新型・『オレ日』★☆☆☆☆

丸8年経ちました。
9年目となりタイトルに☆が増えました。(^_^;)

FRAME 3 【2人】

2005-07-02 03:33:33 | GUNDAM
待ち合わせの場所に行くとマチルダが既に座って待っていた。
遠くからでも彼女のきれいな髪の色が、明るく輝いて見えた。
「ごめん、遅くなってしまって」
「いえ、私もさっき着いたばかりですから」
(しまったっ!私服で来ていたのか!)いつも通り、軍服で来てしまった自分に後悔した。
マチルダの白いシャツワンピースが眩しく見えた。
制服や作業服姿の彼女しか見ていない自分にとって、その姿は眩し過ぎた。

「すまない、こんな格好で」思わず謝ってしまった。
「そんなイイんです。私の方こそこんな姿でごめんなさい。こういうの着慣れてないもので...。」
「いや、スゴク似合っているよ。きれいだ。」
自然と【きれいだ】と言った自分には気が付かなかった。
「きれいだなんて...そんな...」
照れて少し顔を赤らめたマチルダの言葉に、自分が発した言葉を自覚した。
「いや、本当にきれいだよ。自然に言葉が出てしまったよ」
「お上手ですね、少尉。意外と女性には慣れてらして?」

こういうセリフはある意味「いつものマチルダ節」とも言える。

「そ、そんな事はないよっ!ただ...本当にそう思ったんだ」
今度は自分が顔を赤らめる事になってしまった。
「ありがとうございます。少尉にそう言っていただけると着て来た甲斐があります」
そう言うと彼女は笑った。それはあまりにも無防備で美しい笑顔だった。

彼女の隣に腰掛けたが、緊張で彼女の方をまともに見られない。
掌はじんわりと汗ばんで来ているのがわかる。
情けない男だ、とあらためて思う。
「少尉、あのお話なのですが...」彼女が切り出した。
「あぁ、そうだったね。」

こちらから話を切り出しても良かったが、少しでも彼女とこうやって座っているためには
その話を切り出してはいけない気がして自分からは話し出せない感じを持っていたところだった。

「私はね、ずっと軍に入ったからには最前線で敵と戦う事が軍人の最大の役目だと思っていたんだ。」
「だがね、人は戦うだけでは生き残れない。戦って勝利を掴む為には多くの支援が必要である事を勉強したんだよ。」

「なるほど。でもそれはご自身でやらなければならない事だったのでしょうか?」
「と言うと?」
「ウッディ少尉が自ら行う必要を感じたのはなぜなの?って思っただけです」

「うん、最前線の軍人は戦争が終われば貢献出来る事は無くなる。
しかし、物を作る任務は戦争が終わっても貢献出来る。」
「それは軍隊のみならず、そこに住む人々全体に役に立てる事だと思ったのだよ。
この戦争で地球もコロニーも多く傷付いてしまった。」
「それらの復興にも関われるような仕事がしたい、そう思ったからかな?
戦争真っ只中でこう考えるのはある意味軍人失格かも知れんが...。」

マチルダは黙って聞いていた。その視線はこの場には無く、どこか遠くを見ているようだった。
それはずっとずっと未来の、将来の自分の姿を探すように...。

「ふぅ~」
大きく息を吐いてマチルダがこっちに振り返った。
「!!!」
ボ~っとその横顔を眺めていたのがバレたのかと一瞬驚いた。

「少尉、私決めました。私も補給部隊を希望します。」
「えっ?!本当かい?」
「ええ、本気ですよ。少尉の言葉ではっきりしました。私、絶対に補給部隊に行きます!」
「そ、そうか...じゃあ一緒に仕事が出来そうだな。」
「そうですね。」
「私、軍に入ってから目的も無くただただ日々の訓練をこなすだけだったんです」

意外な言葉が彼女の口から出た。
彼女は誰もが認める優秀な軍人であり、将来は士官となり多くの部下を指揮するであろう人格をもった人だ。
我々のような先輩連中も、教官もそれに異を唱える人間などどこにもいないと思っていた。
それがどうだ。彼女自身が否定しようとしている。

「どういう事だい?」
「私は自分の性格が嫌で軍に入ったんです。
軍でただ命令に従って自分の考えを無くす事でいろいろな問題から逃げられると思っただけです。」
「とにかくがむしゃらに訓練をこなし、任官が迫って来た時に自分の存在は何なのか?どこに向かうべきなのか?何も考えていない事に気が付いたのです。」

彼女がそういう「悩み」を持って軍隊生活をしているとは本当に意外だった。
いつもきりりとした態度、何事も確実にこなす姿は、他の兵の見本でもあった彼女がである。

「少尉のお話を聞いて目標、いや目的が出来ました。
戦いの中だけでなく、その先の未来まで我々が尽力出来る事があるって事を」
「そうだな。この戦いは破壊の戦いではない。その先の未来を作る為の戦いだと信じよう」
「ええ、そうですね。多くの人の犠牲をムダにするわけにはいきませんもの」

空を見上げると月がぼんやりと見えている。星空は見えない。
昔見えた星空は、コロニーの落着で無数の塵が大気に放出され完全に覆ってしまった。
「今、星空が見えたらどんなに気持ちいいだろうね」
「ええ、きれいだったでしょうね」
「でも私には十分かも知れない」
「えっ?」
「今、私の隣にはどんな星の輝きもかすんでしまう美しい瞳を持った人が座っているから...」
「しょ、少尉...」

「マチルダ、僕と、僕と一緒にいてくれないだろうか?これからお互いの事をもっともっと知りたいと思わないかい?」
「ウッディ少尉...」
「いや、今すぐに返事はいらない。急にこんな事を言い出した私が悪いのだ...」
「そ、その、私は...すっと君の事が気になっていて...」
「あはは、ウッディ少尉。そんな慌てた少尉を見るのは初めてですよ。」
「す、すまん...。と、とにかくゆっくり考えてくれ、マチルダ」

「スイマセン少尉。それは出来ません。」
「...そ、そうか...そうだよな...こんな事、無理だよな...」
「ええ、ゆっくり考えるなんて私は出来ません。今すぐお付き合い、始めましょう」
マチルダはそう言うと軽くウインクをした。
私は...私は完全に「撃墜」されていた。やはり艦艇で宇宙に出るには向いていないようだ。

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