エルツ城へ(続)

 
 男の子が3人、手に手に木剣を持って、坂道を駆け上ってくる。この剣は中世の騎士が持っていたような、太くて平べったい両刃の剣で、男の子たちは騎士よろしく、これを振りかざし、私たちを元気よく追い越してゆく。一番年下の男の子は、ワン・テンポ遅れて、お兄ちゃんたちに懸命について走る。
 が、彼らは、追い越した先で果敢に傍らの岩に登ったり、木の陰に隠れたり、川辺へと降りていったりする。で、その冒険のたびに私たちに追い抜かされる。

 育ちの良さそうな彼らは、私たちに追い抜かされては合流する、私たちの後方を歩く彼らの両親に、迷惑になるから追い越しては駄目よ、とでも注意されるらしい。勇んで前へと駆けてきても、私たちのすぐ背後まで来るとスピード・ダウンして、もたもたと歩き出す。
 いいよ、先に行きなよ。手振りでそう言うと、男の子たちは再び私たちを追い越して、はるか前方に走っていく。
「それ、エクスカリバーみたいね」追い越されざま、一番大きい男の子に声をかけると、
「ヴァス(何)?」男の子は駆け足のまま、身体ごと振り向いて首をかしげ、そのままクルリと背を向けて、一散に前へと走っていった。

 自分のなかに燃えるロマンの熱気で、風船のように、はち切れんばかりに心が膨らんだ子供というのは、苦慮・思考する子供同様、可愛いらしい。

 左前方に見つけた、早緑の丘の上に埋もれた廃墟を指して、
「あれがお城?」と私が訊くと、
「いや、どう考えてもあっちが本当のお城だと思うよ」
 前を歩いていた相棒が傍らに退くと、突然、眼の前の木の間から、メルヘンのようなお城が姿を現わした。

 To be continued...

 画像は、エルツ城。

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