ギリシャ神話あれこれ:天才大工、頑張る(続)

 
 ミノス王のもとでも、彼は持ち前の創意工夫で活躍。ポセイドンの牡牛への恋を成就させたい王妃パシパエに、牝牛の張りぼてを作ってやったり、その結果生まれた牛人ミノタウロスの処置に困ったミノスに、怪物を封印する迷宮ラビリュントスを作ってやったりする。

 が、英雄テセウスに恋慕した王女アリアドネにせがまれて、迷宮の攻略法を伝授したことで、ミノス王の逆鱗に触れ、息子イカロスとともに迷宮へと幽閉される。
 だが、芸は身を助く。今度もダイダロスは、鳥の翼を作って迷宮を脱出。途中、イカロスは太陽に近づきすぎ、翼の蝋が溶けて墜死するが、ダイダロスはシチリア島まで逃げ延びる。

 さて、ダイダロスが逃亡したと知ったミノス王は大激怒。ダイダロスを始末すべく、その行方を尋ねて諸方に使者を出すが、一向に分からない。ダイダロスは、シチリアの王コカロスにかくまわれていたのだ。
 が、ミノスのほうも一筋縄ではいかない男。見つからないなら、おびき出せばよい、と、罠を仕掛ける。つまり、ダイダロスにしか解けない謎を触れまわるわけ。
 ……巻貝の穴に糸を通すことができた者には褒美を取らせよう、と。

 噂は遠くシチリアまでやって来る。コカロス王に相談を持ちかけられたダイダロス、いともあっさり、そんなことは簡単だ、蟻に糸を結びつけ、巻貝のなかを歩かせて通せばよい、と伝授する。

 この謎解きによって、ダイダロスの所在を知ったミノス王は、大船隊を率いてシチリアへと押し寄せる。ダイダロスを引き渡すよう迫るミノス。
 コカロスはミノスを歓待し、その入浴中、娘たちに湯を煮え立たせて殺させてしまう。別伝ではミノス王は、シチリアへ向かう途中、暴風雨に遭って、敢えなく水死したともいう。

 とにかく、ダイダロスのせいで牛に妻を寝取られ、ミノタウロスへの生贄も逃がされ、最後は謀殺されてしまった、散々なミノス王。
 そんなミノスは死後、正義をもって善政を施した王として(……って、あまり正義をもって、とも思えないんだけれど)、弟ラダマンテュスと、もう一人、最も敬虔な人間アイアコスとともに、冥界の判官に任ぜられた。

 画像は、ドーミエ「ミノス王」。
  オノレ・ドーミエ(Honore Daumier, 1808-1879, French)

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