読売新聞の連載記事で、以下のような取り組みが紹介されていましたので、引用させていただきました。
―――――――――――
「親も一緒」の視点で 連載「職業観育成教育」(上)
就職も進学もしないニートやフリーターが社会問題となるなか、中学、高校などで職業観の育成を図る学校が増えている。文部科学省は、本年度から「キャリア教育実践プロジェクト」の一環として、中学校を中心に5日間以上の職場体験を実施している。学校での職業教育の現状と課題を探った。
「働くって?」玄田有史・東大社研助教授が講演
11月上旬の東京都江東区立深川第3中学校。ニート問題に詳しい東京大学社会科学研究所助教授の玄田有史さんが、会場に集まった中学1年生を相手に「働くってどういうこと?」というテーマで講演を行った。「中学3年の時点で夢を持っていた人が、大人になってやりたい仕事に就ける確率は15%」という話を紹介しながら、「どうすれば、やりたい仕事につけると思うか」「何故、勉強をしなくてはいけないのか」といった疑問にわかりやすく答えていった。
「学校の勉強は、会社や社会に出て訳がわからないことに出会った時に、そこから逃げ出さない『心の体力』をつけるため」との言葉に、生徒たちも熱心に聴き入っていた。
公立中学校で職業観を育てる試みや職場体験学習が広がっている。背景には、就職から3年以内に辞める「早期離職率」の問題や、ニート、フリーターなどへの危機感がある。富山県の職場体験「14歳の挑戦」や兵庫県の「トライやるウィーク」の成功が、こうした動きに火をつけたようだ。
中学生が教師体験!
東京都では、文部科学省の「キャリア教育実践プロジェクト」を活用しながら、本年度から公立中学での職場体験「わくわくウィーク東京」をスタートした。中学2年生が5日間程度、地元企業などで仕事体験をする。町田市と杉並、江戸川両区の3区市が文部科学省の推進地域も兼ね、これまでに18区22市2町村の約4万人が参加した。
小学校での「先生」体験に取り組んだ町田市立堺中学の生徒 町田市では、9月26日から5日間、市内20校全校の2年生約2800人が一斉に職場体験を行った。町田市立堺中の齋藤直子校長は、この体験を通して「子が育つ、親が育つ、教員が育つこと」を狙いとし、「どの地域の学校でもできる方法」で取り組んだ。
まず、職場、職種の希望調査を子、親双方に行い、家庭での親子の対話と職場体験への意識づけを促した。受け入れ先については、全校の保護者に対して職場の提供を呼びかけた結果、約50か所を確保した。校長は全事業所に自ら赴き、「求人条件」を打診。生徒と受け入れ先とのマッチングには2年の全教員が総力をあげて取り組んだ。
小学校で教師の体験をした生徒は、「本当の教育実習生のようにしてもらい、小学生からも慕われて誇らしかった。将来は絶対、小学校の先生になる」と、手ごたえをつかんだ様子だ。
「親や世の中を啓発して、共に子どもたちを育てていくことが大切」と齋藤校長。さらに「職場体験で生徒が一変するわけではない。心の中にきざした変化が、将来の目的ある学びにつながってほしい」と語る。
子どもは「社会人予備軍」
江戸川区立小松川第1中は、昨年1日だった職場体験を、今年は5日間に拡大した。受け入れ先は、堺中と同様、校長が先頭にたち、教師や保護者を巻き込んで開拓した。子どもたちは、社会の大人たちと触れ合うことでいきいきと輝いて帰ってきた。日ごろ不登校の生徒も今回は全員参加するなど、職場体験への関心は高かったという。
中学2年の「14歳」という年齢は、学校内の組織や行事でも中心にたち、責任感や他人への配慮が芽生える貴重な時期だ。宇佐美博子校長は「この時期に職場体験することが大切」と言い切る。さらに「キャリア教育とは、学力だけでなく、命を大切にするなど生きるうえで必要な『子どもの力』を育てること。社会全体の教育力が低下するなか、親や社会も一緒になって動かしていくことが必要」と力説する。
都青少年育成総合対策部の若林彰課長は「子どもは社会人予備軍。学校だけに任せるのではなく、大人が意識を変えて、社会全体で育てていく必要がある」と話している。
(以上)
―――――――――――
実績として、富山や兵庫の例も挙げられていますが、やはり「働くということの実体験」は本人たちに何かを感じさせるものではあると思います。たまたま今日はNHKのラジオでも10代の金銭感覚というシリーズでの特集で高校生のバイトについて視聴者から意見を集めて放送していました。ある大学教授もコメンテーターを務めていましたが、その中でアメリカの小中高大学生とバイトについての話が非常に日本の現状と違い印象的でした。日本の高校生がアルバイトをする目的は、多くの場合「小遣い稼ぎ」というものが目立ちますが、これがアメリカの高校生は、大学へ行くための学費稼ぎだったり、留学費用だったりします。
中学生の取り組みとして、実際に金銭報酬を与える事まではなかなか想像しがたいですが、働くことと報酬は、切り離せないものであることも事実です。鳥取県では高校生のアルバイトを教育委員会が斡旋するという全国でも珍しい取り組みが行われています。自立という言葉の中には「態度」「精神」「経済」という領域があると思います。労働体験により、仕事観を養うことが目的にあるであれば、中学生にも是非報酬を与える労働体験も機会提供するような取り組みがどこかで行われないものか、注目していきたいです。
ただ、これも与えられるものではなく、構造から変化していかないと本質的に「やりたいことがないから働かない」「社会に出ることが不安」といったニートの声は消えることはないのかも。一面的な対策では解決は非常に難しいと感じます。そんな思いを持ちつつも、今現実にニート状態に陥っている人を底から脱却させる支援は「一面的」かもしれませんが、取り組めることの一つとして行っていきます。
―――――――――――
「親も一緒」の視点で 連載「職業観育成教育」(上)
就職も進学もしないニートやフリーターが社会問題となるなか、中学、高校などで職業観の育成を図る学校が増えている。文部科学省は、本年度から「キャリア教育実践プロジェクト」の一環として、中学校を中心に5日間以上の職場体験を実施している。学校での職業教育の現状と課題を探った。
「働くって?」玄田有史・東大社研助教授が講演
11月上旬の東京都江東区立深川第3中学校。ニート問題に詳しい東京大学社会科学研究所助教授の玄田有史さんが、会場に集まった中学1年生を相手に「働くってどういうこと?」というテーマで講演を行った。「中学3年の時点で夢を持っていた人が、大人になってやりたい仕事に就ける確率は15%」という話を紹介しながら、「どうすれば、やりたい仕事につけると思うか」「何故、勉強をしなくてはいけないのか」といった疑問にわかりやすく答えていった。
「学校の勉強は、会社や社会に出て訳がわからないことに出会った時に、そこから逃げ出さない『心の体力』をつけるため」との言葉に、生徒たちも熱心に聴き入っていた。
公立中学校で職業観を育てる試みや職場体験学習が広がっている。背景には、就職から3年以内に辞める「早期離職率」の問題や、ニート、フリーターなどへの危機感がある。富山県の職場体験「14歳の挑戦」や兵庫県の「トライやるウィーク」の成功が、こうした動きに火をつけたようだ。
中学生が教師体験!
