Motor Rock Life!!南方見聞録

Cannonballrush!!Vo/g,Captain,JerryのMotorRockな徒然帳。

Bad situation

2017-05-23 19:19:56 | 日記
黒地に金色のロゴでESPと誇らしげに書かれたショルダーケースを担いだギター少年が、

「Jerryさん!CannonBallRush!!のJerryさんですよね!」

と、声をかけてきたのは真冬の名古屋、
ストーブにへばりついたら2度と離れてやるもんか!と、心に誓いたくなる寒さの12月だった。

俺には真似しようにも真似できないくらいキラキラした瞳のギター少年は、

「あ〜〜!Jerryさんだ!!めちゃめちゃギター好きです!」
と、
女子大生に言われたら間違い無くお金を払いたくなる褒め言葉を容赦無く連発してくれた。

普通なら掛け値無しで喜びたい状況だが、

この時、俺はいくつか危険な状況に置かれていた事を語らねばならない。

まず、

このギター少年が声をかけてきた場所が、いわゆる風俗関係のビルの前。向かいにも明らかな風俗ビルが露骨に、癒しの人妻エステ!と電光板を輝かせている。

俺はたまたまこのビルの裏側の駐車場から出てきただけなのだが、ギター少年が俺を発見したとき、
おそらく彼の瞳には、一戦終えて風俗ビルから出てきたようにしか見えないのは明白!

しかも、寒さで襟を立てるようにポケットに手を入れ、見方によっては人の目をはばかるような格好…

いくらなんでも、完璧に風俗帰りの姿以外に見えることはない!

純粋なギター少年には場所はどうでも良かったのかもしれない。

ただ、
もし、
彼が今から自分のバンドの練習、学校のサークルの集まりに向かっているのなら、
間違い無く、
「今日、いや、さっきさ、CannonのJerryさんに会ったよ!」と話すだろう。

近々のHotな話題として選ばれるにはもってこいだ。

しかし、

「Jerryさん、人妻ヘルスから出てきたよ!」
これは避けたい!
最も避けたい!

あってはならない!

なんとか保身に全力投球しなければ!

寒さに身を凍らせている場合ではないのだ。

まず、ここは、やっぱスゲーな!と驚くようなエピソードをギター少年の心に焼き付ける一言で、

場所!という不利な環境を取り除くべきだ!

「Jerryさんて、エフェクター何を使ってるんですか?めちゃくちゃ音凄いですよね!」

まぁ、よくある質問だ。

「あぁ、俺は1発だよ。基本的にいつも1発だから」


と、答えた直後、

おい!
ちょっと待て!
ちょっと待てよ!俺!

人妻ヘルスの前でだ!

1発!?

しかも、いつも1発!!

ガソリンが漏れまくってるスタンドでタバコに火をつけるようなもんじゃないか!

むしろ、

いつも1発!

どんだけタンパクな話だ!

いや、
違う。違うんだ。
風俗には行ってない!
事実、ほんとに行ってないのに、逆に慌てたら勘違いから、ギター少年が炎上の導火線に火をつけるじゃないか。

落ちつけ!

ギター少年は、アンプ1発に少し驚きながら、LIVEを見たときの話をし始める。

「MCが熱くて、たまに下ネタが入る時のギャップが凄いですよね! ワンマンの時、3時間以上だったのに、アッと言う間に感じました! 長さを全然感じないっす! 普段30分のLIVEとかだともっと早くかんじますよね!」

俺は素直にギター少年の感想に喜びを感じたよ。

そして、「そうだね、普段はアッと言う間に終わっちゃう感じで、物足りないかもしれないね(笑)」

これは…いけない。

これはまさに男のプライドとして実にいけない!

風俗ビルの前で、
物足りない男!アピールは色々な意味でダメな男と自己紹介しているようなものじゃないか!

いや、
行ってない!風俗には行ってないんだ!

だが、
プライドがすり減る音が止まない!

俺は荒技、歩きながら話さないか?作戦に切り替えようと、ギター少年をうながそうとした、
その瞬間、

ギター少年の携帯が鳴り出す。

「あ、すいません。ちょっといいですか?」

ギター少年は少し申し訳なさそうに電話に出る。

聞く気は無いが、彼の会話は目の前だ。

嫌でもきこえてくる。

友達か何かと話してるのだろうが、
すぐに少しテンション上げ気味で、
「ちょっ!今さ、CannonBallRush!!のJerryさん おるよ! いや、マジで!(笑) 偶然会ったんだけど、凄くない?」

ここまでは問題無い。

気持ちいいじゃないか!
嬉しいじゃないか。

しかし、彼の会話は続く。
「え?うん。もうすぐ着くよ、今? え〜〜と、ヘルスがいっぱいあるとこ。わかる?あの人妻なんとか…の看板がいっぱいあるとこの前の信号!」

おいおいおい!

どう思うよ?
君の電話の相手さ。

会話を整理してみたら、人妻ヘルスのいっぱいある場所で、偶然、Jerryに会う!

これ、もう、
完全に風俗帰りを直撃コースじゃないか!

ついに

最終手段に出る!
電話口にも、彼のハートにも響くように、

少し大きな声で、
「まぁ 人妻ヘルスに行ってたわけじゃないけどね!」と、

極力独り言に捉えられる範囲のフィーリングを残したまま、

電話の向こうの彼の友人にも間接的、かつ、

ダイレクトに身の潔白を伝えたのだ。

が、


いけない!
人妻ヘルスに行っていたわけじゃない…

これではまるで、
3階にあるイメクラに行っていたテンション

もしくは向かいのイメクラで征服プレイをしてきた!と勘違いされてしまう!

悔やんでも悔やみきれないまま、彼は電話をきり、
俺と握手を交わし、笑顔で信号を渡っていった…

振り返りながら俺に軽く頭を下げながら小走りで走る彼の視界の中、

それを見送る俺の背中には


人妻ヘルスの電光板が、これでもか!といわんばかりに輝いていただろう。


あの時のギター少年。
君がこれを今読んでくれている事を願うよ。

CannonBallRush!!のJerryさんは、決して、風俗ビルから出てきたわけじゃないんだ。

そして、

Jerryさんは、

君が思う以上に、今もピュアな人だよ…。