwalon, tumhari aisi ki taisi(銀行屋ども、お前たちはろくでなしだ)」と書かれた犯行声明が。インドとの関わりを示したこの事件を解決するため、インドから敏腕刑事ジャイ・ディークシト(アビシェーク・バッチャン)が招聘され、相棒のアリ・アクバル・カーン(ウダイ・チョープラー)と共にシカゴに到着します。ジャイとサーヒルの戦いが始まりました....。

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カトリーナ・カイフが演じるのは、サーカスに新たに加わる女性アーリヤ。本作の一番の見どころはバイク・アクションを中心としたアクション・シーンの数々ですが、アーミルとカトリーナが演じるサーカスのシーンも、見事なアクション・シーンとなっています。中でも、シルク・ドゥ・ソレイユも真っ青の歌「マラング」のシーンは出色の出来。単なるダンス・シーンの振り付け以上の迫力を生み出しています。

さらに見応えがあるのがドラマ部分で、さすがアーミルと思える演技力を十二分に発揮したシーンの数々が、見ている者を引き込んで行きます。それは上手な脚本にも裏打ちされており、監督と脚本の両方を担当したヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督の実力は相当なもの。実はヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督は、これまでのシリーズ2作でも脚本を担当しているのです。

ファンの皆さんはご承知のように、「Dhoom(ドゥーム/騒ぎ)」はシリーズとなっている作品です。主人公の警官コンビが同じというだけで、ストーリーは1作1作独立した作品ではあるものの、3本を通して見ると、いろんな所に前作の痕跡や次作への伏線が潜んでいたりする、とても面白いシリーズです。『チェイス!』をご覧になる助けにはあまりならないかも知れませんが、ちょっと前2作をご紹介し、『チェイス』に至る履歴を見ておきましょう。


『Dhoom/ドゥーム』(2004) 予告編
 監督:サンジャイ・ガルヴィー
 脚本:ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ
 主演:アビシェーク・バッチャン、ジョン・アブラハム、イーシャー・デオル、ウダイ・チョープラー

バイク4台に乗ったギャングが現金輸送車を襲い、現金を強奪。直前に信号機をコンピュータ制御して護衛車両を足止めするなど、相当の知能犯であることがわかります。担当刑事のジャイはバイクのライダーをチェックするうち、凄腕ライダーであるアリがあやしいと疑いを持ちます。アリは女の子を見ると、自分との結婚まで一気に妄想してしまう気のいい青年。無罪とわかったアリを助手にしたジャイは、ピザ屋のウェイターをしているカビール(ジョン・アブラハム)らに疑いを抱き、彼らの一味にアリを潜り込ませると、彼らを追ってゴアへとやって来ました。アリは、その前に知り合った女の子シーラー(イーシャー・デオル)がカビールの一味だったこともあって、疑われもせず彼らの仲間に。ゴアで一味が狙っていたのは、カジノの儲けが蓄えられている大金庫でした...。

バイクの魅力を、アリとカビールたちの善悪両方から伝えてくれる作品で、古典的な「ドロ警もの」のシンプルな筋立てながら、ジョン・アブラハムの魅力もあって大ヒット。特にタイの女性歌手タタ・ヤンが歌う主題歌が、耳タコになるぐらい巷に流れました。本作のエンドロールでタタ・ヤンのMVが使われていますが、そのセクシーさは当時としては刺激的でした。また、当初はアットホームな刑事像が考えられていたのか、本作の最初ではジャイの妻スィーティー(リミー・セーン)の登場シーンも多く、『Dhoom 2』の冒頭でも妊娠した彼女が登場しています。


『Dhoom 2/ドゥーム2』(2006) 予告編
 監督:サンジャイ・ガルヴィー
 脚本:ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ
 主演:アビシェーク・バッチャン、リティク・ローシャン、アイシュワリヤー・ラーイ、ビパーシャー・バス、ウダイ・チョープラー

シリーズの中で一番メンツが豪華な作品で、ソング&ダンスシーンも粒ぞろいでした。今回の泥棒役は、現金ではなく貴重な美術品などの盗みを得意とし、変装術にも長けている”A”ことアーリヤン(リティク・ローシャン)。のちに彼に憧れる美女スネーフリー(アイシュワリヤー・ラーイ)が相棒として加わり、博物館の剣を盗むことに。Aを追っていたのがジャイの級友だったショーナリー・ボース(ビパーシャー・バス)で、ジャイは彼女と共にAを追いますが、Aを捕まえることはできませんでした。Aの行動を分析したジャイは、次なるターゲットはブラジルのリオの博物館にある古代コインだと結論づけます。ジャイ、そしてアリもブラジルへと移動し、Aとスネーフリーを相手にした戦いが始まりますが、実はスネーフリーは...。

リティク・ローシャンとアイシュワリヤー・ラーイのダンスが素晴らしく、こちらこちらは何度見ても飽きません(アイシュもこの頃は細かった...)。ラストもあっと驚くオチで、途中にもどんでん返しを潜ませた脚本は、『チェイス!』に通じるものがあります。

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『チェイス!』はアーミルの演技にかなり重点が置かれており、他の登場人物は少々影が薄くなっています。アビシェーク・ファン、ウダイ・ファン、カトリーナ・ファンの皆さんはちょっとご不満かも知れませんが、アーミルの演技を楽しみ、上手な脚本を楽しみ、息をするのも忘れるぐらいのバイク・チェイスを楽しみ、アーミルのタップダンスから始まる数々のダンスシーンを楽しみ(エンドロールのこれもすごいです~)、と、ハリウッド映画に負けない娯楽度120点のこの大作を堪能して下さい。これにアーミルと監督の登場がついてくるなんて、ゴージャスさもハンパないですね。ぜひ、「アーミル・カーン初来日」「アーミル・カーン舞台初挨拶」という、インド映画@日本の世紀の瞬間をお見逃しなく。

あとは、アーミルがドタキャンしないで来てくれることを祈るのみ。毎日ガネーシャ様にはお祈りしているのですが、イスラーム教徒のアーミル来日まで面倒を見て下さるでしょうか? シュリデヴィの時は効いたので、今回もおすがりしてみます~。

 

 


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