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石ころ

吉野山

 
吉野山に今年も登った。妹と二人で体力のもつ所まで、毎年春の桜と秋の紅葉を見に行く。いっぱいおしゃべりをしながら登る。芥子菜の漬け物で巻いたおむすびと、私たちの年代ではお弁当に欠かしてはならない卵焼き。なにしろ気まぐれに今から行こうということで、急遽決まるからお弁当は超簡単なものを私が準備するならわし。

 今年はタイミングと天候に恵まれて山は幻想的に美しかった。とてもとてもカメラには収まらない。花曇りに山桜は可憐な花を付け、またははらはら、はらはらと一面に降りしきる花吹雪が、夢かうつつかと思うばかり。花とも葉とも定かでない、はんなりと淡いパステルカラーが山一面に広がっていて、今日は曇った空と一体のしっとりとした美しさ。下り坂一面に散り敷いた花絨毯の上を歩いていると、自分の体もふわふわと夢の中を漂っているような感覚にとらわれる。


 しかし、登り坂を「ああ、しんど」「疲れたなぁ」なんて言いながら歩いていると、山から下ってきた女性に呼び止められた。「私は○県から働きにきています。此処の空気は体にすごくいいのです。疲れたなんて言わないで感謝しなさい。そしたら健康になれます。」と叱られて唖然とする。なんとか「はい、はい」と切り抜けて、妹と「人に感謝を押しつけるか!だいたい、体に良いからと口先で感謝、感謝と言うなんてそんなの感謝じゃないなあ。」「あれはきっと○○教やで。」なんてひとしきり、彼女曰く体に悪い言葉を好き勝手にしゃべりながら歩く。でも、ちょっとおもしろかった、此処にもいろんな人がいるんだ。

 どんなに美しい所でも人は大なり小なりぶち壊し、どんなにすばらしい交わりでも完全なんてあり得ない。妹にお抹茶を点ててもらってほっと疲れを癒した後、お付き合いに熱心でない私はわがままだよと忠告された。
神はひとり子をたもうほどに世を愛された・・・私さえも。

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