山岳ガイド赤沼千史のブログ

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雪洞泊、深雪を頂く

2017年03月13日 | ツアー日記

3月になって戻ってきた寒気が北アルプスにまた雪を降らせた。

栂池ロープウェイを降りてスキーにシールを貼り付け歩き始める。

さーて、雪洞はどこに掘ろうかなあとしばらくウロウロした。

掘り出した雪を捨てるのには、ある程度の傾斜があった方が楽なので栂池自然園の縁にあたる場所をそこと決め掘り始めた。

先ずは表面に積もった新雪を押しのけてその下のクラストした雪面を出す。

四角くスコップを突き刺して少しスコップをこじるとバコッと30センチ角の雪ブロックが気持ち良くとれた。

こりゃいいや。

お客さんの二人の女性にも手伝ってもらって2箇所から掘り進め中で合体させる建設計画だ。

掘っては外に放り出しまた掘っては放り出す。

中に行くと結構固いところがあって苦労したが、ほとんど休むことなく2時間。

今日のお宿は見事落成した。

縦長の三畳程のその空間は必要にして充分。

栂池自然園駅より徒歩五分、雪洞泊には絶対かかせない蝋燭を立てる燭台を三つ完備、物置付の1Kだ。

雪洞を掘り上げてからまだ時間があったので天狗原方面に滑りに出かけた。

今朝方誰かが踏んでくれた踏み後を辿ってハイクアップ出来たので助かった。

お客さんのお二人は雪洞もそうなのだが、新雪滑りもは初めてとのこと。

しかも、降り積もった雪は40センチ程ある。

果たして、滑れるだろうか?

少し不安がよぎったのだが、僕の心配は無用だった。

今回の新雪はとても軽くて板がストレスなくよく回った。

初めての深雪滑りでこの雪は大当たりだとおもう。

年に一回あるかないかの軽く深い雪。

二人には深雪滑りのこつを少し教えただけなのに、最初少し戸惑いながらもみるみる滑れるようになったのだ。

風は殆どなく静かな夜だった。

僕たちが掘りあげた雪洞の中は更に静かで、燭台に灯したキャンドルの炎が音もなく燃え、掘り出した多面構造の壁面を美しく照らしだす。

うっとりするよなこの雪洞の世界。

雪洞って寒くないのですか?と良く聞かれる。

はて?

暖かくもないが寒くもない。

それが答えだな。

コンロを炊いてもテントのように室内は暖まってはくれない。

お湯が沸けば室内は深い霧に包まれる。

難儀なこともあるにはある。

だが、例え外が荒れ狂う吹雪の夜だとしても僕らはそれを知らずに眠ることが出来る。

湿度が相当高いので寒い時期の方がより快適だろう。

あれこれ作りながら熱燗を頂く。

静かに静かに雪は降り続いた。

朝目覚め外に出ると、更に30センチの積雪があった。

身支度を調えハイクアップする。

板が踏みつける新雪がふわりと舞い上がるほど昨日以上に軽い雪だった。

この二三日で降り積もった雪は70センチ程あるだろう。

ロープウェイの運行はまだまだなのでこの大斜面は僕たちだけの世界だ。

天狗原まで殆ど踏み後もなくなった斜面を喘ぎながら登り上げて先ずは1本目。

腰まで潜る程だが板が楽しく回るしスキートップがあげる雪がゴーグルの顔面を直撃して前が見えない。

いわゆるオーバーヘッド。

気持ち良すぎだ。

さすがにいい歳こいてヒャッホーとか声は上げないが心の中では笑いが止まらない。

滑り終えるとまたハイクアップしてすかさず2本目。

シールに雪が付着してスキー板への張りつきが悪くなってきたのを何とかして更に3本目。

お客さんお二人もだんだん思い切りがよくなって、なかなかうまいことやっている。

はじめてでこれはないでしょ?

70センチであれはないでしょ?

初めてでオーバーヘッド滑っちゃうの?

 

さんざん滑ってから雪洞にもどり荷を担いでゲレンデを下山した。

夢の様な二日間。

復活なった倉下の湯に久しぶりに入る。

飯森の山人にて蕎麦をたぐり、穂高駅解散。

みもこころも、さっぱり!

はあ、最高だったね。

 

 

 

 

 


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