子供論について(続)

 
 そこで私たちはちょっかいを出し始める。
「面白い顔でもしたら、笑うかもね」と相棒。早速私は、彼の頬っぺたをビヨ~ンと横に引っ張った。
 「何ってことするの!」と相棒は小声で抗議。けれども女の子は、ようやくホコッと口許を緩ませた。

「脳と脳とが相互作用したよ」と相棒。
 彼はこの表現をよく使う。人間の規定的本質は脳であり、眼は脳が唯一外界に出ている器官であって、だから眼と眼が合うと脳と脳とが相互作用し合い、心が通じ合う、というのが、相棒の主張。
 
 女の子の笑顔が綻んだのに気を好くした私と相棒。今度は彼が、手にしていたコーヒーの蓋で私の眼を隠し、片眼鏡を作ってから、ンパッ! と、いないいないばあをした。
 女の子はニコニコと笑い出した。私たちは「笑ってる、笑ってる」と笑いながら、ビヨ~ンとか、ンパッとか、ニギニギとかウニウニとか、まあそんな類のことを続けた。

 女の子はニコニコ笑いながら、キョロキョロと左右を見る。大好きな人たちに、自分と同じ楽しい気持ちになって欲しいのだ。が、爺さん婆さんは見て見ぬふり。お姉ちゃんは、アホちゃう? という眼でこちらを一瞥し、が、それでも気になるらしく、チラ見してくる。

 こちらがちょっかいをかけ続けるので、女の子は楽しくてたまらないらしい。が、育ちがいいからか賢いからか、大声ではしゃいだりはしない。
 こうしたことに反応する子供は大抵、静かに、自分の心の内でだけ反応する。自分が楽しい気持ちでいるのを、こちらが知っていると知っているので、そうしたことを大声で表明しなくてもいいわけだ。

 To be continued...

 画像は、ゴヤ「木に登る少年たち」。
  フランシスコ・デ・ゴヤ(Francisco de Goya, 1746-1828, Spanish)  

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