イヤなワールドカップの季節が近づいてきた。
こんな事を書くと、非国民だと言われそうだが、正直な話、早く日本に負けて欲しい。お願いだから、予選なんか通過しないで欲しい。
飲食店を経営している人は、もちろん理由はご存知だと思う。
そう、ワールドカップの日本戦の日は、とにかくお客さんが来ない。オリンピックや大きい事件の日もお客さんはテレビに持っていかれてしまうが、やっぱりサッカーの時の影響が一番大きい。
前回のワールドカップの時なんて、本当にひどかった。BAR BOSSAの場合、捨てる食材はあまりないし、人も雇っていないから損害はそんなにひどくはなかったが、大きいお店でナマモノの食材をたくさんあつかっているところなんかは、「いやー、ワールドカップの期間だけお店休んでいた方がましだったね」なんて声を良く聞いた。
前々回の時に、結構痛い目にあって、前回のワールドカップからテレビを設置する居酒屋さんや、バーが増えた。「あー、悩んだ末の選択だったんだろうなあ」って感じのお店も時々見かける。
そんなにみんな、サッカーのことが好きだったんだ、と驚く。
そして、今回の盛り上がりはちょっと異常すぎるのでは、とも思う。
たまたま今、
あの戦争になぜ負けたのか(この本、すごく面白い)を読み終わったところだからかもしれないが、こんな状況ってとても恐い。こういう意見をなんとなく言いづらい雰囲気もちょっと変だ。
こんなことを考えていると、小学生の時の「カバ」のことを思い出した。
確か、小学校3、4年生くらいの頃だったと思う。
工作の授業で、楽焼があった。
先生が「今回の楽焼は何を作ってもいいです。みなさん自由に想像力を使って、自分だけの焼き物を作って下さい」というようなことを始めに告げた。
私は色々と悩んだ末、「カバ」を作ることに決めた。私は正直、手先はあまり器用ではないのだが、カバの形を思い浮かべ、「カバのポイントは口とか歯のように見せかけておいて、実は耳と鼻だよな…」とかなんとか、あれこれ考えながら、土をこねくり回していた。
授業の時間も進み、ふっと周囲に目を移すと、私の近くの生徒はなぜかみんな「お茶碗」を作っていた。「あ、なるほどな、お茶碗が流行ってんだ。まあ後で使えるものとかが良かったのかも…」とか思いながら、私は「カバ」の制作に戻った。
休憩時間が来て、友人達の作品の途中経過を見に行くと、なぜかこれまた、みんな「お茶碗」を作っていた。不安になって、クラス中のみんなの作品をチェックすると、予想通り、なぜか全員が「お茶碗」を作っていた。
私は「何か間違っていたのかも」と不安になり、先生のところに走り、こう訊ねた。「先生、自由に何を作っても良いんですよね?」
先生はちょっと寂しそうに「そうだよ。自由に何を作ってもいいよ」と言ってくれた。
色づけされ、焼きあがった作品がずらりと並ぶ。40個のお茶碗が並んでいる中に一つだけ私のちょっと不恰好な「カバ」がいた。別に目立とうと思ったわけでもないんだけど、別に意地張っていたわけでもないんだけど…
「先生、自由に何を作っても良いんですよね?」