あざみ野荘つれづれgooブログ

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NHKスペシャル「高倉健が出会った中国」を見て(驕る必要もないし、卑屈になる必要もない)

2005-11-21 10:46:20 | 映画・ドラマ
 前の記事のブログのコメント欄で、daruさんが紹介してくれた健さん出演のNHKスペシャル「高倉健が出会った中国」(11月19日 PM9:00)を見た。
 
 番組の冒頭で、健さんの「・・・毎日の撮影の生活の中で、あまりにも感動が多いので時々バランスが取れなくなる」とのコメントが紹介されているように、チャン・イーモウ監督が切望して実現した映画「単騎、千里を走る。」の撮影の様子や映画のストーリーの紹介をしながら、健さんと映画に出演した中国の人々との撮影を通しての心のふれあいが紹介されていました。(プロの役者は健さんのみで、中国人の出演者はすべて現地の普通の人々です。)番組では主に、健さんのガイド役の(実生活でも現地で観光ガイドをしている)中国人青年チュウ・リン(役名も同じ)との交流や、仮面劇の役者役のリ・カミン(役名も同じ)の息子を思って泣く演技に心を打たれる健さんの様子などが、彼(リ・カミン)が実生活で抱えている問題などを交えながら紹介されていました。
 チャン・イーモウ監督は、三国志の逸話をベースにしたというこの映画で、「まごころ、思いやり、絆の大切さを訴えたい」と説明していました。中国経済の急速な発展によって失われていく、まごころや思いやりの大切さを映画を見た人々の心の中に永遠に残したいと。

 この、番組を見て改めて感じたのは、中国での健さんの人気と知名度の高さです。健さんのことを「私のアイドル」というイーモウ監督ばかりでなく、撮影に使われた山岳地帯の石鼓村という村のみやげもの屋の女性が、健さんの顔を見て、「あれっ どこかでお会いしたような・・」と言って健さんの映画を子どもの時に見たと言って喜んだり、ダムの底に沈んでしまうというその村の村長が「この村がダムに沈んでも、数百年後にこの映画を見たひとはきっと気づいてくれるはずです。石鼓村はそこにたしかにあったのだ。そして、あの高倉健さんも石鼓村に来たのだと思い出してほしいのです」と彼の名前を挙げて自分達の村のことを讃えたのです。最初の方に出てくる雲南省の古都麗江の中年の夫婦が、健さんのことを「私たちの世代のアイドル」と言って、健さんの映画が「当時の中国人に強烈な印象を与えた」と語っていたことや、イーモウ監督が「高倉健は、かっこいいという言葉の代名詞だった」とも語っているのを見ると、健さん演じる主人公の何がそれほどまでに中国のひとびとの心を揺さぶったのかに興味を覚えます。それは、高倉健さん演じる主人公によって体現されている日本的な感性の何かに彼らが共鳴して感動を覚えているからこその反応だと思います。
 番組中で私が印象的だった映画撮影中のひとつのエピソードに、イーモウ監督や映画のスタッフたちが、「(中国人ではない)健さん演じる日本人の主人公ならどういった行動を取るか」ということについて熱心にミーティングをしている場面があります。最終的に日本人らしい行動や考え方を現すのに最もいいだろうという意見が採用されて、その場面が新しく撮影されることになりました。

 そして番組の最後では、ガイド役の青年の「今後大切なのは、お互いの長所を認め合う事です。自分達の短所を反省することも必要だと思う。そうすれば、中国と日本はもっと近づけるのではないかと信じている」という言葉が紹介されています。

 イーモウ監督は前作「ラヴァーズ」では金城武を起用しています。この映画が成功しているかどうかは別にして、私がこの映画で感じたのは、彼は金城武が体現している純粋に中国的でも台湾的でも日本的でもない不思議な魅力を使って映画を取りたかったという感じを受けました。そして監督の日本的なものへの関心を感じていました。

 そして、先に紹介したチュウ・リンの冷静で落ち着いたコメントは、人間と人間の生のふれあいの中から生まれた誠実で知的なコメントだと思いました。そして、それを引き出したのは、健さんの優しさと誠実さにあふれた慎み深い人間性、現代の私たちからは失われつつある日本人のよさだと思います。中国での健さんの愛され方を見ていると、彼らは健さん演じる主人公に、人間の理想像のひとつの型を見ているのではないかとさえ思われます。

