空の守護神「AIR RESCUEに命を懸ける男たち」のドキュメント

福島県の守護神「福島県消防防災航空隊」の活動記録を主に紹介しています。

ふくちゃんへの思い

2012-02-29 23:44:22 | 消防防災航空隊


昨日、待望のふくちゃんが名古屋を飛び立ち故郷福島に帰って来た。

誰よりも待ちわびていたのは他ならぬ隊員さん達に違いない。

私達支援会のメンバーよりもその思いは深い。

時として生死を分ける過酷な現場へ駆け付け懸命の救助活動が展開される。

私達はその現場に遭遇し、必死の救助活動を直視する機会はまずない。

仮に遭遇したとしても非常に稀で貴重な場面に遭遇したと言っても過言ではない筈。

全国の消防防災航空隊(市消防局も含む)は常に愛機とその修羅場に駆け付け、「救える命を救う」のだ。

彼らに失敗という言葉は許されない。完璧にミッションを終えて基地に帰投する事が当たり前。

失敗(事故)を犯せばマスコミが好き勝手に非難し、彼らの誇りまでも汚し書き下ろす。

私はかつて悲しくも起きてしまった防災ヘリの事故をやるせない気持ちで受け止めて来た。

事故が起きれば誰かが責任を取っておしまい?
そんな事は絶対許せない”筆の暴力”と感じている。

全国の消防防災航空隊クルーの目指すものは生きて帰投する事に尽きる。それが当たり前であり何も無い・・・それが常識なのだから。

日本の四季はめまぐるしく変わり、同じ場所での救助事案でも条件が異なり、夏では問題無くても冬では悪条件と様相が異なる事も勿論想像がつくだろう。

でも彼ら消防防災航空隊は飛び立って行く。救助を求める要救助者がいる限り・・・・

私は地元福島県の福島防災を長年写真を撮影しながら見守って来た。

時代は移り替り、クルーの顔ぶれが替ろうともふくちゃんだけはそのまま変わらずそこに居る。

愛おしいふくちゃん。

10数年を超えての長い付き合いだが現役のクルーがふくちゃんへ抱く思いは私とて適わない。

昨日、ふくちゃんが帰って来た時に見せてくれたクルー全員の笑顔は私にとって無機質なヘリと血の通った人間との不思議で普遍的な絆を感じた。

相棒が帰ってきた喜びに顔の筋肉も緩みっぱなしだったけど私にはその気持ちが良く分かる。

きっと今日からはクルー全員、臨戦態勢の引き締まった面持ちに変身している事だろう。

この時期、既に来年度入隊予定の3名が教育訓練に入っている時期だ。

また新しい福島防災がスタートする。

そして、親しくなったクルーが任期を終えてそれぞれの地元消防本部へと帰って行く日も近い。

センターの一角には歴代OBがそれぞれの思いを込めて植樹した桜の幼木が年を重ねるごとに1本、2本と増え続け今春も花を咲かせる事だろう。

その桜を観る度に往年のクルー達の笑顔とカッコイイ勇姿を思い出すのだ。

御帰りなさいふくちゃん!福島の空の守護神が帰って来ました(おまけ)

2012-02-28 23:33:14 | ヘリ


ふくちゃんをお迎えにセンターに向かう途中、空港エプロンに駐機する報道ヘリを発見!
念のため確認に向かうとTBSのS-76C/JA6693と日本テレビのBELL430/JA01AXが並んで駐機していました。

間も無くS-76Cが西へ向かって離陸して行きました。
ふくちゃんを待つ間もこの2機が入れ替わり立ち替わり離着陸姿を目撃。

飛来した目的は夕方のニュースを観て分かりました。
政府が福島第一原発を中心に30km圏内飛行禁止区域に指定していたのを3km圏内に緩和した事を受け、報道ヘリの取材も可能になったのでしょう?
夕方のニュースではこれら2機が撮影したと思われる映像が映し出されていました。

