携帯電話を持っていない。
と告白すると、以前は「林君らしいね」なんて笑ってくれたのだが、最近は普通には信じてくれない。「家にいるか、お店にいるかのどちらかなので、そんなに無理しなくてもつかまるんです。まあ、それ以外の時は外で食事していたり、移動している時なので、電話なんて出たくないし…」と説明すると、やっと理解はしてくれるが、でも「なんかこいつ変わっている奴だなあ」という表情は変わらない。
営業職で外を歩くのが仕事という人や、大工さんやイベント業の人のように現場が職場の人には携帯電話は必要なんだろうなとは想像できる。でも、それ以外の職種の人がそんなに必要なものなのかなあ、といつも疑問に思っている。
「絶対に持たないぞ」と決めているわけではない。1ヶ月に一度くらい、「ああ、こんな時に携帯電話があればなあ」なんて思うのだけれど、結局携帯電話を手に入れようと動かないのは、たぶん私が電話が嫌いなのだろう。
あまり知らない人に、仕事で電話をしなければいけない時がたまにある。そういう時は何かと後回しにして、出来るだけ「知らない人に電話をする」ことから逃げよう逃げようとしてしまう。
友人たちに言わせると、そういう電話から逃げる態度って、「まだ大人になれていない証拠」なのだそうだ。普通、まずこの「知らない人に電話をする」という状況に慣れることが社会人の「第一歩」らしい。特に営業や編集なんかの仕事をしている人達は、考える前にダイヤル出来ているくらいじゃないと仕事にならないそうだ(もう、「ダイヤル」とは表現しないのかも…)。
なるほど。
でも、友人に電話をする時も、相手が今、「電話を受けられる状況なのかどうか」なんて色々と考えてしまって、どうしても躊躇してしまう時がある。
そういうことを友人たちに話すと、「あのねえ、現代社会では、あなたに電話番号を教えている、ということは、よほど朝早いとか深夜とかでなければ、『いつ電話しても良いよ、出られない時はこちらも出ないから』と契約を交わしたのと同じ事なんだって」、と教えられた。
そんなもんなんだろうか。
BAR BOSSAに電話をかけたことがある人はご存知かもしれないが、私の電話の応対は、とても感じが悪い。「まあ、バーなんだから『お電話ありがとうございます!こちらバール・ボッサでございます!』なんて明るく言うのも変だ」、と自分に言い訳して、いつまでたってもボソボソとわかりにくい声で、お店の電話に出てしまう。たぶん、私の電話の応対だけで「このお店、行くのやめよう」と思った人もたくさんいるはずだ。
ご存知のように、BAR BOSSAは場所がとてもわかりづらい。一度来てしまえばそんなにわかりにくくはないのだが、「まあ、たぶんあの辺だろうなあ」なんて気持ちで来れば、まず辿り着けない。
私がこのBAR BOSSAの物件の地図を不動産屋さんにもらって、自分ではじめて来た時も、かなり迷ってやっと辿り着けたくらいだから、夜で、さらに酔っているお客様なんて、絶対に辿り着けないはずだと思う。
さて、これまたご存知のように、週末の11時頃のBAR BOSSAは、かなりテンテコマイで、バーの作業をこなしている。そんな時に「あのー、場所がわからないんですが…」という電話がかかってくる。まあ、まず一回では辿り着けない。何度も電話をくれて、結局辿り着けなかった人や、「もう少し上手く説明できる人に代わってくれる?」なんて怒られたこともある。で、そんな電話対応をしている時に、お店で座って飲んでいるお客様が「注文しようかなあ、どうしようかなあ、でも、お店の人、何だか忙しそうだから帰ろう」なんて考えているわけだ。
こういうBAR BOSSAの場所をたずねてくる電話で一番困るのが、相手が携帯電話を切ってくれない時だ。電話を片手に「あ、はいはい、富士そばが見えてきました。はい、真っ直ぐ歩いています。暗くなってきましたけどこのまま歩いていって良いんですか?」なんて感じで中継しながら歩く人だ。こればっかりは携帯電話がもたらした「悪の部分だ」、といつも感じてしまう。
さて、何故今回、電話の話題をしたかというと、電話が原因で一つ謝らなければならないことがあったからだ。
その電話がかかってきた時も、確か週末の11時頃で、その時は妻もいなく、私が一人でテンテコマイでお店をまわしていた。
「はい、BAR BOSSAです」
「あ、もしもし、ちょっとお伺いしたいことがあるんですけど…」
