とにかく私とマチルダは付き合いを始めた。
恋人と言うよりは「同志」と言った方が正しいかも知れないが、
少なくとも士官学校の先輩後輩でもなく、上官と部下でもなく、男と女として。
時間がある限り会い、そして話した。自分の事、過去の話、これからの話。
不思議な事にお互いに軍人でありながら、2人で会っている時は「戦いの話」は出て来なかった。
これが普通なのかも知れないが、戦争をやっている軍人同士でありながら、
その話が出ないのもやや違和感がある。
だが、それだけ「2人の時間」を過ごす事が重要だったのだ。
そしていよいよ赴任の時がやって来た。
「じゃあそろそろ行くよ。ジャブロー行きの飛行機が出る」
「えっ?もうそんな時間?早いわね...。」
「寂しいかい?マチルダ」
「ええ、寂しいですよ。あなたの半分ぐらいだけど(笑)」
そう言われて(それはそうかも知れない)と思った。
実際、離れるとなると言いようの無い寂しさが包み込んだのは事実だ。
でもこの赴任が無ければ今のマチルダとの付き合いも無いのだから、
それはそれで複雑な心境でもある。
「ジャブローに着いて落ち着いたら連絡するから」
「待ってるわ。でもあなたの事だから真っ先に仕事に飛び付いて忘れるんじゃないかしら?」
「そ、そんな事は無いよ。他の事ならまだしも、君への連絡を忘れるような事は決してない」
「うふふ。またそんなにむきになる...冗談よ」
こう言われるともう苦笑いするしかない。ずっとこんな調子だ。
でも彼女とこういう風に過ごす事が自分の望んでいた事であるので、
幸せと言うべき事なのだろう。
彼女もそうやって楽しんでいるように見える。
自分で言うのもおかしいが「いい関係」になってると思う。
「見送りはここまでね」
「そうなのかい?搭乗デッキまで来ないのかい?」
「...ホント鈍いわね...私だって...寂しい事、気付いてくださる?」
「す、すまない...」
「いいのよ、謝らないで。やっぱり見送るのは寂しいものよ」
彼女のそんな気持ちを心底愛しいと思った。
私とマチルダは自然とキスををして互いを抱き締めあった。
ぬくもりがずっと残るように、強くしっかりと彼女を抱き締めた。
「じゃあ行くよ」
ずっと抱き締めて時間の流れを止めたいと思ってもそれは出来ない。
まだしっかりと私の体を抱く彼女の腕が離れやすいように体を動かした。
彼女の腕が名残惜しそうにしながらゆっくりと力が抜けて行く。
思わずもう一度引き寄せたくなったが我慢をした。
デッキに向かって歩いて行く。振り返るとマチルダがこっちをジっと見つめている。
曲がり角が近付く。
私は曲がる前に足を止め、彼女に向かって敬礼をする。
彼女も笑顔で敬礼を返してくれた。
その笑みはどこか寂しげではあるが美しい笑顔だった。
恋人と言うよりは「同志」と言った方が正しいかも知れないが、
少なくとも士官学校の先輩後輩でもなく、上官と部下でもなく、男と女として。
時間がある限り会い、そして話した。自分の事、過去の話、これからの話。
不思議な事にお互いに軍人でありながら、2人で会っている時は「戦いの話」は出て来なかった。
これが普通なのかも知れないが、戦争をやっている軍人同士でありながら、
その話が出ないのもやや違和感がある。
だが、それだけ「2人の時間」を過ごす事が重要だったのだ。
そしていよいよ赴任の時がやって来た。
「じゃあそろそろ行くよ。ジャブロー行きの飛行機が出る」
「えっ?もうそんな時間?早いわね...。」
「寂しいかい?マチルダ」
「ええ、寂しいですよ。あなたの半分ぐらいだけど(笑)」
そう言われて(それはそうかも知れない)と思った。
実際、離れるとなると言いようの無い寂しさが包み込んだのは事実だ。
でもこの赴任が無ければ今のマチルダとの付き合いも無いのだから、
それはそれで複雑な心境でもある。
「ジャブローに着いて落ち着いたら連絡するから」
「待ってるわ。でもあなたの事だから真っ先に仕事に飛び付いて忘れるんじゃないかしら?」
「そ、そんな事は無いよ。他の事ならまだしも、君への連絡を忘れるような事は決してない」
「うふふ。またそんなにむきになる...冗談よ」
こう言われるともう苦笑いするしかない。ずっとこんな調子だ。
でも彼女とこういう風に過ごす事が自分の望んでいた事であるので、
幸せと言うべき事なのだろう。
彼女もそうやって楽しんでいるように見える。
自分で言うのもおかしいが「いい関係」になってると思う。
「見送りはここまでね」
「そうなのかい?搭乗デッキまで来ないのかい?」
「...ホント鈍いわね...私だって...寂しい事、気付いてくださる?」
「す、すまない...」
「いいのよ、謝らないで。やっぱり見送るのは寂しいものよ」
彼女のそんな気持ちを心底愛しいと思った。
私とマチルダは自然とキスををして互いを抱き締めあった。
ぬくもりがずっと残るように、強くしっかりと彼女を抱き締めた。
「じゃあ行くよ」
ずっと抱き締めて時間の流れを止めたいと思ってもそれは出来ない。
まだしっかりと私の体を抱く彼女の腕が離れやすいように体を動かした。
彼女の腕が名残惜しそうにしながらゆっくりと力が抜けて行く。
思わずもう一度引き寄せたくなったが我慢をした。
デッキに向かって歩いて行く。振り返るとマチルダがこっちをジっと見つめている。
曲がり角が近付く。
私は曲がる前に足を止め、彼女に向かって敬礼をする。
彼女も笑顔で敬礼を返してくれた。
その笑みはどこか寂しげではあるが美しい笑顔だった。