東海の親不知(続)

 
 先生は窓に背を向けて座っているので、子供たちがどうして突然、絵を描かなくなったのか分からない。はい、みんな、ちゃんと描きましょうね、なんて促すのだが、子供たちはこちらに気を取られて、絵に手がつかない。
 で、ようやく大人の思慮を出して、大きくバイバイと手を振ってから、子供たちと別れて山道を行く。

 自然と子供とは世界中、どこにでもある。どこにでもいる。それだけでも、まだ訪れたことのない地を訪れる甲斐があるというもんだ。

 歩幅のバラバラな石段を登って、やがて現われたのは、朱色の仁王門。でもこれ、倒壊の危険、と注意書きがある。
 確かに今にも崩れそう。門は心なしか傾いてるし、仁王像はボロボロ。う~む、文化財をこんなふうにほっといていいもんなんだろうか? ……門を避けて、最後の石段を登る。

 ほどなく山頂に到着。香集寺という無人の寺と鐘突堂、石灯籠なんかがある。
 鐘を見てムラムラと突きたくなってきた相棒、ゴイ~ンと一突き、突いてしまった。おいおい、誰かが聞きつけて、登ってきたらどーすんの。
 山頂からは海岸や漁港を望むことができる。さっき見たところじゃ、この山、海から生えていて、波に打たれていたんだから、今、樹木で見えないけれど、5、6歩踏み出せば、すぐ下は崖っぷちなわけだ。

 麓まで戻ると、幼稚園の子供たちが目敏く私たちを見つけて、わいのわいのと騒ぎ出す。で、さっきのように大きく手を振ると、今度は子供たちも、それに応えてニコニコ笑って手を振り返す。
 小さい子って、一度目には無理でも、二度目には必ず友達になれる。

 To be continued...

 画像は、虚空蔵山の道祖神。

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