ガラパゴス通信リターンズ

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文盲の国

2005-12-13 17:12:54 | Weblog
 学力低下がいわれて久しいが、学生たちは本当にものを知らない。何人もの学生がジョージ・ワシントンを知らなかった。計算もできない。1ドルが100円の時、日本で100万円する日産の車は(関税等は考慮しないで)アメリカでは何ドルで売られている?、と聞くと「私計算が苦手です。分かりません」。レイチェル・カーソンのSilent Springを「黙っているバネ」と訳した大学院生もいた。中学までは勉強がよくできた人たちがこの体たらくだ。

 中世ヨーロッパのキリスト教会は、字の読めない人たちのために絵物語を作って聖書の教えを説いていた。日本人は自国民の識字率の高さを誇るが、大学を出た人でも、三島由紀夫の小説を読みこなせる人は少ない。日本人が識字能力という時、その基準は恐ろしく低い。日本はマンガ王国だが、それは日本が実質的に文盲の国だからである。小津や黒澤をアメリカに紹介した81歳の知日家、ドナルド・リチ-は近著のなかでこう述べている。

 「あやぱん」というあだ名の女子アナが、「団塊の世代」を「だんこんの世代」といって話題になった。ニュースを読めないことを売り物にしている女子アナがもう一人、同じ局にいる。ニュース原稿が読めない人は、新聞も読めないだろう。成人に達して新聞が読めない人は通常、識字人口にカウントしない。すなわち文盲である。この女子アナは慶応を出ている。この上もなくハイレベルな大学の卒業生だ。これでは日本が「文盲の国」だと言われても仕方がない。

 先の総選挙での小泉首相の主張には論理性がまったくなかった。ところが小泉自民党に、国民は圧倒的な支持を与えたのである。小泉首相は「文盲の国」の民の知力を見抜いていたのであろう。しかし、不思議に思うことがある。日本の子どもたちは何世代にもわたって、受験戦争を勝ち抜くための世界にも稀な、「重労働」ならぬ「重勉強」を強いられてきた。その末路に生まれたのが「文盲の国」である。これは一体どうしたことなのだろうか。