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不都合な真実

2007-06-19 00:21:44 | 映画暮らし
ちょっと前に新宿にて鑑賞。
公開終了直前だったせいか、ほとんど貸しきり状態でした。

『不都合な真実』

ブッシュ現アメリカ合衆国大統領との大統領選挙戦に敗れた民主党の候補者、アル・ゴアが、京都議定書の成立など、自身が心血を注いできた地球温暖化問題をテーマにしたドキュメンタリー映画。
原題は"An Inconvenient Truth"、ほぼ直訳ですが、最近訳のわからない邦題がつけられてしまうことが多い中、内容を的確に言い表している良い邦題だと思います。

-----<以下、ネタバレあり>-----

ゴア氏が会場で映像などの視覚的な資料に基づいて行う講演を中心に、現在行っている活動の紹介と地球温暖化に関するデータに基づいた論証、さらにゴア氏がこの問題に目を向けるきっかけとなった事件や生い立ちが語られるといった内容。

CO2の排出量の増加による地球温暖化の問題が、統計資料や専門家の解説に加えシンプソンズ風のアニメなどで非常に明快に語られていきます。
このあたり、『ボウリング・フォー・コロンバイン』でサウスパーク風アニメが有効だったことに影響を受けているのかもしれません。

冷徹な数値により表される統計と、実際に棚氷が崩落し、猛威を振るうハリケーンの映像は衝撃的の一言。
カテゴリー4以上の規模の台風は過去30年でほぼ倍増、氷河の流出は過去10年間で倍増、感染症の拡大、動植物の生息環境の激変と、まさに今そこにある危機であることが次々と明示される過程は映像的にも見応えがあります。

息子が交通事故で生死の境をさまよったことを転機に、地球環境の問題に積極的に取り組むようになったと語るゴア氏。
個人的な問題から全体的な問題への意識を喚起されるというのは興味深いです。
さらに2000年の大統領選での敗北を、打撃だったと率直に認めた上で、さらに自身の活動に傾注していく姿は素晴らしい。
やはり政治家たるもの、野心や虚栄心が全く無いような人間ではどうにも信頼できません。

また、自身が裕福な家庭に生まれたことを認めた上で、代々のタバコ栽培農場主であったことから、家業と家族を肺ガンで亡くしたジレンマにも触れています。
結局、家業を捨てる道を選んだことから、人の意識は変えることができるという主張につながっていくものとして紹介されたエピソードかと思われますが、本作で訴えているテーマからはやや的外れにも感じました。
次回はぜひ、家族の問題を起因とした喫煙の害悪を糾弾するドキュメンタリーを製作してもらいたいものです。

唯一の減点は、終盤の盛り上がり所での長台詞で、「我々は全体主義共産主義を打ち破って新しい時代を切り開いてきたのだから、地球温暖化問題も必ず解決できるはずだ」といった主張をしていることでしょうか。
環境問題をイデオロギーと結びつける手法は古来からあるにせよ、地球温暖化問題というのはイデオロギーの対立構造とは全く異質な立脚点にある問題だと思うので、ちょっと興ざめしてしまいました。
本作で語られている内容も、そうした部分から一歩距離を置いたものだったのですが…
ラストで希望を提示しなければ話がしまらないという、映像作品における構造上の問題もあるのでいたしかたない面もあるかもしれませんが、ちょっと残念。
冒頭の美しい河川の映像に始まり、様々な事象を見せた上でラストも同じ河川の映像で締めくくったのは見事でした。

強力なテーマをもったドキュメンタリー作品を人に紹介するのは、なんとなく気恥ずかしかったりもしますが、私は本作を推薦します。
この作品を見ると温暖化問題への意識を喚起されると同時に、ゴアが超カッコよくみえてしまうというちょっと困った副産物がついてきてしまいますが、まあ彼の選挙区民ではないし、ご本人ももう大統領選に出ないと(今のところは)おっしゃってますから大目に見ておこう。
何しろ、地球に住んでいない人類はただの一人もいないわけで、ドキュメンタリー作品を鑑賞する上で重要なファクターである当事者意識を多かれ少なかれ持っているというのは大きいです。
尺も1時間半程度に丁度よくまとまっていて、内容はエンターテイメントとして捉えても純粋に面白い。
観られるべき内容を真摯に語っている作品。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (セフ)
2007-06-19 10:53:44
そのタイトル、
石原真理子の『ふぞろいな秘密』と語感が似てるな。
Unknown (toha)
2007-06-19 12:42:23
智くんって頭いいよねー!
って、本当にホエ~って感動したよ。
映画館までは行かないけど、気になってたのでDVDになったら見てみようかな…
前にテレビ見てて、ゴアちんがやたらかっこよく見えた私は、もうすでにゴアマジックにやられてるね。
An Irregularly Secret (智)
2007-06-19 23:22:01
>セフ

あ…確かに!
石原真理子のやつは書かれた相手の方がよっぽど不都合だよね。
ゴアのジョーク『不都合な真実』編 (智)
2007-06-19 23:49:46
>toha

よせやい。ほめられると照れるじゃないか。
もっとほめてくれ。

ゴアちんのアメリカンジョークは一回転して、もうね、かなり面白くなってるんですが…

「どうも。(ちょっとだけ)アメリカの"次期"大統領だったアル・ゴアです。」
(会場笑い)
「俺にとっちゃ笑い事じゃなかったんだよ!」

…DVDで丁度よいと思いますよ。