優さんの連載、part2です♪
http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/navigator/23
以下、転載。
「いのちの林檎」
天然住宅のメンバーといっしょに、『いのちの林檎』というドキュメンタリーを観てきました。
無農薬で除草せずに作るリンゴ、「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんが出てきます。
しかし木村さんは脇役で、中心はCS(化学物質過敏症)患者の母娘です。
娘の早苗さんはとても素敵な女性です。
発作で苦しんでも、発作が治まるとすぐに笑顔に戻って「臭いに気づく前に体が反応してしまうから困っちゃう」と言います。
普通の家に住むことができなくて、放浪しながら山奥の掘立小屋に住まなければならないのに、こうして暮らせるのが幸せと言うのです。
早苗さんは電磁波にも反応します。
上空を飛行機が飛ぶだけでも反応します。
彼女はあるとき、ついにすべての飲食物に反応して、水すら飲めなくなりました。
母は必死で安全なものを探し、木村さんのリンゴに行きつきました。
早苗さんは4日ぶりに水分を身体の中に入れ、作ってくれた木村さんに深く感謝するのです。
彼女たちは木村さんに会ったことがありません。だけど強くつながっているのです。
リンゴを通して。
栗駒木材の「エコラの森」
ぼくらは彼女の住める住宅を建ててあげたくなりました。
天然住宅なら一切接着剤もベニヤも使っていないので、住めるかもしれません。
しかし彼女が暮らすには、農薬も飛んで来ない山奥でなければなりません。
ぼくらが思ったのは「エコラの森」でした。
「エコラの森」は、ぼくらの仕事のパートナーである宮城県の栗駒木材が持っている260ヘクタールの山です。
もともとリゾート業者が買ったのですが開発に失敗し、債権者に木を盗伐され荒れてしまった山です。
その後、山が産業廃棄物業者に買われそうになりました。
そうなったらふもとの温泉も排水で汚染されてしまう…と、いたたまれずに栗駒木材が買いました。
栗駒木材だって豊かではないのに、手入れをしています。
そのぶん、赤字になります。
だから「天然住宅バンク」というNPOバンクをつくって、金利ゼロの融資で支えたいと、計画を進めています。
山には一切除草剤を使いません。
アスファルトも敷きません。
木材が発がん性のあるタールや添加物を吸収して、汚染されるのがイヤだからです。
しかも栗駒木材には防菌槽がありません。
マツは切るとすぐにカビが生えるため、普通は有毒な防菌槽【1】にすぐ漬けます。
でも安全な木材にならないから使いません。
さらに、早苗さんは重度のCS患者ですから、住んでもらうには天然素材というだけでは条件を満たしません。
CSの患者さんは、人によって反応する臭いや材質がさまざまなので、素材を一つひとつ本人に確認してもらわないと建てられません。
CSにならないために
早苗さんは飲食物に反応しますが、CSの予防は「オーガニックな食品を」ではないのです。
CSになってからはたくさんの化学物質に反応してしまいますが、発症する直接の原因はほとんどの場合「空気」なのです。
多くの人が、シックハウスと呼ばれるような室内の化学物質のせいで発病しています。
なぜなら体内に取り入れる空気は、重さベースで飲食物の5.5倍もあるからです。
CSになってからでは大変です。
一度、反応しやすい身体になると、微量の化学物質にも反応するようになります。
今までは何ともなかったものにも、どんどん敏感になってしまいます。
前回紹介したIさんは、それでもずっと改善したから町に住んでいられるのです。
ぼくらはこれ以上、CSの被害者を増やしたくないのです。
そのためには住宅がシックハウスであってはいけない。
一日も早くすべての住宅メーカーが自然素材を使い、有害化学物質を使わないようになってほしい。
住宅が人を傷つけたら本末転倒ですから。
私たちが非営利事業なのはそのためです。
営利なら技術を隠さなければなりませんが、非営利だから外に伝えられます。
みんなの力で、早苗さんのようなCSの方が安心して暮らせる場所を作れたらいいと思います。
彼女は私たちの作りあげた社会の犠牲者なのですから。
注釈
【1】防菌槽
もとも木材の防菌・防かびには、クロム、ヒ素や銅などが使われてきましたが、健康被害の問題から制限され、工業用クレオソートなどに変えられました。
けれども、これも人体には有害です。
