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スイスのマイナス金利

2011-08-16 13:16:16 | 国際
 JBPress がつたえるFinancial Times の記事によれば、スイスの国立銀行は大幅な資金供給の拡大を実施し、スイスフランの金利を「マイナス」に転じた。(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/18954)

 つまりスイスの銀行にお金を預けるときは、「お金を取られる」ことになるのである。これはロンドン銀行間取引金利(LIBOR)市場でのことだが、あまり前例のないことではある。

 このようになった背景には、EUとアメリカにおける混乱がある。一方ではソブリン債をめぐる混乱、他方では議会と大統領の衝突によるデフォルト危機。

 どちらも回避されたとはいえ、今後どうなるか予断は許されないということから、ユーロとドルから回避した資金がスイスフランに殺到し、空前のスイスフラン高が発生した。

 これに対する国内の圧力の高まりに対して、SNB(スイス国立銀行 http://www.snb.ch/)は市場の意表を突いた今回の措置になったというわけである。

 為替の介入は今回は過去の実績に鑑みて効果なしと判断して実施しなかった。

 これで事態が収束するか否かについては関係者の間でも意見が様々のようである。

 例えばこの結果銀行が預金者にマイナス金利を課すようになるかもしれない(一般預金者が金利を取られるかもしれないということになる)という意見がある。そのようなケースに関連して、「高度な知識がある投資家でさえ、多くの人が銀行口座に現金を預けておくことは無意味だと考えるようになった場合、銀行取り付け騒ぎが起きる可能性はないかと尋ねている」という(UBSのビート・ジーゲンターラー氏)。

 確かにお金を預けたら金利を取られるというのでは、引き出した方がよいと考える人が出てくるだろう。

 また「スイス当局は、現在の為替変動を制御する唯一の方法は外国からの大口預金にマイナス金利を導入することだという事実に気づいていないようだ」(香港のCLSAのアナリスト、クリストファー・ウッド氏)との見解もある。

 さらに今回のスイスフラン高騰の原因は、「銀行口座ではなく、世界のデリバティブ市場の資金の流れだと見られるのだ。このため、当局の命令で銀行口座にマイナス金利を課しても、間接的な手法を通じてLIBORを引き下げるほどには効果がないかもしれない」という問題がある。

 となれば結局は世界経済を破たんの淵に追いやったリーマンショックの後始末がここにまで及んでいるということに他ならない。

 そうなると世界金融、あるいは国際的な投機の拠点の一つでもあるスイスにとっては、自業自得、という側面もあるかもしれない。

 いずれにせよこのような異常な措置が取られるほど世界経済には異常な部分があるということだ。

 日本円の高騰も同じ文脈で生じているとみられるが、国際的にあふれかえっている金融デリバティブ商品にどう決着をつけるか、それができなければ世界経済の先行き不透明感は強くなってくるだろう。


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