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愛情と敬意の最高の表現法

2005-12-06 | music : special


「Trampoline」 という、とびっきりポップな曲を今でも覚えている人もいるだろう。
90年代半ばに2枚のアルバムを出し、きらめくポップ・ワールドを届けてくれた、USメリーランド州Baltimore出身のThe Greenberry Woods。(詳しくはこちら
バンドの中心はMattとBrandtの双子のHuseman兄弟。彼らがGBWと並行して94年に結成されたのがSplitsville。
しかしGBWは、惜しくも96年にメンバー各々の音楽の方向性の違いにより自然消滅、そして解散。Huseman兄弟は、このSplitsvilleに力を注いできた。
GBWが大好きな私にとって、解散はすごく残念だったが、その後も変わらぬ可愛いキラキラ・ポップを奏で続けてくれているのが何より嬉しい。
現在メンバーは4人になっているが、元々はHuseman兄弟とGBWのローディをしていたPaul Krysiakが始めたバンドで、GBWではBだったBrandtは、SplitsvilleではDrs.に転向し、PaulがBを担当。
Splitsvilleのことはもちろん、今回取り上げるこのアルバムについてもっと早く書きたかったのだが、きちんと書くためには、とある2枚のアルバムを再度じっくり聴く必要があった。
その2枚のアルバムとは・・・、このジャケとタイトルを見ればもうおわかりだろう・・・。
2001年の作品 『Splitsville Presents ・・・ The Complete Pet Soul』。そう、彼らが敬愛して止まない、The Beach Boys 『Pet Sounds』 とThe Beatles 『Rubber Soul』 の合体である。

『Pet Sounds』 1966   『Rubber Soul』 1965

最初に念を押しておく。これは決してBeach BoysとBeatlesのコピーや真似ごとではない。アルバムは、れっきとしたSplitsvilleの音である。
これは、ふたつのグループに対する計り知れないほどの愛情と敬意を込めた、彼らの最大の表現なのである。
これほどまでに完璧に、そして遊び心も入れ、自分たちのサウンドを大切にしつつ、Beach BoysとBeatlesの要素を隠し味のように出せる曲を生み出すということ自体、ミュージシャンにとって最高の表現方法だろう。
ふたつのグループの要素を巧みに散りばめられたこのアルバムは、Beach Boysを愛する人にもBeatlesを愛する人にも存分に楽しめると思う。
私は、もちろんこのふたつのグループは好きだが、特別精通してる訳ではない。Beach Boysに至っては、「Surfin' USA」 のイメージが強すぎて、日本のチューブのような夏のバンドという先入観があって、かなり後から入ってその素晴らしさを知ったくらいだ。
そんな私にでさえ、このアルバムに込められたふたつのグループのエッセンスが手に取るように感じられ、ニヤリとしてしまうのだから、聴き込んでいる人には面白くて仕方ないだろう。
そして、彼らが 『Pet Sounds』 と 『Rubber Soul』 をタイトル・コンセプトにしたのには、Brian Wilsonが 『Rubber Soul』 を聴いてあまりにもの素晴らしさに衝撃を受け、それが 『Pet Sounds』 を作り出すきっかけとなったという有名なエピソードも含まれているというのだから、これまた憎いアイデアだ。
ちなみにその 『Pet Sounds』 が大きな影響を与えたのが、『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』 というのだから、お互いに本当にいい意味で影響し合っていたんだと思う。

M-1 「Overture」 を聴くと、今にも 「Wouldn't It Be Nice」 (『Pet Sounds』 M-1)が聴こえてきそうな気分になる。
だがしかし、ここではDrs.を逆回転させるという、『Rubber Soul』 の要素も垣間見ることができる。
間髪入れずに入るM-2 「Forever」 が聴こえてくると、そこにはもうSplitsvilleのきらめくポップ・ワールドが広がる。この音を聴くだけで、幸せになってしまう自分が居る。
M-3 「Aliceanna」 は、ファルセットで歌うアコースティック・ナンバー。Beach Boysを感じさせずにいられない。
M-4 「Pretty People」 のイントロの一瞬の短いギターの音は、「Day Tripper」 のイントロから来たのだろうか・・・。
ゆったりとした3連のリズムが心地良い、M-5 「Caroline Knows」 を聴いていると、Beatlesを聴いているような錯覚にさえ陥りそうになり、「Baby's In Black」 (『Beatles For Sale』 収録) 辺りの清涼感を感じる。しかし、エンディングのコーラスに入るとBeach Boysが出てくる。
M-6 「Sunshine Daydream」 は、もう正に 「Good Day Sunshine」 (『Revolver』 収録) のアンサー・ソングのようだ。そして、間奏のエフェクトのかかったVo.は、「Yellow Submarine」 を思い起こさせてくれる。
M-7 「Tuseday Through Saturday」 の間奏で、チェンバロのソロが入る。「In My Life」 (『Rubber Soul』 M-11) だ。途中から入ってくるオルガンの音は、「We Can Work It Out」 ばり。
M-8 「You Ought To Know」 はとっても楽しいポップ・ソングで、思わずハンド・クラッピングしたくなってくるようなリズムとタンバリンの音を聴いていると、60年代にタイム・スリップしてしまいそうになる。そして、エンディングのGの音色やベース・ラインに感じるのは、「Nowhere Man」 (『Rubber Soul』 M-4)。
M-9 「The Popular」 で響き渡るティンパニの音色は、GBW時代からの彼らの得意とるすサウンド。これはやはりBeach Boysから来ているのだろう。そして、タンバリンや鈴の音で可愛らしさを出している。
M-10 「The Love Songs of B. Douglas Wilson」 の “B. Douglas Wilson” とは、もちろんBrian Wilsonのこと。Brianへの深い愛情と敬意を込め、Splitsvilleの音で表現している。
ちなみに、歌い出しの歌詞はこうだ。

