自分の家から気軽に行けるところに、スーパーボウルがやってきています。インディアナポリスは、自分の住む町から車で1時間程度です。「家から行けるところで、スーパーボウルだぜ!」という周りのアメリカ人のテンションの上がり具合を見ると、すごいことなのだろうなという感じがします。
ちなみに、フットボールに詳しくない方のために言うと、このイベント(ボヨンと弾むあのボールではありません)はアメリカのプロフットボールの王座決定戦で、アメリカでのテレビ視聴率は毎年40%を超え、この数字からすると日本で言うと紅白歌合戦並みの国民的イベントということが想像できるでしょうか。
試合のチケットは最低でも20万円くらいからということで、とてもじゃないですが手が出ません。しかし、開催都市でのお祭り騒ぎは試合前の1週間を通じて続き、関連イベントが多数あります。先日、丸一日しっかりと体験してきました。
面白いものはいくつかあったのですが、「NFL EXPERIENCE」というアメリカンフットボールの体験型テーマーパーク的なものが一番印象に残りました。
スタジアムの隣に、コンベンションセンターがあり、そこの1階を全面的に使用していました。大人25ドル、12歳以下20ドルの入場料がかかりますが、利益の一部は地元の子供たちへのチャリティーに寄付されます。NFLや大学フットボールの試合を見に行くと、子供向けにフットボールを投げて的当てしたりするようなちょっとした体験コーナーがあるのです。僕は、そのイメージを持って今回の会場に行ったのですが、規模がぜんぜん違いました。子供用の設備一式があるキッズゾーンはもちろんあります。しかし、そのほかに、本物と同じサイズの体験ができる設備がずらりと並んでいたのです。
大の大人も、女性も、高校生、大学生も、そして、小さい子供も、この本物と同じサイズの体験に喜びいっぱいの表情を見せていたのです。実際に一つの設備で遊べるのは1分足らずですが、それまでの長い待ち時間を苦にしている様子はまったくありません。
例えば、本物のゴールポストって、間近で見るとかなり大きいのです。そして、このゴールポストに向かって、20ヤード、30ヤード、40ヤードのフィールドゴール(ボールを蹴ること)にチャレンジできます。見ていると、ほとんどの人はボールを蹴り上げられなかったり、とんでもない方向に蹴ってしまいます。
その時、体験した人は思うはずです。「プロの選手たちって、本当にすごいんだな」と。
実際の試合では、さらにボールを止めようと相手選手が猛然と突っ込んできます。
他にも、40ヤード走(選手のダッシュ力を見る)のタイムが計れたり、機械が飛ばすボールを走って行ってキャッチする設備(選手の練習メニュー)などもありました。装飾的なものは少なくシンプルです。これがミニチュアだったりしたら、「お遊び」という気持ちがどうしてもぬぐえません。タックルなど危険なことは取り除かれていますが、本物とほぼ同じ内容だからこそ、みんな「選手と同じことを体験できた」という満足感を味わえるのです。それが、このイベントが観客をひきつける理由なのだと思います。今回でちょうど20回目だそうです。
選手と同じ体験ができることの他にも、本物はそこかしこにありました。
優勝チームに与えられるトロフィーの展示、優勝記念の指輪の展示、ドラフト会議のステージ(指名された選手になった気分でユニホームを持って記念撮影できる)、公式試合球をつくっている職人さんたち(工程を目の前で見られて、質問にも答えてくれる)など。小さいフィールドで子供向けのフラッグフット(タックルの代わりに、腰にリボンをつけて、それをとる)教室も開かれていて、そこでは現役プロ選手の投げるパスをキャッチすることもできます。
こうした数々の本物を体験できた人が、さらにファンとしてのめり込まない訳がありません。
見ているうちに、僕の頭の中に一つの言葉が浮かんできました。
「本物には力がある」
芸術の世界で、使われているのを耳にしたことがあります。
アメリカで人気ナンバーワンの座を守り続けているプロスポーツの取り組み、強さの源はこういうところにあるのだなと深く感じさせられました。