モーゼルワインの町

 
 ドイツの鉄道は、駅に改札というものがない。検札も必ず来るわけではない。ので、無賃乗車しようと思えばできそうな気もする。
 が、そういう違法行為に走れない生真面目な相棒、当たり前のこととはいえ、毎回、ブウブウ言いながら正しく切符を買う。
 で、切符を買ったからには、切符を買っていない不正者が抜き打ち検札で発覚する現場を見てみたい、と、検札が来るたびにひそかに期待する。 

 実際、地元のドイツ人たちが切符を買っているところを、あまり見かけない。ので、私も、もしかしたら上手いこと無賃乗車しているのかな、と勘繰ったりした。
 が、検札ではドイツ人たちは、定期券らしいものを見せる。ドイツ人たちもきちんと運賃を払っているわけだ。

 コッヘム行きの列車に乗り込んで、空いている席を探し、両開きのガラスの扉を開ける。扉内の席はがら空きで、車掌の女性が一人、悠々と座っている。
 あれ? ここは車掌室なのかな。すると車掌が、どうぞ、と言うので、その辺に座る。
 女車掌はさっさと検札を済ませると、座って本を読み始めた。列車が走っているあいだずっと、彼女は本を読んでいる。そしてコッヘムに到着すると、そのまま降りて帰ってしまった。

「楽だよね、ドイツの車掌って」

 ドイツを見る限り、勤労はより自由な人間生活の単なる一手段にすぎない。勤労を義務とし、美徳とする日本では、勤労自体が自己目的となり、評価基準となってしまっている。そして、日々の勤労に追われて、あくせくしている。

 To be continued...

 画像は、コッヘム駅。

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