ちゃびの器

ちゃびの器を用意することにした
器にちゃびの魂を呼び戻すんだ
入院したちゃびが寂しくないようにおもちゃを持たせた
最期までちゃびと一緒に居たおもちゃ
あの日から肌身離さず持ち歩いているこのおもちゃには
きっとちゃびの魂が留まっているはず
これを器に移すんだ
そうすれば、またちゃびと一緒に暮らせるはずだ
ちゃびの爪もある
これを食べさせれば、きっとちゃびが蘇る
何でも良い
ちゃびを復活させるんだ
なるべくなら似た外見が良いけど
この際、外見はどうでも良い
私が大好きなのは、ちゃびの中身だもの
やんちゃで、うるさくて、甘えん坊で、寂しがり屋な

待っててね、ちゃび
すぐに僕の器を準備するからね
また一緒に暮らそうね
大好きだよ
ずっと、ずっと
ママはちゃびだけを愛しているよ

ちゃびの乳歯

明日、母が退院する
母は帰ってくるのに、ちゃびは居ない
もうあの頃には戻れない

居なくなったのがちゃびではなく、母だったら良かった
母を亡くしてもこんなに悲しくはなかった
どうして、ちゃびが

最近眠れなくなった
この前まで、ちゃんと眠れていたのに
初めて睡眠サプリを試してみた
深く眠ってしまうと、ちゃびに何かあった時
気が付くことが出来ないから、今まで眠れなくても
飲んだ事はなかった
今はその必要なくなってしまった

早くちゃびに会いたい
子犬のころに抜けたちゃびの乳歯
気が付いただけ保存していたけど、それを食べた
ちゃびは私の中に居る
そう感じられるように

妄想

癌の治療を止めて３ケ月
体調にこれといった変化はない
もっと簡単に悪化すると思ったのに・・・
いつまで苦しまなくてはならないのだろう

もしも、ちゃびを一人で留守番させたりしなかったら
肺炎になった時に仕事を休んで看病に専念していたら
入院させたりしなかったら
色々と空想してみる
空想の世界で私とちゃびは一緒に居る
シチュエーションも細かに妄想すると現実を忘れられる
心が落ち着く
時々、ちゃびの声が聞こえる気がする
気配を感じる気もする
側に居るような気がする
妄想と現実が入れ替われば
脳に転移したら良いのではないだろうか