森の声

 雨粒が あちらこちらに飛んで 

 街燈にも月にも光る、綺麗な夜

 

夜の色

2011年09月21日 | Picture
絵に興味を持ち始めたころから、なぜかゴッホは苦手だった。
うねうねと厚い絵の具がこってりとしてラインも荒く、
なにより彼の黄色が発するエネルギーが襲ってくるようでとにかく疲れた。

それだから『星月夜』に感じた "静なるもの"、
この絵の青で印象が大きく揺らいだおかげで
ゴッホとはどういう人間なのか、画家の方に興味を持つことになった。

貧しい人に自分の衣類や家財を与えつくし、
みずぼらしい身なりをした若き見習い牧師の献身さは
イメージを重んじる教会に理解されることなく狂気と誤解され、
聖職者としての道を断たれてしまう。

やがて宗教画を描き始めるけれど、
強すぎる信仰は表現できず、そのもどかしさが精神を追いつめてゆく。

それで次に彼が絵の題材に選んだのは、神が創造した "自然" だった。
ところが太陽の描写やその象徴 "黄" を描くことは
極限までエネルギーを使う作業であるため精神病の発作の誘発し、
たとえば「ひまわり」を描いた後などは
絵の具を飲み干すようなひどい発作が起こったらしい。

『それでもなお、僕はやはり、信じるものがどうしても必要だと感じる。
 そんな時、僕は、夜、外に星を描きに出る。』
(弟宛の手紙から)

そのとき図書館で借りた本の題名は忘れてしまったのだけれど
ゴッホの生きた様子が切なく駆け抜けたことをよく覚えている。
(記録を残すくらい感動したらしいのに題名を残していない間抜けさ…。涙)

信仰にも人間関係にもむくわれないまま
彼が晩年にいきついたブルーは
そこにたどりつくしかなかった闇を含んだ青、
太陽でも、希望の青空でもなく
遠くの星々あるいは間接的な光、そして夜空の色だった。

ベクトルが定まらず、また、受け止められることもなかった
どうしようもなくあふれる感情は、
閉じ込めることでコントロールされたとき結晶化して
夜をサファイアのように輝かせた。
私はそれに、知らず知らずに惹かれていたのかもしれない。
(それでも硬度No.1のダイアモンドにはなれないのがまた切なくてよい。)

青といえばフェルメール、
ラピス・ブルーの幸福な色と柔らかな光が私は好きだけれども
時を経てもなお悲しい情熱が封されている作品は
やはり観る者の胸をうち、心のどこかを照らす傑作だと思う。

…今日、久しぶりに青いゴッホの絵を観たら
『星月夜』を観たときの気持ちを思い出した。

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『星月夜』ヴァン・ゴッホ

緑色の息吹

2007年04月14日 | Picture
春もまだ早い、3月末
桜よりも早く届いた便りは
グリーンのやわらかな、真新しい印刷に封を切る手が震えるほど
嬉しい、嬉しい「笹倉鉄平ちいさな絵画館」オープンのお知らせ。

ギャラリーのクローズから
ずっとずっと、待っていた花の季節
ドキドキとわくわく、うきうきの、春の便り。

 "ご来館を楽しみにしておりますので、
   うきうきして、お待ちください。"

お茶目なご夫婦に会えるのは、4月15日、プレお披露目会。
インビテーションの日付が、また嬉しさを倍増させる。
今年はなんて素敵なお誕生日プレゼントなんだろう。(泣けるー)

春特有の、滅入る気持ちが簡単に晴れていく、
この単純さは、きっと神様がくださった救いだと感謝しきり。
と、同時に、本当に本当に待っていたのだなぁと、実感する。

リニューアルされたホームページを開いて
グリーンベースのデザインに、またひとつ、深呼吸。
あぁ、好み…(TT)←る、涙腺が…

鉄平さんが独立されたとき
初めて発表された作品は「森のむこう」というタイトルだった。
神秘、迷い、力、癒しなどなど、それぞれを象徴しうる森、
そのむこう側にあるものは、希望の光、未来。

「緑色の息吹」

ちいさな絵画館、オープン最初の展示テーマは
樹木や植物の生き生きとした息遣い
それを描いた作品たちが並ぶそうだ。

鉄平さんに関わる、新たなスタートには、緑が似合う、
何もかもが萌え出る、この春の緑が、よく似合う。

明日は、彼らの息遣いを聴きに行ってきます。
久しぶりの心の高鳴り。

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正式オープンは4月22日(日)
『笹倉鉄平ちいさな絵画館』
http://www.kaigakan-teppei.net/


菊の節句

2006年09月09日 | Picture
兵庫県立芸術センターからは車で5分くらいなので
コンサート開演の前にアートテラスギャラリーに寄ってきた。

相変わらず、マイペースなおだやか店長と、
にこにこ明るく、気配りの、ママ。
閉店までもう間もないんだなぁ…。 (絵画館にリニューアルのため)

オープン当初のギャラリーのお写真を見せてもらって
お庭の木がどれだけ太くなったか、なんて話していると
そうか、ここも改装されるんだなってウルウルとしそうになったけれど
10年分のエピソードをふりかえるだけでわかる
どんなに充実した時間が、そこに流れていたか。
きっと春から、また、そんな時間が流れる場所になるんだろう。

ところで。

ママさんが出してくださった、お茶菓子。
菊の形をしているのだけど、9月9日にいただくお菓子なのだそうだ。
(二つなのは、食いしん坊だからじゃないですよっ!?(*`ε´*)ノ_彡☆)

  

『9』と言う数字は、日本では忌み嫌われているけれども
中国では奇数は縁起がよい"陽"の数とされていて
その一番大きな数の9は、おめでたい数なのだという。

その数が重なる9月9日は『重陽』といって
古くは詩を詠んだり菊花酒を飲んだりしてけがれを祓い長寿を願う
菊の節句の行事もあったらしい。

アジアでは、永遠という意味があったり
日本でも、結婚式に好まれる数字だったり
9という数字は、ラッキーナンバーでもあるようだ。

思いがけず、興味深い話もでき
さみしい気持ちも、帰る頃には薄らいできた。

それにしてもさすが、天然夫婦のトークマジック(笑)
気がついたら大笑いばかりしていた1時間と少し。

『しばらくご不自由かけるけど。
 春からはもっとゆっくりしてもらえるから~
 来てくれてほんとに嬉しかった(^^)v』

見えなくなるまで、手を振って見送ってくれるお二人に
じんわり温かいものが、胸の中に流れる。

こんな風な帰り道が好きで、ついついお顔が見たくなるのだけれど。
これからも変わらずお付き合いして行かれたらなぁ、と、思う。

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菊の節句のお菓子「着世綿」
http://www.taneya.co.jp/new/05/siga_shinbun/2.html