未だなにも手がつけられていない浪江、大熊、双葉など津波が押し寄せた当時の惨状を今なお残す双葉地区。
この映像を観た避難者の方々ん心中を察すれば同じ福島県民として胸が張り裂けそうだ。

歩みのトロイ政府。
そしてもう投げやり意識見え見えの東京電力。
改めてこれらに対する憤りは言葉にならず、人間本来の道徳心さえ疑うしかないのか?
同じ目的かどうかは定かでないが東邦航空のAS365N1/JA9693も頻繁に飛び回っていました。

御帰りなさいふくちゃん!福島の空の守護神が帰って来ました⑧

2012-02-28 23:17:59 | 消防防災航空隊


ふくちゃんが戻ってから、クルーの皆さんは運航再開に向けて必死で準備を進めて行きます。
気が付けば既に陽は西に傾き茜色に染まり掛けていました。

思い起こせば間も無く東日本大震災から1年を迎えようとしています。
あの日、あの時、福島防災のクルーとふくちゃんは悪夢を空から直視し必死に救助活動を行いました。
他県の仲間も多数駆けつけましたが、忌まわしき福島原発爆破の報に接するや否や多くの防災ヘリは蜘蛛の子を散らすように去って行ったのです。
中には果敢にもふくちゃんと共に長きに渡り留まり活動してくれた航空隊もいました。

あの原発事故直後、あれ程居た各県の防災ヘリが居なくなってしまった・・・
私はその現実を空港の丘からただ見守るしかなく悔しく虚しく思った事を今でも覚えています。

それでもふくちゃんは飛び続けました。
他県の防災ヘリが何もしなかったと言っているのではなく、それぞれの県の規定、規則を遵守した結果と理解し避難する気持ちは全くありません。
しかし、当時県、援受県の防災航空隊として頑張ったふくちゃんがささやかなグレードアップを身に纏い帰って来てくれた事が何よりもお嬉しくて溜まりません。

先の画像で気付かれたかも知れません。
KAZ副隊長のヘルメットに少し大きくなって貼られた福島県公認の「がんばろう!ふくしま」のステッカー。
ふくちゃんにも大きくなったそのステッカーが貼られました。
名古屋へ旅立つ前は控えめに横長で小さいステッカーでしたが今度は遠くからも見える事でしょう。

多くの福島県民がこのメッセージを観て少しでも元気が出てくれれば福島防災のクルー皆も励みになる事でしょう。

心から、「ふくちゃん御帰りなさい。」

御帰りなさいふくちゃん!福島の空の守護神が帰って来ました⑦

2012-02-28 22:57:35 | 消防防災航空隊


続いて行われるのが実際にヘリをホバリングさせ、ホイストを伸ばし、隊員さんと要救助者を吊り上げた時に近い疑似の負荷物を吊つ試験を行います。
いきなり隊員さんをん吊り上げる事は大丈夫と分かっていても先ずは代わるもので試す訳です。

これらの試験でホイストに問題が無い事が確認できればようやくミッションに向けての準備が大まか整ったと言えるのかもしれませんね。

御帰りなさいふくちゃん!福島の空の守護神が帰って来ました⑥

2012-02-28 22:51:03 | 消防防災航空隊


格納庫に戻り、本来のレスキュー仕様に戻ったふくちゃん。
運航再開に向けて様々な装備の確認事項が待っています。
その中でも重要な装備がホイスト装置のチェックがあります。
これは山岳救助等でホイストを使用し、センターに帰投した際必ず行われる光景です。

一度救助で使用したホイストのワイヤーは風邪の影響で吊り上げた隊員さんや要救助者を左右に回転させようとします。
吊り上げ中の隊員さんを観察した方なら分かると思いますが左右どちらかに回転を始めると隊員さんは左右の腕を水平に伸ばします。
この動作はワイヤーの回転を抑止する効果があるそうです。

しかし、多少なりとも”よじれ”が生じ、次回使用時にその捩れや傷の有無によって最悪はウィヤーが切れてしまう事も想定されます。
従って、この様にクルー全員で一旦ホイストのワイヤーを最長まで伸ばし、点検しながら巻き戻すのです。