去る9月5日~6日に、長野県茅野市の茅野市民会館で開催されたイワクラサミットIN茅野へ隊員雄志で参加してきた。
会場となった茅野市民会館は、駅から直結していて非常に便利な立地にある。
以前この地へ訪れた際には、影も形もなかった施設であるがあまりにも立派すぎてて、箱物行政で造られた感はぬぐえない感じがした。
総会終了後、我々は駅近くの信州そばを堪能しイワクラサミットの会場であるコンサートホールへ。定員300名の客席だったが、定刻にはざっと見た限り客席の8割方席がほぼ埋まっていた。
午後一時 定刻通りサミットが始まった。
まずはイワクラ学会 渡辺豊和会長の開会挨拶の後、茅野市教育長 牛山英彦氏の来賓祝辞ののち、芽野市尖石縄文考古館学芸員 小池岳史氏の「縄文集落に存在した巨石「聖石」の研究報告があった。
茅野市の北山芹ヶ沢区にある「聖石」は、実は現在の位置に存在していたのではなく、かつては「集落の中央の広場」にあった事が判明し「聖石」は、集落での何らかの祭祀儀礼に使われていた可能性が高いとの発表があった。
氏は、何かと堅苦しい考古学界アカデミズムの最前線にいる傍ら考古学界からは、少々異端とも言える今回の研究報告は、画期的なものと自ら話された。
続いて、地元のシンガーソングライターで活躍されている美咲さんのミニライブがあった。
基調講演では、藤森照信氏(建築家・東京大学生産技術研究所教授)が面白いお話をされていた。藤森氏は、茅野市出身で神長官守矢資料館のデザインをされていて、渡辺会長とは、古くからのご同輩だそうで今回の講演も会長からの要請だったとか。渡辺会長の知られざるエピソード話は面白かった。
氏は、立石(スタンディングストーン)に着目され世界の立石を数多く見てきたそうで、中でもフランスのカルナック地方に存在する列石は、8列で3Kmにも及ぶそうである。また、高さ20mにも及ぶ世界最大のスタンディングストーンもあるそうだ。氏は、これらの配石遺構は太陽信仰と大きく関わっており死者を葬る重要な遺跡でもあると説いた。
また、幼少の頃のお話も紹介され、諏訪七石のひとつ「小袋石」が、実は現在のような苔むしたものではなくピカピカに輝いていたこと。また、諏訪大社上社の神域に潜り込み神様が宿ると伝わる「イワクラ」を探した際の話で「小袋石」の様な大きなものを創造していたのに意外と小振りだった事に、がっかりしたお話などを紹介された。また諏訪に伝わる「御柱祭」にも言及され「御柱」は「イワクラ」のような神の依り代ではなくスタンディングストーンの様に、人為的に天高く木を立て「神としての太陽へ庶民の魂を届けるための手段」と持論を説かれていた。
休憩のあとパネリスト達によるシンポジウムが開催された。
パネラーは
鎌田東二氏(京都大学こころの未来研究センター教授)
田中 基氏(元季刊『どるめん』編集長/多摩大学講師)
平野貞夫氏(元参議院議員/イワクラ(磐座)学会顧問)
コーディネーター
渡辺豊和氏(建築家/イワクラ(磐座)学会会長)
荻原哲郎氏(編集者)
蒼々たるメンバーだがシンポジウムに先立ち 鎌田東二氏、田中 基氏の講演があった。
鎌田東二氏の講演の際には、例のごとく知る人ぞ知るホラ貝によるパフォーマンスがあった。また公演中にも石笛による演奏があった。(後から聞いた話だがこのホラ貝演奏で会場側からちょっとしたクレームがあったそうだ。)
鎌田氏ならではの多義に及ぶ幅広い考察力は、非常に面白かった。特に諏訪の地は、特異な地質層に位置している事に着目され中央構造線とフォッサマグナの交わるこの地は、多様性を併せ持つ重要な地域であることを色々な事例を紹介されながら報告された。
田中氏の講演では、環濠集落遺跡に見られる敷石遺構が人の胎児の形状に似ていることに着目しまた、諏訪大社上社で中世に行われていた御室(ミムロ)神事に着目され古代人の輪廻感を考察されていた。興味深かったのが、この地方の敷石遺構にも御柱を立てたような4隅の跡が見つかっている事例があるという。この地に伝わる御柱の風習は、中世までしか遡ることは出来ないがこのことが裏付けできれば新たな展開が期待できそうだ。
イワクラ学会顧問の平野氏は、鳩山民主党の新たに幹事長になった小沢一郎の知恵袋と言われており独自の政界論と古代縄文の祭政体「まつりごと」を鋭く考察されていた。
最後に、主催者側の粋なはからいで「下諏訪町木遣保存会」の方達による木遣りを披露していただいた。
大盛況のうちに閉幕し、翌日は諏訪を巡るイワクラツアーを行った。(報告は後日改めて紹介)
イワクラ学会 渡辺豊和会長 開会の挨拶
会場は、推定8割方の入りだった(300人定員)
芽野市尖石縄文考古館学芸員 小池岳史氏の講演模様
地元のシンガーソングライター 美咲さんのミニライブ
地元建築家 東京大学生産技術研究所教授 藤森照信氏の基調講演の模様
パネリストのみなさん
京都大学こころの未来研究センター教授 鎌田東二氏のホラ貝パフォーマンス 僕はホラ吹きとはいつもの弁
元季刊『どるめん』編集長/多摩大学講師 田中 基氏の講演模様
最後に、下諏訪町木遣保存会の方達により木遣りが披露された。