鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

この三年間を振り返ると5

2007-09-30 09:20:06 | WOC2006
WOC2004とWOC2005について振り返ってきましたが、WOC2006については様々な意味でそれまでの2大会とは違い、私にとっては大変苦しい大会でした。ディフェンディングチャンピオンとして迎えた大会であったにもかかわらず、大会前に極度の不振に陥っていたため、予選13ラウンドを迎えるのが怖くて仕方がなかったのです。予選1日目と2日目の前夜は、ほとんど眠ることができませんでした。私の場合、睡眠不足の状態では良い手が打てないので、予選を通過できないのではないか!と真剣に考えてしまったことを覚えています。

そんな中、予選2日目朝にベン・シーリー氏と対戦することになりました。序盤からベンの研究にはまってしまい、ずっと劣勢が続いたのですが、37手目まで進行して以下の盤面を迎えたのでした。WOC2006で最も印象に残っている局面です。

/ A B C D E F G H
1++○+◆+++
2○+○●+●++
3○○●●●●++
4○●○●●●○+
5+●●○○●○○
6●●●●○●○+
7++●●●○++
8++●●●+○+
次、白番(38手目)

この局面でベンは白D1→黒E2を予想し、黒の勝ちを確信していたようです。私も最初にD1が浮かんだのですが、白D1→黒E2→白B2→黒A1→白A5→黒B1と進行した後、白に良い手が無いと判断したので、38手目D1を却下しました。

次に思いついたのがF1でした。右側に大きな白壁をつくるので打ち辛い手ではありましたが、この手に決めた最大の理由は「予想外の手を打つことで、ベンの意表を突くこと」でした。37手目の時点でベンの持ち時間が4分程度しか残っていなかったこともあり、予想外の手を見て動揺してくれたら勝機ありと考えました。

勝負手F1
/ A B C D E F G H
1++○+●◇++
2○+○●+○++
3○○●●●○++
4○●○●●○○+
5+●●○○○○○
6●●●●○○○+
7++●●●○++
8++●●●+○+
次、黒番(39手目)

その結果、39手目H3(12石損の敗着)が出たので、私の勝勢に変わりました。実は、38手目の正解は私が却下したD1で、引分け手順があったようですが、残念ながら、その進行をノーミスで打ち切る自信はありません。私が選択したF1は4石損で一時的に白4石負けの形勢に陥ったようですが、相手のミスを誘ったという意味で私はBest moveであったと考えています。

この三年間を振り返ると4

2007-09-27 00:18:33 | WOC2005
以前ブログで取り上げたように、WOC2005で最も印象に残っている局面を選ぶとすると、Lee選手(韓国)との決勝第1試合・49手目の局面となります。中盤までずっとLee選手にリードされていましたが、相手のミス(42手目)を誘って互角の形勢まで持ってきた試合でした。

この局面で私(黒番)はF8にするかA8にするか迷ったため、長考しました。その結果、A8の隅を取ることに決めたのですが、A8に決めた理由は、白が50手目をA7に打った場合、黒には好手B2があることに気付いたからでした。

1図
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2●+○●●●●+
3+●○○○●●●
4+●●○○○○●
5●●○○○○●●
6●●○●●○○●
7+○○○○○◇●
8+○++++●●
次、黒番(49手目)

1図の左辺の形の場合、黒がA8の隅を取った後、白がうかつにA7に割り込んだとすると、黒がB2に打ってホワイトラインを通しにすることで、左辺を守ることができるのです。

49手目A8,50手目A7,51手目B2の後、盤面は2図となります。2図で白がA3に当てたとするなら、B2の黒石が白に変わってしまうため、白がA3に当てる手が悪手となっています。

この手筋(黒A8→白A7→黒B2)は以前Zebraを使って終盤研究を行なったときに、Zebraから教えてもらった手筋でした。この手筋を避けるためには、白はA7に割り込む前に、A3に当てておく必要があるのです。おそらく、白のLee選手はこの手筋の経験が無かったため、黒の好手B2を見落として、A7に打ってしまったのだと推測します。

2図
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2●◆●●●●●+
3+●●○○●●●
4+●●●●○○●
5●●○●●○●●
6●○●●●●○●
7○○○○○○●●
8●○++++●●
次、白番(52手目)

この三年間を振り返ると3

2007-09-25 23:37:42 | WOC2005
2005年のWOCレイキャビック大会までに、私はkurnik、Yahoo Japan、Yahoo USAで約2000試合の練習試合を行いました。その上、ほぼ毎日、HappyEnd、Icareを使って、終盤のトレーニングに取り組みました。これも打倒ベン・シーリーに燃えていたから出来たのでした。

その成果はWOCレイキャビック大会で如実に現れました。予選・決勝トーナメント18戦の結果、16勝1敗1分けで優勝しましたし、予選2ラウンドでベン・シーリー氏に勝つことが出来ました。何よりもうれしかったのは、終盤の平均石損が著しく改善されていたことでした。井端君の「数字で見るオセロ」からデータを引用させてもらいますと、WOC2004とWC2005では私の終盤力が著しく改善されたことがよく分かります。

