Biting Angle

アニメ・マンガ・ホビーのゆるい話題と、SFとか美術のすこしマジメな感想など。

『パプリカ』初日鑑賞

2006年11月29日 | 映画
以前の記事に書いたとおり、『パプリカ』初日に見てきました。
話題作の上に舞台挨拶もあるということで、場内は満員で立見客もちらほら。

物語の発端は、他人の夢に入り込める「DCミニ」という装置の盗難事件。
これにより人々が夢に侵入されて奇妙な行動を起こすという事件が発生し、
DCミニ開発者の一人である千葉敦子は上司の島や同僚の時田らと共に
犯人の捜査へと乗り出します。
その敦子が非合法で夢によるサイコセラピーを行う時の姿が、赤い髪をした
「パプリカ」という名の女性。
奇妙な殺人事件の夢に悩まされてパプリカの治療を受けていた刑事の粉川も
やがてDCミニを巡る事件へと巻き込まれて行きます。
島や時田、そして自身も夢に取り込まれそうになりつつ、敦子は自分の分身である
「パプリカ」として事件に立ち向かいますが、「DCミニ」を悪用した夢の暴走は
やがて妄想が現実へ侵入してくるという深刻な事態へと拡大していきます。
パプリカ、そして粉川は、いかにしてこの窮地を切り抜けるのか・・・。

あらすじだけ読むと非常に斬新な映像を期待してしまいそうですが、実際には
思ったよりも健全かつ堅実な絵なので、圧倒的な妄想観を期待して見に行くと
ちょっと肩透かしに感じるかも。
妄想のパレードもパッと見た時は目を引くんだけど、そこから先の展開がないので
映画を見てるうちに慣れちゃうんですよね。
むしろ鬼気迫るものを感じたのは、パプリカがテーブルにピン止めされてしまい、
敵役にその「外皮」を剥かれていくシーン。
ああいう妄執とエロスが入り混じった場面を撮らせると、今監督は実にうまいです。

ストーリーについては特にわかりにくいところもないのですが、一番気になったのは
粉川刑事の夢に関わる話がやたらと長いところですね。
映画との因縁が深い彼の夢にまつわるエピソードは、映画好きならばニヤリとする
いい話なのですが、一方では作品全体が彼の話に引っ張られすぎた感じも強いです。
粉川が活躍しすぎるせいで「夢探偵」であるパプリカの印象が弱められてしまい、
物語全体の印象もどこか散漫になってしまったように思います。
それならいっそ彼を主役にして、パプリカは狂言回しに徹するという形にしたほうが
もっとまとまりが良くなったかもしれません。

ヒロインの正体が事前に明かされており、事件の黒幕も早々に予想できるため
謎解きの興味が早い段階で薄れてしまうのも残念です。
敦子の時田への思いについても、説明が少なすぎてあまり共感できませんし。
映像の質は極めて高いし娯楽要素も十分ですが、これでもう一ひねりあれば
より一層楽しめる映画になったのではないかと思いました。

上映後の舞台挨拶では、今敏監督、筒井康隆氏、古谷徹氏に加え、パプリカ役の
林原めぐみ氏も登場。
林原さんはTシャツにジーンズとわざわざパプリカっぽい服装をしてきたようですが、
司会がそれに全く気づかなかったのは実にガッカリでした。
今監督は「一回見ただけではわからないと思うので、また見てください」とコメント。
筒井先生は『時かけ』については触れてくれませんでした。作品が違うから当然か。
林原さんは綾波を演じていたころ精神的に大変だった話を引き合いに出して、
「この作品に呼ばれたような気がする」と話してました。
古谷さんはキャラデザインを見て断ろうと思ったものの、子供のままの演技で
お願いしますと言われ、じゃあ「親父にもぶたれたことのないあのキャラ」で
演ってみようと引き受けたとか(笑)。

帰りには今監督の直筆サイン(今度は本物)の入ったグッズがランダムに
渡されるということで、期待して劇場を出たのですが、残念ながら私には
渡してもらえませんでした。
う~む、もの欲しそうな顔してたのを見抜かれたかな。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「傀儡廻」に関する私的考察 | トップ | 実相寺昭雄監督、逝去 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