「はい、どうぞ」
「あのー、そちらは車椅子のお客は行っても大丈夫なんでしょうか?」
もう、向こうのテーブルからは「お会計」のサインが飛んできているし、作らなきゃいけないチーズのお皿と、注がなきゃいけないワインもある。そして、そこに新しいお客さんがやって来た。今は満席だけど、あの「お会計」のお客さんのテーブルが空くので「ちょっとだけお待ち下さい」と伝えなきゃいけない。
車椅子のお客さん?大体、うちのお店の入り口はとんでもない段差があるし、もしトイレっていうことになれば、それまたすごい段差があるし、カウンターしか空いてない場合は付き添いの人が座らせてくれるんだろうか?、その間、こんな狭いお店のどこに車椅子を置いとけば良いのだろうか?、なんて考えていると、入り口のお客様が「満席ですか?」なんて言って帰ろうとしている。テーブルのお客様は終電の時間が近いのか、あせって「お会計」サインを出している。そうこうしているうちに、私はこう答えてしまった。
「ごめんなさい…。ちょっとうちは…」
彼女はすごく残念そうに「そうですか」と答えて電話を切った。
たぶん、彼女は、インターネットか雑誌でBAR BOSSAの存在を知り、「素敵そうだなあ。今度渋谷に行ったついでにここでお酒が飲みたいなあ」なんて考えて、そして色々と悩んで、おもいきって勇気を出してダイヤルしたはずだ。悩んで悩んで、そして勇気を出してダイヤルする気持ちは、私が一番理解できる。
このブログをまさか彼女は読んでいないとは思うが、もし読んでいたら謝りたい。そして、バーがヒマそうな曜日、時間帯にもう一度電話をかけ直してくれるか、あるいはメールで問い合わせをしなおして欲しい。その時は、ちゃんとどう答えれば良いか私は何度もシュミレーションをした。
「はい、BAR BOSSAです」
「あ、もしもし、ちょっとお伺いしたいことがあるんですけど…」
「はい、どうぞ」
「あのー、そちらは車椅子のお客は行っても大丈夫なんでしょうか?」
「ええと、実は当店は、入る時も段差があり、トイレにも大きな段差があります。お店も小さくて車椅子で移動できるような広さではありません。そんな状況でも大丈夫なんでしょうか?僕は身近に車椅子の人がいないので上手く想像が出来ません。それでも、あなたがいらっしゃってくれるというのでしたら、『いつでもWELCOME』というお店の気持ちの用意は出来ています。この電話でも、後からメールででも結構ですので、こちらがどういう準備をすれば良いのかを教えて下さい。今日はお電話、本当にありがとうございました」
と告白すると、以前は「林君らしいね」なんて笑ってくれたのだが、最近は普通には信じてくれない。「家にいるか、お店にいるかのどちらかなので、そんなに無理しなくてもつかまるんです。まあ、それ以外の時は外で食事していたり、移動している時なので、電話なんて出たくないし…」と説明すると、やっと理解はしてくれるが、でも「なんかこいつ変わっている奴だなあ」という表情は変わらない。
営業職で外を歩くのが仕事という人や、大工さんやイベント業の人のように現場が職場の人には携帯電話は必要なんだろうなとは想像できる。でも、それ以外の職種の人がそんなに必要なものなのかなあ、といつも疑問に思っている。
「絶対に持たないぞ」と決めているわけではない。1ヶ月に一度くらい、「ああ、こんな時に携帯電話があればなあ」なんて思うのだけれど、結局携帯電話を手に入れようと動かないのは、たぶん私が電話が嫌いなのだろう。
あまり知らない人に、仕事で電話をしなければいけない時がたまにある。そういう時は何かと後回しにして、出来るだけ「知らない人に電話をする」ことから逃げよう逃げようとしてしまう。
友人たちに言わせると、そういう電話から逃げる態度って、「まだ大人になれていない証拠」なのだそうだ。普通、まずこの「知らない人に電話をする」という状況に慣れることが社会人の「第一歩」らしい。特に営業や編集なんかの仕事をしている人達は、考える前にダイヤル出来ているくらいじゃないと仕事にならないそうだ(もう、「ダイヤル」とは表現しないのかも…)。
なるほど。
でも、友人に電話をする時も、相手が今、「電話を受けられる状況なのかどうか」なんて色々と考えてしまって、どうしても躊躇してしまう時がある。