http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/navigator/23
以下、転載。
「いのちの林檎」
天然住宅のメンバーといっしょに、『いのちの林檎』というドキュメンタリーを観てきました。
無農薬で除草せずに作るリンゴ、「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんが出てきます。
しかし木村さんは脇役で、中心はCS(化学物質過敏症)患者の母娘です。
娘の早苗さんはとても素敵な女性です。
発作で苦しんでも、発作が治まるとすぐに笑顔に戻って「臭いに気づく前に体が反応してしまうから困っちゃう」と言います。
普通の家に住むことができなくて、放浪しながら山奥の掘立小屋に住まなければならないのに、こうして暮らせるのが幸せと言うのです。
早苗さんは電磁波にも反応します。
上空を飛行機が飛ぶだけでも反応します。
彼女はあるとき、ついにすべての飲食物に反応して、水すら飲めなくなりました。
母は必死で安全なものを探し、木村さんのリンゴに行きつきました。
早苗さんは4日ぶりに水分を身体の中に入れ、作ってくれた木村さんに深く感謝するのです。
彼女たちは木村さんに会ったことがありません。だけど強くつながっているのです。
リンゴを通して。
栗駒木材の「エコラの森」
ぼくらは彼女の住める住宅を建ててあげたくなりました。
天然住宅なら一切接着剤もベニヤも使っていないので、住めるかもしれません。
しかし彼女が暮らすには、農薬も飛んで来ない山奥でなければなりません。
ぼくらが思ったのは「エコラの森」でした。
「エコラの森」は、ぼくらの仕事のパートナーである宮城県の栗駒木材が持っている260ヘクタールの山です。
もともとリゾート業者が買ったのですが開発に失敗し、債権者に木を盗伐され荒れてしまった山です。
その後、山が産業廃棄物業者に買われそうになりました。
そうなったらふもとの温泉も排水で汚染されてしまう…と、いたたまれずに栗駒木材が買いました。
栗駒木材だって豊かではないのに、手入れをしています。
そのぶん、赤字になります。
だから「天然住宅バンク」というNPOバンクをつくって、金利ゼロの融資で支えたいと、計画を進めています。
山には一切除草剤を使いません。
アスファルトも敷きません。
木材が発がん性のあるタールや添加物を吸収して、汚染されるのがイヤだからです。
しかも栗駒木材には防菌槽がありません。
マツは切るとすぐにカビが生えるため、普通は有毒な防菌槽【1】にすぐ漬けます。
でも安全な木材にならないから使いません。
さらに、早苗さんは重度のCS患者ですから、住んでもらうには天然素材というだけでは条件を満たしません。
CSの患者さんは、人によって反応する臭いや材質がさまざまなので、素材を一つひとつ本人に確認してもらわないと建てられません。
CSにならないために
早苗さんは飲食物に反応しますが、CSの予防は「オーガニックな食品を」ではないのです。
CSになってからはたくさんの化学物質に反応してしまいますが、発症する直接の原因はほとんどの場合「空気」なのです。
多くの人が、シックハウスと呼ばれるような室内の化学物質のせいで発病しています。
なぜなら体内に取り入れる空気は、重さベースで飲食物の5.5倍もあるからです。
CSになってからでは大変です。
一度、反応しやすい身体になると、微量の化学物質にも反応するようになります。
今までは何ともなかったものにも、どんどん敏感になってしまいます。
前回紹介したIさんは、それでもずっと改善したから町に住んでいられるのです。
ぼくらはこれ以上、CSの被害者を増やしたくないのです。
そのためには住宅がシックハウスであってはいけない。
一日も早くすべての住宅メーカーが自然素材を使い、有害化学物質を使わないようになってほしい。
住宅が人を傷つけたら本末転倒ですから。
私たちが非営利事業なのはそのためです。
営利なら技術を隠さなければなりませんが、非営利だから外に伝えられます。
みんなの力で、早苗さんのようなCSの方が安心して暮らせる場所を作れたらいいと思います。
彼女は私たちの作りあげた社会の犠牲者なのですから。
注釈
【1】防菌槽
もとも木材の防菌・防かびには、クロム、ヒ素や銅などが使われてきましたが、健康被害の問題から制限され、工業用クレオソートなどに変えられました。
けれども、これも人体には有害です。