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核実験後の北朝鮮 / ロイターのコラムより

2016-01-07 18:34:16 | 軍事
「[6日 ロイター] - すでにいつものパターンが表れている。北朝鮮がミサイルやロケット実験を行い、成功を大仰に宣言すると、すぐさま他国はその真偽を疑う。

北朝鮮は今回、水爆実験に成功したと発表したが、他国の専門家は同国の主張に懐疑的な見方をしている。メディアはテレビのニュースを心配そうに見る韓国人の写真を掲載し(彼らはそれほど心配していないのだが)、国連安全保障理事会のメンバーは会合を開き、数週間後には非難決議と追加制裁を採択する。

北朝鮮による4度目の核実験の影響はいかなるものか。

核実験を行うたびに国際社会の怒りは買うが、北朝鮮はエリートクラブでの地位を確たるものにしている。弾道ミサイルや核兵器の開発技術能力を有する国は非常に限られているからだ。

北朝鮮の国民、とりわけ平壌市民はこのことを当然誇りに思っている。2013年の核実験後には、多くの会社が早めに終業し、たくさんの食べ物と酒で成功を祝った。金正恩第1書記が8日に誕生日を迎えることもあり、今回も市内は祝賀ムードに包まれている。米国という超大国を追い払うには核の抑止力が必要だとする政府の考えを、国民の大半は受け入れている。

その一方で北朝鮮は、昨年いくつかの大きな試練や失敗に見舞われたものの、経済の発展に向け努力を続けている。そのことが、若き指導者が人心をつかみ、同国ブランドの中心的存在であるのに一役買っている。

核開発は父親の故金正日総書記の遺産だが、正恩氏は軍事力だけでなく、経済成長や人々の生活向上を掲げて権力の座に就いた。後者の目覚ましい成果と前者の遺産という相乗効果は、正恩氏のイメージアップに著しく貢献している。

国際的には、周辺国からいくつか反応がみられるだろう。

第一に、厳密には周辺国ではないが、米国では財務省が北朝鮮に対する制裁圧力を強めることが予想される。実際に米議会はこの1年で、人権問題に関連した3つの制裁法案に取り組んでいる。今回の実験でより厳しい法案が可決される可能性が高まるかもしれない。

また今年は大統領選があることから、候補者たちにとっては、これまでの政権を批判したり、信じられないような解決策を提示したりして、北朝鮮に対して強気な発言をするチャンスでもある。現在の傾向で言えば、共和党候補指名争いをリードするドナルド・トランプ氏が何かばかげた発言をして、他の候補者たちがそれに対して反応することが考えられる。

世界的に最も差し迫った危機とみられている過激派組織「イスラム国」とともに、北朝鮮は今回実験を行ったことで外交政策の主要課題であり続ける。これは同国自身も従来望んでいることだ。

第二に、中国は北朝鮮の核開発を快く思っていないが、同盟国として米国には同調しないとみられる。今後数週間、具体的な国連の制裁対象をめぐって米中で集中した協議が行われるだろう。安保理決議には両国とも直ちに賛成するだろうが、2013年の決議以上の手段に訴える可能性は低い。ロシアは中国に追随し、日本は米国に従うとみられる。

一方、韓国の政財界はこの1年、北朝鮮経済に再び関与することに強い関心を示してきた。2010年に韓国軍の哨戒艦沈没事件が発生後、韓国は北朝鮮に制裁を科し、そのような経済関係はほぼ不可能となっている。過去5年間で中国の影響力を高めすぎてしまったと、今さらながら心配し始めた感が否めない。

今回の核実験が行われるまでは、韓国主要企業によるコンソーシアムが政府の後押しを受けて、ロシアと北朝鮮を結ぶ鉄道と港湾の建設プロジェクトに投資する可能性があった。だが今となっては、朴政権内の保守派が北朝鮮の核実験で勢いづき、そのような計画は不可能だろう。北朝鮮で韓国とロシアが協力することに、米国も喜びはしないだろう。

結局のところ、細かいことは別として、今回の核実験で現状が変わることはほとんどないに等しい。正恩氏の自国での地位は盤石となり、中国は同盟国である北朝鮮に、韓国は自身の影響力の欠如に不満を抱き続けるだろう。米国の選択肢は限られているが、同国の対応は最も予測不可能だ。独自による制裁を少しだけ拡大するのか、それともかつてないほど広範囲なものとするのだろうか。

断固たる対応が北朝鮮への懲罰的な影響を高めることになるかは、また別の問題だ。従来のパターン通りなら、恐らくそうはなるまい。

*筆者は豪マッコーリー大学の名誉フェロー。」

http://jp.reuters.com/article/column-north-korea-nuclear-test-idJPKBN0UL0R920160107


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