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《読書》吉川潮『戦後落語史』新潮新書(その2)

2010-05-18 05:37:00 | 読書
●〔7〕吉川潮『戦後落語史』新潮新書 2009(2010.01.11読了)〈2009132〉
(承前)

○金原亭伯楽
 落語協会では金原亭馬治が十一代目金原亭馬生を襲名、披露興行が九月下席から始まった。襲名の話は先代の十七回忌の前に未亡人から持ち出されたという。順当なら一番弟子の伯楽に話が行くところだが、彼には実力、人気、人望がなかったので馬治が指名されたと言っていい。(p.166)
 金原亭伯楽が『小説・落語協団騒動記』本阿弥書店(2004)で立川談誌のことを悪く書いたので意趣返しでしょうか。

○林家兄弟
 私は〈週刊文春〉の『正蔵襲名は時期尚早』という記事に、襲名に関して批判的なコメントを出した。一連のイベントが分不相応なばか騒ぎに思えたからだ。ただ、襲名後の正蔵は定期的に独演会を開いてネタを増やしている。平成二十年に三平を襲名したいっ平の、眼を覆いたくなるほど下手な落語と比べると、兄貴のほうがずっと良い。(p.187)


○落語ブーム
 夏あたりから落語ブームが出版業界に波及していった。落語関連の新刊が増えると同時に、ちくま文庫、河出文庫で安藤鶴夫や正岡容らの旧著が次々刊行された。新刊の中には「こんな奴が書いた本、誰が読むのか」と思われる駄作もあったが、枯れ木も山のにぎわいで、数が出揃うことも必要なのだろう。(p.189)


○襲名のモラルハザード(2)
 六月二十六日、落語協会総会で鈴々舎馬風が会長に就任することが決まった。円歌は最高顧問に退く。新会長の最初の仕事は、協会挙げて亡き小さんの長男、三語楼の六代目小さん襲名披露興行を成功させることだった。前年決定した際、「花緑のほうがいい」という声もあったが、兄弟子の小三治が発表記者会見で、「倅だから継ぐんじゃない。今柳家の中で誰が継ぐか考えたら三語楼だった。気が付いたらいつの間にか大木になっていた」とコメントしたことで関係者各位が納得したと言われる。
 前述の通り、私は平成四年に小益が文楽を、写楽が可楽を継いだ時に「襲名のモラルハザード」が起きたと思っているので、もう誰がどんな大名跡を継いでも驚かない。円朝でも、志ん生でも、円生でも、志ん朝でも誰かが継げばいい。(p.192)
 本当に納得したのかな。

※画像は二代目林家三平(林家いっ平)