バイエルンの都(続々々々々々)

 
 帯状の公園のような緑地帯の道を選んで歩いて、ミュンヘン中央駅へ。天気の好かったこの日には、道の脇に点在するベンチというベンチに、人が座って憩っている。出稼ぎに来ているらしい、有色人種も多く見かける。
 海外では日本人はよいカモなので、必ずと言っていいほどトラブルに会う、と前もって聞かされていた私。フランクフルト以来、一度もトラブルに出くわしていないので、トラブル発生のポテンシャルエネルギーが溜まっていそうで、そろそろ何か起こるんじゃないか、とびくびくしている。で、人の賑わう緑の道を、そそくさと通り過ぎる。

 駅で並んで切符を買って、夕食にケバブを買う。ケバブ屋で、ゴールデン・ウィークの延長で休暇を取って遊びに来ているらしい若い日本人カップルが、言葉が分からないのか曖昧に笑ってうなずいて応答している。彼らはその後、屋外の席に座って、ジョッキビールを飲んでいた。
 ごく普通の日本人観光客にとって、ドイツと言えばまずミュンヘン。みんなミュンヘンに2、3日滞在して、市街観光して、こうやってビール飲むんだろうな。……ちょっと、ミュンヘン市街を歩いてみたかった気持ちになってくる。

「日本人がちらほらいるねえ」と相棒。
「私、中国人のフリをするよ」
「駄目だよ! 中国が今、チベットやウイグルでどんなことしてるのか、ヨーロッパ人は知ってるんだから。ドイツ人は日本人には好意的なんだから、日本人だとはっきり示さなきゃ」
 私は日本が好きじゃないのに、先進国日本という信用、真面目な国民日本人という信用に、護られている。

 列車の時間まで少しあるので、そのケバブを食べてしまおう、ということに。今度は中央駅の人混みが怖いので、もう一度さっきの緑地帯のベンチまで、そそくさと戻る。で、自転車にザックを乗っけたアラブ人っぽい集団が固まって座っている隣りのベンチに座って、ケバブを食べる。
 と、いきなり警官が二人登場して、アラブ人たちに職務質問。しばらく言い合っている。
 ああした修羅場が、私にもいずれ訪れるべきなのだと思ったりする。

 けれども、どんなにボロッちい服装でも、どんなにショボい荷物でも、私たちはやっぱり日本人観光客然としているのだろう、ちょっとハイな、金髪の若いドイツ人女性が、私たち二人を認めた即下に、「コニチワ!」と大声で呼びかけてくる。
 
 私が自分をどう自己規定しようと、私は日本人なんだなと思ったりする。

 To be continued...

 画像は、ミュンヘン、駅途中の公園。

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     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
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