東京都では、文部科学省の「キャリア教育実践プロジェクト」を活用しながら、本年度から公立中学での職場体験「わくわくウィーク東京」をスタートした。中学2年生が5日間程度、地元企業などで仕事体験をする。町田市と杉並、江戸川両区の3区市が文部科学省の推進地域も兼ね、これまでに18区22市2町村の約4万人が参加した。
小学校での「先生」体験に取り組んだ町田市立堺中学の生徒 町田市では、9月26日から5日間、市内20校全校の2年生約2800人が一斉に職場体験を行った。町田市立堺中の齋藤直子校長は、この体験を通して「子が育つ、親が育つ、教員が育つこと」を狙いとし、「どの地域の学校でもできる方法」で取り組んだ。
まず、職場、職種の希望調査を子、親双方に行い、家庭での親子の対話と職場体験への意識づけを促した。受け入れ先については、全校の保護者に対して職場の提供を呼びかけた結果、約50か所を確保した。校長は全事業所に自ら赴き、「求人条件」を打診。生徒と受け入れ先とのマッチングには2年の全教員が総力をあげて取り組んだ。
小学校で教師の体験をした生徒は、「本当の教育実習生のようにしてもらい、小学生からも慕われて誇らしかった。将来は絶対、小学校の先生になる」と、手ごたえをつかんだ様子だ。
「親や世の中を啓発して、共に子どもたちを育てていくことが大切」と齋藤校長。さらに「職場体験で生徒が一変するわけではない。心の中にきざした変化が、将来の目的ある学びにつながってほしい」と語る。
子どもは「社会人予備軍」
江戸川区立小松川第1中は、昨年1日だった職場体験を、今年は5日間に拡大した。受け入れ先は、堺中と同様、校長が先頭にたち、教師や保護者を巻き込んで開拓した。子どもたちは、社会の大人たちと触れ合うことでいきいきと輝いて帰ってきた。日ごろ不登校の生徒も今回は全員参加するなど、職場体験への関心は高かったという。
中学2年の「14歳」という年齢は、学校内の組織や行事でも中心にたち、責任感や他人への配慮が芽生える貴重な時期だ。宇佐美博子校長は「この時期に職場体験することが大切」と言い切る。さらに「キャリア教育とは、学力だけでなく、命を大切にするなど生きるうえで必要な『子どもの力』を育てること。社会全体の教育力が低下するなか、親や社会も一緒になって動かしていくことが必要」と力説する。
都青少年育成総合対策部の若林彰課長は「子どもは社会人予備軍。学校だけに任せるのではなく、大人が意識を変えて、社会全体で育てていく必要がある」と話している。
(以上)
―――――――――――
実績として、富山や兵庫の例も挙げられていますが、やはり「働くということの実体験」は本人たちに何かを感じさせるものではあると思います。たまたま今日はNHKのラジオでも10代の金銭感覚というシリーズでの特集で高校生のバイトについて視聴者から意見を集めて放送していました。ある大学教授もコメンテーターを務めていましたが、その中でアメリカの小中高大学生とバイトについての話が非常に日本の現状と違い印象的でした。日本の高校生がアルバイトをする目的は、多くの場合「小遣い稼ぎ」というものが目立ちますが、これがアメリカの高校生は、大学へ行くための学費稼ぎだったり、留学費用だったりします。
中学生の取り組みとして、実際に金銭報酬を与える事まではなかなか想像しがたいですが、働くことと報酬は、切り離せないものであることも事実です。鳥取県では高校生のアルバイトを教育委員会が斡旋するという全国でも珍しい取り組みが行われています。自立という言葉の中には「態度」「精神」「経済」という領域があると思います。労働体験により、仕事観を養うことが目的にあるであれば、中学生にも是非報酬を与える労働体験も機会提供するような取り組みがどこかで行われないものか、注目していきたいです。
ただ、これも与えられるものではなく、構造から変化していかないと本質的に「やりたいことがないから働かない」「社会に出ることが不安」といったニートの声は消えることはないのかも。一面的な対策では解決は非常に難しいと感じます。そんな思いを持ちつつも、今現実にニート状態に陥っている人を底から脱却させる支援は「一面的」かもしれませんが、取り組めることの一つとして行っていきます。