ハングパワークリーンのパフォーマンスの違いは走力、ジャンプ力、方向転換能力に影響をあたえるのか?
Does Performance of Hang Power Clean Differentiate Performance of Jumping, Sprinting, and Changing of Direction?
Hori, Naruhiro; Newton, Robert U; Andrews, Warren A; Kawamori, Naoki; McGuigan, Michael R; Nosaka, Kazunori
Journal of Strength & Conditioning Research. 22(2):412-418, March 2008.
一般的にパワーはスポーツにおいて非常に重要な要素であると言われている。これは多くの文献でも紹介されている通りである。しかし、具体的にパワーを表現するものが現場レベルで使えるものが少ないのもまた、事実である。
重量挙げのクリーン&ジャークから派生したエクササイズであるハングクリーン(ハングパワークリーン)はパワーを向上させるのに有効であると言われているエクササイズである。今回の実験ではこのハングクリーンがパワーを表現し、他のスポーツパフォーマンスとどのような関係にあるのか?を測定している。
以下原文
The primary purpose of this study was to investigate whether the athlete who has high performance in hang power clean, a common weightlifting exercise, has high performances in sprinting, jumping, and changing of direction (COD). As the secondary purpose, relationships between hang power clean performance, maximum strength, power and performance of jumping, sprinting, and COD also were investigated. Twenty-nine semiprofessional Australian Rules football players (age, height, and body mass [mean +/- SD]: 21.3 +/- 2.7 years, 1.8 +/- 0.1 m, and 83.6 +/- 8.2 kg) were tested for one repetition maximum (1RM) hang power clean, 1RM front squat, power output during countermovement jump with 40-kg barbell and without external load (CMJ), height of CMJ, 20-m sprint time, and 5-5 COD time. The subjects were divided into top and bottom half groups (n = 14 for each group) based on their 1RM hang power clean score relative to body mass, then measures from all other tests were compared with one-way analyses of variance. In addition, Pearson's product moment correlations between measurements were calculated among all subjects (n = 29). The top half group possessed higher maximum strength (P <0.01), power (P < 0.01), performance of jumping (P < 0.05), and sprinting (P < 0.01). However, there was no significant difference between groups in 5-5 COD time, possibly because of important contributing factors other than strength and power. There were significant correlations between most of, but not all, combinations of performances of hang power clean, jumping, sprinting, COD, maximum strength, and power. Therefore, it seems likely there are underlying strength qualities that are common to the hang power clean, jumping, and sprinting.
以下意訳
この研究の目的は一般的なウェイトリフティングエクササイズであるハングパワークリーンにおいて高いパフォーマンスを示す選手が、走力、ジャンプ能力や、方向転換に置いて高い能力を示すのか?ということを考察する事である。また、2次的な目的として、ハングパワークリーンのパフォーマンスと、最大筋力、ジャンプ力、走力、方向転換能力の相関性についても調べた。29人のオーストラリアルールフットボール選手が被験者として選ばれ、それぞれのハングパワークリーン、フロントスクワットの1RM、40kgのバーベルと無負荷の状態でのカウンター付き垂直跳びのパワー発揮と高さ、20m走のタイム、そして、5-5方向転換テストのタイムを測定した。被験者は体重に対してのハングパワークリーンの数値により上下二つのグループに分けられ、その他のテストについて測定した。Pearsonの積率相関係数(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E9%96%A2)はすべての被験者に対して計算された。ハングパワークリーンにおいて上位だった選手はCOD以外においてすべて下位の選手よりも有意に高いスコアを示した。しかしながら方向転換のテストにおいては優位な違いは見られなかった。これはおそらく、筋力やパワー以外の要素が強く影響してきているからではないか?と思われる。ほとんどすべてのテストがハングパワークリーンとの相関関係があった。従って、ジャンプとスプリント、そしてハングパワークリーンの間に筋力に関する何らかの相関があると考えられる。
以上原文
今回の実験では29人のケースでハングパワークリーンのスコアとパフォーマンスの関係が示された。この結果が示すようにハングクリーンがあがる選手(うまい選手??)が他のパフォーマンスも高い数値を示している。この相関は多くの意味を含んでいる。まず、反動動作付きの垂直跳びのメカニズムとハングクリーンのメカニズムを比較する事が必要であると考えられる。なぜならばハングクリーンは垂直方向の反動動作だけでパワーを発揮している訳ではないからである。このメカニズムに対しての研究がより進む事が望まれる。
また、このラインの研究の一環として、ハングパワークリーンの技術の向上、パワーの向上とスプリント、ジャンプ能力の向上との相関関係を追う事が望まれる。
方向転換に関してはやはり技術的要素が多いが、その中でもパワーの向上によって、そのタイムが向上する事は想像に難くない。従って、方向転換についてメカニズムが近似している人間で再度このテストを行っても面白いかもしれない。しかしながら、方向転換のメカニズムは自身の持っている筋力(発揮)に従って変わって行くものかもしれない。その部分の研究もまた興味深いものになると思われる。
現場レベルでは、このような研究結果を踏まえて、ハングクリーンを運用してパワー向上を狙い、選手に対してそのパフォーマンスへの影響のあり方をきちんと説明できる必要があると言える。
Does Performance of Hang Power Clean Differentiate Performance of Jumping, Sprinting, and Changing of Direction?
