ギリシャ神話あれこれ:オデュッセウス帰還-魔女キルケ(続々)

 
 寝台から出る頃には、キルケはすっかりオデュッセウスを気に入って、豚に変えた部下たちを元の姿に戻し、船に残る部下たちも館に呼び寄せて歓待する。
 旅の養生のつもりで館にとどまり、居心地の好さにかまけて、来る日も来る日も肉を食らい酒を飲み、気がつくと1年をそこで過ごしていた。

 が、さすがに部下たちから、いい加減に故郷イタケのことを思い出してくれ、とせがまれたオデュッセウス、自分が旅の途中にあったことを思い出し、そろそろ帰郷させて欲しい、とキルケに申し出る。
 すると……

 引き止めはしない。ただ、その前に冥府に赴き、盲目の予言者テイレシアスの霊に会って、未来の行方を尋ねなければならない。という返事。
 冥府! 愕然となるオデュッセウスに、キルケはさっさと冥府への道程と、儀式の手順を教える。

 翌朝、オデュッセウスは部下に出航の号令をかける。が、このとき、最も若いエルペノルが、酔って屋根で眠っていたところを梯子から滑り落ち、首の骨を折って、一足先に冥府へと降ってしまった。
 さあ、まずは冥府に向かうぞ! こう告げられたイタケ勢は、当然のごとく驚愕し、それから悲嘆し、それから観念して出帆する。

 船はキルケの送るボレアス(=北風)の息吹に運ばれて、地の果て、世界を取り囲む極洋オケアノスを越えると、キンメリア族の住まう、陽光が絶えて射すことのない霧と闇に包まれた常夜の地に到着する。

 To be continued...

 画像は、ステレット「キルケの館のオデュッセウス」。
  ヴァージニア・フランシス・ステレット
   (Virginia Frances Sterrett, 1900-1931, American)


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