白馬、白馬!(続々々々)

 
 ついでに画材も覗いちゃう。十数色の固形絵具と水ペン、SMのスケッチブック。参考、参考。
 ここでスケッチブックを取り出すと、自己顕示してるみたいでイヤなので、夫婦が立ち去ってから、私もスケッチし始めた。

 と言っても、山は霧に隠れている。すっかり晴れたら、多分これくらいの高さだろう、とアタリをつけて、描いてるうちに晴れるのを期待して、雪の残る稜線の、見えてる部分をシャカシャカ描く。これだって、すぐに霧に隠れてしまう。姿を現わすのを待って描く。結構、辛気臭い。
 でも、徐々に山の見える時間が増えてきた。「僕も描くから鉛筆貸してよ」と相棒。向こうのほうに陣取って、シャカシャカと描き始めた。
 
 スケッチしてると、すぐ前の道を、唐松岳へと登る登山者や、唐松岳から降りてくる登山者が、スタスタと通り過ぎる。みんな、「こんちは」、「こんっちはー」と挨拶していく。こういうの、海にはないよね。
 無為に過ごした甲斐あって、やがて、物凄い勢いで、あっちのも霧もこっちの霧も、一斉に引き始めた。そして、遠く、連峰に覆いかぶさっていた雲が、まるで緞帳幕が上がるように、横一線に、ゆっくりと、上昇気流に押し上げられていった。

 こうなると相棒、スケッチどころではない。なんたって彼は、山があれば登りたがるのだから……
「せっかくだから、もう少し登ってみよう!」
 荷物持って、スタコラ唐松岳を目指す。

 唐松岳、ナメてんの? 唐松岳への道はホンモノの山道。たまーにすれ違う人は、みんなちゃんとした装備の登山者ばかり。
 で、呑気な相棒とは反対に、私は、標高2000メートル級を歩いたせいか、心臓がバクバクと鳴ってきた。
 
 To be continued...

 画像は、八方尾根から見下ろした白馬三山(多分)。

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