ギリシャ神話あれこれ:パンドラの箱(続)

 
 この、災厄をもたらす役目を果たすのが、「女性」という存在。まわりくどいやり方だが、女性を介することで、女性そのものが災厄なのだと言いたくもあるらしい。
 ……女性に対しては、聖書なんかよりはるかに寛容なギリシャ神話だけれど、この「女は災い」的な発想はちょっと、男性本位すぎるかな。

 ゼウスは鍛冶神ヘパイストスに命じて、泥土をこね、不死なる女神に姿を似せた人形を作らせる。生命を吹き込まれたこの乙女に、神々は競って贈りものを与える。アテナは女の知恵と技芸の能力を、アプロディテは男を悩殺する魅力を、アポロンは妙なる歌声を、ヘルメスは恥知らずな心と狡猾な気立てを。云々。
 このため、この人類最初の女は、パンドラ、すなわち「あまねく贈られた女」と名づけられる。

 最後にゼウスが、「決して開けてはならないぞ」と強く言い含めて、甕(あるいは手箱)を持たせてやる。
 こうしてパンドラは、ヘルメスに連れられて、プロメテウスの弟であるエピメテウス(「後から慮る者」の意)のもとへと送られる。

 さて、「先に慮る者」であるプロメテウスは、ゼウスの報復を予見し、「ゼウスからの贈り物は一切受け取ってはならない」と、弟エピメテウスにかねがね警告してあった。が、美貌のパンドラを一目見るなり、思慮の足りないエピメテウスは、兄の言葉などコロリと忘れて、彼女を妻に迎え入れる。この男は、後になって、取り返しがつかなくなってしまってから初めて、物事の故を考えて、後悔に嘆くのだ。

 To be continued...

 画像は、アルマ=タデマ「パンドラ」。
  ローレンス・アルマ=タデマ(Lawrence Alma-Tadema, 1836-1912, Dutch)

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