蟷螂の独白

世に背を向けた蟷螂です。喜怒哀楽を綴って7月で18年、モットーは是々非々の団塊世代です。

『ロストケア』を観て

2024-04-09 23:55:00 | 徒然
『老後の資金がありません』の前田哲監督の2023年作の『ロストケア』を観た。
『高齢者は切腹をしろ』的な発言をした成田悠輔氏を引き合いに出すまでもなく、前田監督は団塊世代の高齢化問題を『ロストケア』では取り上げていました。
よく気のつく、出来のいい介護士を松山ケンイチが演じていますが、彼は心に問題を抱えている役を演じると、結構うまい。
その介護士が、42名の要介護者を次々に殺害していたことが明らかになり、そこからストーリーが始まります。
ほとんどの部分を松山ケンイチと検事役の長澤まさみの尋問で成り立たせています。
社会に貢献してきたけれど、今やお荷物となりつつある痴呆を病んだ高齢者を、松山ケンイチが殺害してきたことを突き止めた長澤まさみ。
超高齢者が死んでもろくに検死もせずに、『心不全』で済ませる医師。
現代社会の抱える親の介護という大問題を、手っ取り早く解決していこうとするのは、やはり疑義が生じます。
ならばいっそ、直筆公正証書遺言を遺しているものだけに、安楽死を認めるというくらいの法整備が先であり、それは映画『プラン75』は一石を投じていますが、『え、75歳って早過ぎない?』と蟷螂は思いました。
だってそんなことを言ったら、もうお不動様のお札には75歳って書いているし、来年になったら76だよ(まだ73歳だけど)。
こういう映画が配給されるのは、結局若い人たちが、高齢者を敬うという思想を捨てたからだと思います。
松山ケンイチの論理は確かによく聞くと正論めいていますが、高齢者に死の苦しみを与えるのは、よろしくありません。
ニコチンを痴呆を病んだ高齢者の体内に注射するなんて、タバコやのお姉さんだっておかしいと思うでしょう(ま、コンビニでも売っているけれど)。
それに純粋のニコチンになるまで煮込んでいたら、部屋の中に異臭が立ち込めて、一歩足を踏み入れたらその臭いに気づくはずです。
一つ余分だったのは、最後の老いらくの愛もどき。
あれは社会派スリラーという塩辛い味付けに、砂糖をぶちまけているようでいただけかなかった。
蟷螂だったら、拘置所の扉を教誨師が開けるところで終えますね。
今後は日本の検視制度がもっとシビアになることを祈っています。
なにせ親父は病院から帰ったその日に急死しても、検視すら受けなかったのですから。
硬いステンレスのストレッチャーの上で横たわっていた親父は、耳元で大声を出したら起き上がるのではないかと思えるほど普段と変わりないカーディガン姿だったのですから。

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