バイオリンの里(続々々々々)

 
 この日は夕食付き。久々に温かいものを食べることができる。
 そろそろ夕食の時間になるので、ロビーでのんびり待っていると、外は雨なので幾分暇を持て余していた子供たちが、ぼちぼちやって来て、まだ閉まっている食堂のドアの前をうろうろし始めた。
「もう開いた?」
「まだ開いてない」
「でもそろそろ開きそう」
 ……てな具合で、ドアの前に最初の一人が並ぶ。と、次から次へとみんな揃って並びだし、とうとう、食堂のドアに向かって長い行列が出来上がった。

 時間になって、いよいよドアが開くと、子供たちの眼がパアッと輝く。貫禄あるシェフが出てきて、早く食堂に入れてもらいたげにシェフを見つめる子供たちの列になど眼もくれず、ぐるりとロビーを見渡して、私たちを手招きする。どうやら、先に入れ、と言っている。
 個人客なので、シェフが気を利かせてくれたらしい。で、東洋人二人、一列に並んで律儀に順番を待っている子供たちを差し置いて、彼らの視線を一身に浴びながら、食堂へと入っていく。
 シェフは私たちを隅のほうの、邪魔の入らないテーブルに案内し、テーブルランナーまで掛けてくれる。で、私たちが料理を取り終えた頃、ようやくドアを開けた。

 子供たちがワーッ! となだれ込んでくる。後はもう食事時の大騒ぎ。まるでペンギン。
 私のささやかな主義の一つは、食べ物を残さないこと。で、こうしたバイキング形式の料理も、少しずつ皿に盛るのだが、食べ終わって注ぎ足しに行こうにも、子供たちのエネルギーに圧倒されて、なかなか行けない。
 仕方ないので、代わりに相棒に取りに行ってもらう。相棒もまた、子供たちのエネルギーに圧倒されながら、ニコニコ笑って帰ってくる。
「本当に久しぶりだねえ!」と楽しそう。

 To be continued...

 画像は、ミッテンヴァルト、山間の草原。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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