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書き割りの街




ブルージュが中世の街並を冷凍保存したように美しく、どこを撮っても絵になるようにバランスを保っているのは、建築物の「ファサード(前面)を残す」市の条例があるからだ。

市民のみなさんが一様に美意識が高く、ナショナリズムに燃えているからではない。


脇道はそれほど厳しくないと聞くが、主な通りにある建物や、歴史的建造物に指定されている個々の建物の改築修復には規制があり、ペンキを塗り替えるにも市の許可が必要だ。

わが家にも偉そうな顔をした「市の修復担当長官」が左官屋やらペンキ屋やら技師やらを従えてやって来て、あれこれ見て行ったことがあった。

いや、あれは見ていただく、といった雰囲気だった。

うちの建築士は「ついでだから全部見て頂きましょう」と言い、その大名行列は子ども部屋のぬいぐるみを踏みつけにまでして行った。

修復には補助金が出ることから、こういう手段が不可欠なのだろう。
世界中どこでもそうだと思うが、「許可」を出す立場の人って偉そうですな。権力とはすなわち許可なり。


そんな「ファサードをかたくなに残す」工事現場がこの写真だ。


まさにドリフの芝居の書き割りである。
あるいはディズニーランドの街並風、と言えばよいのか。
正面のたった一枚のレンガ積みを残して完全に崩された建物。

正面以外は完全に崩して一から建て直すのが一番費用がかからないと聞いたことがある。屋内の一部、梁や暖炉や柱を残そうとすると手間がかかるのだそうだ。
この後、クラシックに戻すもよし、内部だけ超モダンにするもよし...

ここはいったいどんな家になるのでしょう。
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