 
 ところで、この映画の撮影が行われた、雲南省の古都麗江の瓦屋根の連なる美しい町並みや、石鼓村の古い町並みの風情のある趣などを映した映像はとても美しく、その点でも映画への興味をそそられました。ずっと以前に見た中国映画「芙蓉鎮」(文革に翻弄される女主人公を描いた傑作)の中で、主人公と反革命分子のレッテルを貼られた秦という男が、罰として課せられている早朝の町の清掃をしている場面の、朝靄に煙る町の石畳の坂道の映像がとても美しかったのを思い出しました。(映画を見たことのない方のために少しだけ付け加えると、この映画を紹介するのに一番有名なセリフは、秦が主人公に言う「生きぬけ。ブタになっても生きぬけ。生きぬけ。牛馬になっても生きぬけ」です。文革の熾烈さを感じさせる言葉でしたし、文革の現実を知るには恰好の教材となるかもしれないような映画だと思います。)
 
 
 話を元に戻しますが、この番組で紹介された中国のひとびとと健さんの交流を見ていると、「驕る必要もないし、卑屈になる必要もない」という感想が浮かびました。



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4 コメント

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観そびれたのですが・・・ (daru)
2005-11-22 13:52:54
こんにちは。

昨夜Nスペの再放送がありましたので

たった今、観終ったところです。

ハイビジョンの方は、これから観てみます。

(高倉健 千里を走る)

これは健さんとチャンイーモウの親交を綴る

ドキュメントのようです。

私も、中国での健さんの人気ぶりに驚きました。

そして、改めて映画や一俳優の持つ影響力の大きさを感じました。

それにしても、あの素人さんたちの演技力

(演技ではないということなのでしょうが)

は凄いですね。

「人が人を思う力」、健さんの言葉が

とても心に響きました。

1人でも多くの人に見て欲しかったドキュメンタリーですね。

こういうの作れるのは、やっぱりNHKしかないと思うんですけどねえ。

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コメントありがとうございます (azami)
2005-11-23 00:23:12
放送されてすぐに再放送があったということは、そこそこ反響があったのではないでしょうか。

健さんの中国での幅広い人気や、イーモウ監督の熱い入れ込み方を見て、色々思うことはありますが、「この映画の撮影そのものが『単騎、千里を走る』だった」と監督が言っていたように、健さんが千里を走ったこと自体に意味があったのだと思いました。

私は、中国の地方の古い町や村の佇まいにも心引かれるものを感じます。



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そうなんです、引かれるんです (daru)
2005-11-23 18:02:00
こんにちは。

TBありがとうございました。

1つ削除は了解しました。



私も、中国の景色に引かれます。

azamiさんのように詳しくないのですが

中国映画が私も好きです。

今回の景色の美しさは「山の郵便配達」の

山岳地帯と通じるものがありました。

そして、そういうものを目にすると

自然に心が洗われるというか、

自分のルーツを感じるような気持ちにさえ

なってしまうんですね。

数年前にNスペのドキュメンタリーで

「麦客」というのがあったのですが、

ご覧になられてたでしょうか?

鎌一本持って麦を刈りに行く

中国の出稼ぎ労働者を追ったものなのですが

これは本当に素晴らしい作品でした。

(確か、賞を取った作品だったはずです)

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ここ数年は (azami)
2005-11-24 00:19:22
実は、ここ数年の間(考えて見ればエビ様体制の期間)NHKはニュースもNHKスペシャルも含めてほとんど見てなかったので・・。daruさん紹介のような良質な番組もあったのですね。

ドラマやNスペなども昔の方が見ごたえのある作品が多かった気がします。

私が中国関係の番組で記憶しているのは、天安門事件の直後に放送された「ソールズベリーの中国」という番組でした。戦後40年(’89当時)の中国の歴史が中国史の専門家で米国人ジャーナリスト、ソールズベリーによって丁寧に語られていて、とても分かりやすく且つ見ごたえもあった、すばらしい番組でした。毛沢東や文革、四人組裁判、周恩来などについての説明も本当にわかりやすく丁寧で、そういう番組が放送されたことに感動したのを覚えています。(この番組はNHK出版協会より書籍化されているようです「天安門に立つー新中国40年の軌跡」)

以前、夜中にやっているアーカイブの松本清張原作、和田勉演出のドラマを見ましたが(「天城越え」です。以前ココログブログのほうに関連記事を書きました)これもよかったです。

最近のNHKは少しずつよい番組も見られるようになっている気はしますが、受信料の元は今はまだ取れてない気はしますが。ニュースは特に見ないです。

何か、「こんなの知ってます」自慢みたいな感じになってしまいましたので、この辺でおやすみなさい。

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