Hori, Naruhiro; Newton, Robert U; Andrews, Warren A; Kawamori, Naoki; McGuigan, Michael R; Nosaka, Kazunori
Journal of Strength & Conditioning Research. 22(2):412-418, March 2008.
一般的にパワーはスポーツにおいて非常に重要な要素であると言われている。これは多くの文献でも紹介されている通りである。しかし、具体的にパワーを表現するものが現場レベルで使えるものが少ないのもまた、事実である。
重量挙げのクリーン&ジャークから派生したエクササイズであるハングクリーン(ハングパワークリーン)はパワーを向上させるのに有効であると言われているエクササイズである。今回の実験ではこのハングクリーンがパワーを表現し、他のスポーツパフォーマンスとどのような関係にあるのか?を測定している。
以下原文
The primary purpose of this study was to investigate whether the athlete who has high performance in hang power clean, a common weightlifting exercise, has high performances in sprinting, jumping, and changing of direction (COD). As the secondary purpose, relationships between hang power clean performance, maximum strength, power and performance of jumping, sprinting, and COD also were investigated. Twenty-nine semiprofessional Australian Rules football players (age, height, and body mass [mean +/- SD]: 21.3 +/- 2.7 years, 1.8 +/- 0.1 m, and 83.6 +/- 8.2 kg) were tested for one repetition maximum (1RM) hang power clean, 1RM front squat, power output during countermovement jump with 40-kg barbell and without external load (CMJ), height of CMJ, 20-m sprint time, and 5-5 COD time. The subjects were divided into top and bottom half groups (n = 14 for each group) based on their 1RM hang power clean score relative to body mass, then measures from all other tests were compared with one-way analyses of variance. In addition, Pearson's product moment correlations between measurements were calculated among all subjects (n = 29). The top half group possessed higher maximum strength (P <0.01), power (P < 0.01), performance of jumping (P < 0.05), and sprinting (P < 0.01). However, there was no significant difference between groups in 5-5 COD time, possibly because of important contributing factors other than strength and power. There were significant correlations between most of, but not all, combinations of performances of hang power clean, jumping, sprinting, COD, maximum strength, and power. Therefore, it seems likely there are underlying strength qualities that are common to the hang power clean, jumping, and sprinting.
以下意訳
この研究の目的は一般的なウェイトリフティングエクササイズであるハングパワークリーンにおいて高いパフォーマンスを示す選手が、走力、ジャンプ能力や、方向転換に置いて高い能力を示すのか?ということを考察する事である。また、2次的な目的として、ハングパワークリーンのパフォーマンスと、最大筋力、ジャンプ力、走力、方向転換能力の相関性についても調べた。29人のオーストラリアルールフットボール選手が被験者として選ばれ、それぞれのハングパワークリーン、フロントスクワットの1RM、40kgのバーベルと無負荷の状態でのカウンター付き垂直跳びのパワー発揮と高さ、20m走のタイム、そして、5-5方向転換テストのタイムを測定した。被験者は体重に対してのハングパワークリーンの数値により上下二つのグループに分けられ、その他のテストについて測定した。Pearsonの積率相関係数(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E9%96%A2)はすべての被験者に対して計算された。ハングパワークリーンにおいて上位だった選手はCOD以外においてすべて下位の選手よりも有意に高いスコアを示した。しかしながら方向転換のテストにおいては優位な違いは見られなかった。これはおそらく、筋力やパワー以外の要素が強く影響してきているからではないか?と思われる。ほとんどすべてのテストがハングパワークリーンとの相関関係があった。従って、ジャンプとスプリント、そしてハングパワークリーンの間に筋力に関する何らかの相関があると考えられる。
以上原文
今回の実験では29人のケースでハングパワークリーンのスコアとパフォーマンスの関係が示された。この結果が示すようにハングクリーンがあがる選手(うまい選手??)が他のパフォーマンスも高い数値を示している。この相関は多くの意味を含んでいる。まず、反動動作付きの垂直跳びのメカニズムとハングクリーンのメカニズムを比較する事が必要であると考えられる。なぜならばハングクリーンは垂直方向の反動動作だけでパワーを発揮している訳ではないからである。このメカニズムに対しての研究がより進む事が望まれる。
また、このラインの研究の一環として、ハングパワークリーンの技術の向上、パワーの向上とスプリント、ジャンプ能力の向上との相関関係を追う事が望まれる。
方向転換に関してはやはり技術的要素が多いが、その中でもパワーの向上によって、そのタイムが向上する事は想像に難くない。従って、方向転換についてメカニズムが近似している人間で再度このテストを行っても面白いかもしれない。しかしながら、方向転換のメカニズムは自身の持っている筋力(発揮)に従って変わって行くものかもしれない。その部分の研究もまた興味深いものになると思われる。
現場レベルでは、このような研究結果を踏まえて、ハングクリーンを運用してパワー向上を狙い、選手に対してそのパフォーマンスへの影響のあり方をきちんと説明できる必要があると言える。