        終盤20手平均石損 黒番の終盤20手平均石損
WOC2004     9.85石         11.00石 
WOC2005     5.11石          3.40石

アンドレアス・ヘーネ戦で悪夢の逆転負けを喫した通り、WC2004では黒番の終盤が弱点になっていましたが、WOC2005では逆に強みに変わっていることが分かります。あくまで私の考えですが、白番の終盤は偶数理論に基づいて打っていけば何とかなる場合もあるので終盤力の差が現れにくい傾向がありますが、黒番では終盤力の差が顕著に現れると思います。(続く)

この三年間を振り返ると2

2007-09-24 08:56:07 | WOC2005
2004年のWOCロンドン大会での私の経験をまとめると下記三点となります。
①ベン・シーリー氏の強さに驚愕し、彼に勝つことが目標になった。
②自分の弱点は終盤力であることが明らかになった。
③Sagiriさんのアドバイスにより、私のオセロ練習方法が劇的に改善された。

②終盤の弱さについては、予選12ラウンドのアンドレアス・ヘーネ(ドイツ)戦での終盤にも現れました。この試合を落としたことにより、私は予選落ちしたのでした。実はロンドンから帰国した後も、この局面が何度も夢に出てきて苦しめられたのでした。

/ A B C D E F G H
1+++●●○++
2++●●○○++
3+●●○●●○●
4●●○○○●○●
5+○○●○○●●
6++○○●○○●
7++○○○○◇●
8+++●●●●●
次、黒番(43手目)

42手目まで黒優勢の局面です。今の私がこの盤面に遭遇したならこう考えます。確かに左下と右上では偶数理論からは逃れられません。しかし、左上に黒から打てない偶数空き(6個)があるので、左下と右上で白に手止まりを打たれても、左上は白から手を付けることになるので、確定石の差で黒が勝つはずである。(正解はA5で黒+14) しかし、当時の私は偶数理論から逃れられないことに動揺してしまい、悪手を連発して逆転負けを喫しました。

2004年11月末にロンドンから帰国した後、すぐに量販店に行って最新のPC(東芝製dynabook)を購入した後、Sagiriさんから教わった通りにYahooBBに加入しました。そして、Icare, HappyEnd,Zebra等のオセロソフトを次々とダウンロードしましたし、連日、ネットでオセロを数十局打つようになったのでした。

この三年間を振り返ると1

2007-09-23 12:01:00 | WOC2005
先週の王座戦で9位に終わったため、今年は日本代表として世界選手権に出場できなくなりました。つまり、WOC三連覇の可能性が無くなったわけですが、私なりに区切りをつけるという意味で、過去三年間を振り返ってみることにしました。

1997~2001年までの5年間は、ほとんど公式戦に出場していませんでした。2002年に6年ぶりに全日本選手権にチャレンジしたものの、予選0勝2敗で惨敗しました。翌年2003年の全日本では予選2勝1敗で、またしても予選落ちに終わりました。そして、2004年の全日本では三度目の正直で優勝したので、世界選手権への切符を手にしました。この当時はネットでオセロを打つこともほとんど無く、Zebraを使って序盤、終盤を研究することもありませんでした。(今から考えると、この状態でよく勝てたと思います。)

2004年にWOCロンドン大会に出場し、結果は5位に終わりましたが、この大会に参加したことにより、もう一度世界チャンピオンになりたいという強い思いを持つようになりました。5位に終わったことは大変悔しかったのですが、それよりも、ベン・シーリー氏の強さに強い衝撃を受けました。私は予選でベンと対戦しましたが、一度も優勢になることなく一方的な展開で負けました。決勝でもベンは末国九段相手に全く危なげない試合運びで二連勝しました。私の中では来年こそはベン・シーリー氏に勝てる実力をつけて、ベンの三連覇を阻止したいという強い思いが沸いてきたのでした。(続く)

王座戦

2007-09-17 08:04:32 | 王座戦
ご存知かとは思いますが、王座戦は中島八段が優勝しました。昨年に続いて二年連続で世界選手権に出場する中島君には、今年こそは世界チャンピオンになってもらいたいと思っています。中島君の棋力と経験は申し分ないところですが、さらに、ラストチャンスで日本代表の座を射止めた勝負強さが加わったので、今年はかなり期待できそうですね。

私は5勝2敗で9位(おそらく)に終わりましたが、ベストを尽くした結果なので満足しています。今年はネットで世界選手権を観戦することになりましたので、過去三年間とは違った形で、世界選手権を楽しみたいと思っています。

来週は王座戦

2007-09-09 11:59:06 | 王座戦
台風の影響で7月の全日本選手権に出場できませんでしたが、あっと言う間に2ヶ月がすぎて、いよいよ来週は王座戦です。私は来週金曜日に鹿児島出張を予定していますので、大型台風が九州に上陸しないことをひたすら祈っております。とにかくスタートラインに立ちたいですね。

昨年の世界選手権以来約一年ぶりの水戸ですので、アートタワーの隣で生息している巨大バッタと再会できるのも楽しみです。また、世界選手権の会場だったテラス・ザ・ガーデン水戸にも行ってみたいと思っています。