Catch a wave, it makes you feel like flying
Making records and the kids are buying
Carifornia summer sound

ピアノの音色、ベース・ラインにキーボード、鉄琴の光る音、途中のエフェクトを効かせリズム・パターンが変わるおどけたVo.、エンディングのコーラスなど、Brianの巧みなサウンドを上手く融合させている。
そのおどけた部分の歌詞が、これまたとても微笑ましい。

Now you're old, old
And all of your records are gold
You'll be who we want you to be
You have measured out like with your tunes, tunes

そして、最後の最後に “Surf's up again...” と繰り返す。何とも言えない愛情のこもった歌詞だ。
最後の曲、M-11 「I'll Never Fall In Love Again」。このタイトルは、巨匠Burt Bacharach作曲の、The Carpentersが歌っていた曲と同じ。すべてのポップ・ソングに敬愛を込めたアレンジだ。
イントロと間奏でフルートの音色が可愛く響いたかと思うと、2回目の間奏ではディストーションの効かせたギター・ソロが入り、続く多重コーラスには様々なポップ・ソングのエッセンスが伺える。
そしてエンディングのコーラスは、なんとBugglesの 「Radio Kills The Video Stars」 だ。こういう遊び心に、思わずクスッと笑ってしまう。

聴く度にいろんな発見があるし、また、Beach BoysやBeatlesを聴いた後に聴くと、面白くてたまらない。何回聴いても飽きないアルバムだ。
同じ様に、Beach BoysやBeatlesの要素を、その類稀なまでのスタジオ・ワークで表現したJellyfishまではオタクっぽくなく、親しみ易いメロディとほんわかしたムード漂う一枚に仕上がっている。
このトピを読んで、“どうせ、○○風の真似っ子” だと思った方は、大きな間違い。あくまでも、Splitsvilleのオリジナリティ溢れるポップ・センスが光る曲ばかりなのだから・・・。
今でもまだAmazonやHMVのオンラインで入手可能なので、Beach Boys、Beatlesファンの方には是非一度聴いてその面白さを実感してもらいたい。
まずは、彼らのWebサイトで全曲お試しあれ。(ブックマークからGO!)


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12 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
The Greenberry Woods (zuma)
2005-12-06 10:05:42
うーん、勉強不足ですね。すみません。「Pet Sounds」 と「Rubber Soul」は持っているんですけど..。

またまた勉強になりました!Webサイトで聴いてみますね!
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Unknown (pag)
2005-12-06 11:45:36
知りませんでした。聴きましたがなかなかいいですね!アルバム全体を聴いてみたいです。「Forever」はかなりニヤリとさせられましたし個人的にはAliceannaが気に入りましたよ。購入リストに入れます!しかし、時間がないのですよね~また聴けば忘れた頃にコメント書きますね。いいやつ教えてくれて感謝です!
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zumaさんへ (bloom)
2005-12-06 23:26:25
是非聴いてくださいね。

かなりニヤリとすると思いますよ。

そして、彼らのポップ感はきっとzumaさんも気に入ると思います。
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pagさんへ (bloom)
2005-12-06 23:31:22
お忙しい中、ありがとうございます!

いいでしょ? なんて・・・。でも、気に入ってもらえて安心しました。

「Forever」はネタの宝庫のようですよね。

忘れた頃のコメント、お待ちしています(笑)。
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トラックバック、ありがとうございます! (ルル)
2005-12-07 00:21:35
Splitsville、ブックマークから試聴させていただきました!

泣きメロ満載ですねぇ!胸がキューンと苦しくなりますねぇ!

心の鐘がリンゴンリンゴンと鳴り響きました!

それこそ、ポップという名の魔法が、このアルバムの中にあふれまくりですね!

94年当時にこのバンドの存在を知らなかったのが不思議です!

あと、「愛情と敬意の最高の表現法」というタイトルが素晴らしすぎる!と思いました!
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ルルさんへ (bloom)
2005-12-07 00:41:13
ステキなコメントありがとうございます!

早速Splitsvilleの音を聴いてもらって、彼らを知ってもらい、ファンとしても嬉しい限りです。

タイトル、ちょっと固いかな~って思ったんですが、お褒め頂きありがとうございます!

お暇な時にでも、またいらして下さい。
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一言 (pleasegotme)
2005-12-07 01:17:24
ハンパなく好きです!
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もう一言 (bloom)
2005-12-07 01:29:52
同じく!(笑)
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bloomさん!再度ゴメンナサイ! (ルル)
2005-12-07 04:05:02
エンディングのコーラスが、Bugglesの「Radio Kills The Video Stars」って、どこかで・・・。って記憶をたどったのですが!

少年ナイフやBMX BANDITSも入ってる、バート・バカラックのトリビュート集にSplitsvilleの「I'll Never Fall In Love Again」入ってますよね!!私持ってます!この曲めちゃくちゃ好きです!!

興奮しちゃってゴメンナサイ!

明日にでも「Pet Soul」買いに行きます!

この出会いを感謝してます!!
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でしたね~ (bloom)
2005-12-08 02:19:39
あっ、そうですそうです。

そのコンピ、バカラックファンの同僚に借りて聴いただけで持っていなかったので、私の方こそすっかりその存在を忘れてました。

こちらこそ、気付かせて頂きありがとうございました。

(ちょっと文章がおかしかったので訂正しました)

アルバムお聴きになったら、また感想をお待ちしています。
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