夢の話:暗黒の宇宙

 
 子供の頃は宇宙に憧れていた。古代の人々がイマジネーションを馳せた星座の世界。惑星間を旅し、異星人と遭遇する、神秘と冒険に満ちたスペース・オペラの世界。
 そして、亡き友人に出会ってからは、子供の頃の宇宙への眼差しそのままに、科学的な好奇心をもって、天文学の世界を知った。

 だから子供の頃、冒険に出る夢を見る、その舞台は、いつも夜だった。私は夜の星空のもと、夜影に乗じて、家族や学校のしがらみを捨てて、未だ知らぬ世界へと旅立つのだった。
 宇宙へと旅立ったこともある。スペース・オペラさながら、宇宙船に乗って。これからの冒険に心震え、心沸き立って。その頃、宇宙という舞台には、同じ宇宙船の仲間たちがいた。逆に、征服を企む宇宙海賊や宇宙人はいなかった。

 だが私は、亡き友人を失った頃から、宇宙の夢を厭うようになった。

 夜空を眺めると、心が澄んで純粋になる、と言う人は多い。日常の瑣末な事象に囚われなくなる、と言う人も多い。
 さらにもっと眺め続ければ、どうだろう。人は自分を、塵にも満たない存在だと感じるかも知れない。無に等しい存在だと、存在することの意味や理由や価値は無だと、感じるかも知れない。つまり、純粋とは無であり、根源的とは無であって、すべては存在するに値せず、有は無の前に意味をなさない、というわけだ。

 To be continued...

 画像は、プルシュコフスキ「流れ星」。
  ヴィトルト・プルシュコフスキ(Witold Pruszkowski, 1846-1896, Polish)

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