DALAI_KUMA

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ネス湖の謎

2013-04-09 16:05:41 | ButsuButsu


ネッシーで有名なネス湖が、イギリス最大の淡水湖であることを知る人は少ないかもしれない。

本当にネッシーという恐竜がいるかどうかは別として、この湖には、一般に知られない謎があると言われている。

そんな謎の解明に、イギリスの陸水研究者は長い間挑戦してきた。

ネス湖は、表面積が琵琶湖の10%しかないが、体積は74.5億トンで琵琶湖の25%にあたる。

湖水が完全に入れ替わる滞留時間は2.81年であり、最大水深230m、平均水深132m、長さ39km、幅1.5kmで北東から南西に延びた狭くて深い構造湖である。

構造湖というのは、地殻変動によって形成された湖のことで、琵琶湖やバイカル湖の成因と同じである。

湖面の水温は6℃から13℃の間で、冬期にも凍結することはなく水の上下循環は年1回だけ起こる。

平均水深が大きいので、湖岸は急に深くなり水草はほとんど生えていない。

ネス湖があるハイランドは、スコットランドの北部に位置しスコッチウィスキーの故郷でもある。

この地方には、良質の水とピートという泥炭があるので、ウィスキーの醸造に向いており幾つかの地方にさまざまな種類の醸造所がある。

ネス湖の集水域からもピートを含んだ河川水が流入するので、湖水は褐色に濁っている。

この褐色の水に含まれる溶存有機物の量は、琵琶湖北湖の量の2~3倍にあたるという。

貧栄養湖であるネス湖の窒素やリンは琵琶湖北湖と大差ないが、太陽光が水中の濁りによって吸収されるので植物プランクトンの光合成量が低く、クロロフィルa濃度は琵琶湖北湖の10分の1程度でしかない。

にもかかわらず、動物プランクトンの量が異常に多いのである。

このことが、長い間、謎であった。

この20年間の研究で、ネス湖の動物プランクトンは、春先には陸起源の溶存有機物やデトライタスから炭素を得ており、春の後半から増殖してくる植物プランクトンを食べるようになることがわかってきた。

さらに、植物プランクトンが足りなくなると、再び陸起源の有機物を利用するようになる。

このような陸からの有機物を分解して、水中の炭素不足を補うのに、バクテリアが大きな役割を果たしていることもわかってきている。

いわゆる微小生物生態系の発見である。

このことによって、年間を通して、ネス湖の動物プランクトンは、その体を構成する約40%の炭素を陸起源の有機物から得ていることが解明された。

そして、これらの動物プランクトンがネス湖の上位の生態系(例えば魚類)を支えていると言える。

ひょっとして実在するとしたら、ネッシーの餌の40%は、陸からの有機物に依存しているのかもしれない。

そう思うと、スコットランドの特有な地層とネス湖の深いかかわりを改めて実感するともに、過熱気味の観光客が増えないようにと思うのは、私だけだろうか。


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