世界に架ける橋

 
 翌日にはもうフランクフルトに戻らなければならない。マインツを発つ朝、受付の兄ちゃんに次の宿を予約してもらった。
 彼は人の好さそうな、おどおどとよく笑う太った若者で、相棒が頼んだユースホステルに電話してくれた。が、そこは生憎の満室。
「ビンゲンにしたらどうでしょう?」と若者が提案する。
「いや、ビンゲンじゃなくて……」
 相棒がビンゲンを避けるのは、そこがライン河畔の町だからなのだ。つまり、一度通過した町に再び戻るのは癪だというわけ。

 相棒はフランクフルト近郊の二次、三次の候補を挙げて予約を頼む。そのたびに若者は快く電話してくれるのだが、ことごとく駄目だった。
「ビンゲンにしましょうよ!」若者が勢いづく。
「そうだね、分かった、ビンゲンに行きましょう」
 とうとう相棒が了解を出して、若者がビンゲンに電話をしたら、すんなり予約が取れた。

「よかったですね、いってらっしゃい!」

 ライン再訪は再びの雨。丘陵のブドウ畑は、以前にはまだ芽吹いていなかった新葉が、ようやく伸びようとしている。
 ビンゲン・アム・ライン(Bingen am Rhein)は、ライン川沿いに広がる小さな町で、リューデスハイムの対岸に位置する。この町でライン川に合流するラインの支流ナーエ川が、町を分かつ形で流れている。
 駅に降りて一望すると、遊覧船から見たことのあるネズミの塔が見えた。

「あ、塔だ! お城だ! ブドウ畑だ! 懐かしいねえ、ライン川!」
 もともとはしゃぐ私と、ビンゲンを躊躇していたくせにいざ来てみるとはしゃぐ相棒。二人してはしゃぐ東洋人たち……

 To be continued...

 画像は、ビンゲン、ユースホステル近くからのライン川の眺め。

     Previous / Next

     Bear's Paw -ドイツ&オーストリア-
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« シャガールの... 世界に架ける... »