そういうことを友人たちに話すと、「あのねえ、現代社会では、あなたに電話番号を教えている、ということは、よほど朝早いとか深夜とかでなければ、『いつ電話しても良いよ、出られない時はこちらも出ないから』と契約を交わしたのと同じ事なんだって」、と教えられた。
そんなもんなんだろうか。
BAR BOSSAに電話をかけたことがある人はご存知かもしれないが、私の電話の応対は、とても感じが悪い。「まあ、バーなんだから『お電話ありがとうございます!こちらバール・ボッサでございます!』なんて明るく言うのも変だ」、と自分に言い訳して、いつまでたってもボソボソとわかりにくい声で、お店の電話に出てしまう。たぶん、私の電話の応対だけで「このお店、行くのやめよう」と思った人もたくさんいるはずだ。
ご存知のように、BAR BOSSAは場所がとてもわかりづらい。一度来てしまえばそんなにわかりにくくはないのだが、「まあ、たぶんあの辺だろうなあ」なんて気持ちで来れば、まず辿り着けない。
私がこのBAR BOSSAの物件の地図を不動産屋さんにもらって、自分ではじめて来た時も、かなり迷ってやっと辿り着けたくらいだから、夜で、さらに酔っているお客様なんて、絶対に辿り着けないはずだと思う。
さて、これまたご存知のように、週末の11時頃のBAR BOSSAは、かなりテンテコマイで、バーの作業をこなしている。そんな時に「あのー、場所がわからないんですが…」という電話がかかってくる。まあ、まず一回では辿り着けない。何度も電話をくれて、結局辿り着けなかった人や、「もう少し上手く説明できる人に代わってくれる?」なんて怒られたこともある。で、そんな電話対応をしている時に、お店で座って飲んでいるお客様が「注文しようかなあ、どうしようかなあ、でも、お店の人、何だか忙しそうだから帰ろう」なんて考えているわけだ。
こういうBAR BOSSAの場所をたずねてくる電話で一番困るのが、相手が携帯電話を切ってくれない時だ。電話を片手に「あ、はいはい、富士そばが見えてきました。はい、真っ直ぐ歩いています。暗くなってきましたけどこのまま歩いていって良いんですか?」なんて感じで中継しながら歩く人だ。こればっかりは携帯電話がもたらした「悪の部分だ」、といつも感じてしまう。
さて、何故今回、電話の話題をしたかというと、電話が原因で一つ謝らなければならないことがあったからだ。
その電話がかかってきた時も、確か週末の11時頃で、その時は妻もいなく、私が一人でテンテコマイでお店をまわしていた。
「はい、BAR BOSSAです」
「あ、もしもし、ちょっとお伺いしたいことがあるんですけど…」
「はい、どうぞ」
「あのー、そちらは車椅子のお客は行っても大丈夫なんでしょうか?」
もう、向こうのテーブルからは「お会計」のサインが飛んできているし、作らなきゃいけないチーズのお皿と、注がなきゃいけないワインもある。そして、そこに新しいお客さんがやって来た。今は満席だけど、あの「お会計」のお客さんのテーブルが空くので「ちょっとだけお待ち下さい」と伝えなきゃいけない。
車椅子のお客さん?大体、うちのお店の入り口はとんでもない段差があるし、もしトイレっていうことになれば、それまたすごい段差があるし、カウンターしか空いてない場合は付き添いの人が座らせてくれるんだろうか?、その間、こんな狭いお店のどこに車椅子を置いとけば良いのだろうか?、なんて考えていると、入り口のお客様が「満席ですか?」なんて言って帰ろうとしている。テーブルのお客様は終電の時間が近いのか、あせって「お会計」サインを出している。そうこうしているうちに、私はこう答えてしまった。
「ごめんなさい…。ちょっとうちは…」
彼女はすごく残念そうに「そうですか」と答えて電話を切った。
たぶん、彼女は、インターネットか雑誌でBAR BOSSAの存在を知り、「素敵そうだなあ。今度渋谷に行ったついでにここでお酒が飲みたいなあ」なんて考えて、そして色々と悩んで、おもいきって勇気を出してダイヤルしたはずだ。悩んで悩んで、そして勇気を出してダイヤルする気持ちは、私が一番理解できる。
このブログをまさか彼女は読んでいないとは思うが、もし読んでいたら謝りたい。そして、バーがヒマそうな曜日、時間帯にもう一度電話をかけ直してくれるか、あるいはメールで問い合わせをしなおして欲しい。その時は、ちゃんとどう答えれば良いか私は何度もシュミレーションをした。
