気ままに 黒松内

地域の十人十色の魅力に出会う農村の暮らし訪問ブログ

カムイチェップの旅

2006年11月10日 | 自然
みなさんはカムイチェップという言葉を知っているだろうか。アイヌ語で「神の魚」の意味である。我々の言葉にするとすなわちサケのことである。

 正式には我々がサケと呼んでいるものはシロザケがほとんどである。北海道ではこのほかにサクラマス、カラフトマスなどが漁獲されている。サクラマスやカラフトマスの方がおいしいと言われているが、やはり日本の人々に馴染みが深いのはシロザケだろう。

彼らは毎年、秋になると自分たちの生まれた川に戻ってくる。産卵のためだ。彼らはその命を振り絞り、次代へと命を繋いでいく。卵から生まれたばかりの時は2cmほどしかない彼らは春には海を目指し、長い旅に出る。遥か遠いベーリング海で育った彼らは4年後に再び生まれた川に帰ってくる。かつて彼らの両親がそうしたように。1匹の雌が産む卵は平均で2000~3000だと言われている。そのうち、無事に故郷の川へ帰ってこれるのはほんの3%程度にすぎない。彼らは川へ上る2~3ヶ月前から餌を取らない。産卵に必要なカルシウム分は自らの鱗を吸収し、エネルギーへと変える。そのため、鰭はボロボロになり体は傷だらけとなる。それでも、瀬を泳ぎ、滝を登り産卵場所を目指して進んで行く。産卵場所へ辿り着けたペアはそこで最後の力を振り絞り川底に産卵床を掘り、産卵、放精する。その後、産卵場所を守るために1週間ほどその場に留まるが、やがて力尽き流されて岸辺に打ち寄せられる。

ホッチャレと呼ばれるサケの死骸は様々な生物に恩恵をもたらす。鳥たちが、キツネが、時にはヒグマもその恩恵に預かるのである。最後には水生昆虫やバクテリアによって分解され骨もなくなってしまうが、その栄養分は川や地面に溶け込み、森の養分になっていく。海と森、一見離れているように見えるが実は色々なところで繋がっている。
サケはまさに「神の魚」カムイチェップなのだ。

<文:小野寺亮>

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