「はい、BAR BOSSAです」
「あ、もしもし、ちょっとお伺いしたいことがあるんですけど…」
「はい、どうぞ」
「あのー、そちらは車椅子のお客は行っても大丈夫なんでしょうか?」
「ええと、実は当店は、入る時も段差があり、トイレにも大きな段差があります。お店も小さくて車椅子で移動できるような広さではありません。そんな状況でも大丈夫なんでしょうか?僕は身近に車椅子の人がいないので上手く想像が出来ません。それでも、あなたがいらっしゃってくれるというのでしたら、『いつでもWELCOME』というお店の気持ちの用意は出来ています。この電話でも、後からメールででも結構ですので、こちらがどういう準備をすれば良いのかを教えて下さい。今日はお電話、本当にありがとうございました」
なんか、今回の話しは人事で無さ過ぎで
思わず返信してしまいました。
私も,典型的なお客さま商売をしていながら
電話が苦手です。携帯も仕方ない時しか
もちませんし、かける事くらいしか出来ません。
毎日のように予約の電話を受けますが
それでも電話はあまり好きになれません。
うちはほとんどのお客様に説明しなければ
見つからないところにありまして、
迷って不機嫌になる方も多いです。
その上、外観にまでかけるお金が無く
さらに悪印象の上塗りをしてます。
マイナス60点からの宿とよく
知人に笑いながらいいます。
段差もたっぷりで、車椅子のかたに
申し訳無くて泣きたいくらいです。
でも全面バリアフリーにする気は
全くないのですが・・
でもなんとかひーこら、商売しております。
すみません、なんにもおとしどころの無い
コメントで・・
あまりに人事でなかったもので。
来週上京できそうなので、実現しましたら
お店に寄せて下さい。
このお答えでいいと思いますよ。次はきっとうまく言えますよ!
部署が変わったら、内線と外線の呼び出し音が入れ替わっていたんですが、それ以外にも大事な書類を作っている最中に取った電話が他人宛だったりすると、電話が邪魔者に感じます。
サラリーマン的な提案としては、お店がクローズしている時に使われている留守電のメッセージを変えて、主に手が離せない時に使う、なんていうのはどうでしょうか?
はい、バールボッサです。申し訳ないのですが、ただいまチーズとワイン選びのために手が離せません。お手数ですが、後ほど、もう一度お電話いただくか、ホームページ宛にメールをいただけると助かります。
ピーーーー。
慌ただしい感じです。
わたしは電話は基本的に嫌いです。
顔が見えない相手だと掴みづらい部分があったりして
いろいろ考えてしまいます。
すらすらと電話出来る人がうらやましいといつも
心に思うのはわたしだけ?
なんてよく思いますよ。
何故か、全員、男性ですね。
やっぱり男性の方が上手く話せないのでしょうか…
みともさん、ご理解いただきありがとうございます。
みんなで「サービス業の哀しみ」という本でも出しますか?
五合さん、お坊さん(あ、言っちゃった…)に、こうやって言っていただけると、何故かほっとしますね。
MOJITOさん、本当にそういう風にしたいなあ、と思う時がよくあります。「場所がわからない方は『1』を、今、席が空いているかどうかの確認の方は『2』を、それ以外の方は30分後におかけ直しください」って感じです。まあ、「バイト雇えよ」と言われちゃいそうですが…
marrさん、すいません、いつもバタバタしています。
何度もバイトを雇おうと考えたのですが、今ひとつ踏み切れなくて…。電話、上手くなりたいですね。
地元によく行く大好きなカフェ(Espressoといいます。)があるのですが、その店には電話がありません。また、携帯電話禁止のマークが貼ってあります(携帯電話の絵の上に駐車禁止のマークのようなもの)。
お話好きのマスターなので、話や接客の途中に電話で遮られるのが嫌いなのです。なので、客の私たちも、電話が来たら外に出て受けます。
これって、すごく自然なことで、この空間を大切にすればこそだと思うので、こういうことを含めて大好きな場所です。
是非いつか機会がありましたら、お連れしたいところです。
うらやましいお店ですね。
本気でうちも電話なしにしたいくらいです。
でも、「空席確認」の電話だけは受け付けたいんですよね。わざわざ遠くから来て、満席だと申し訳ないので。
でもいつも思いますが、山形って文化度が高いですね。