大学受験狂想曲

大学卒業後20年間某全国規模大手予備校の職員をやっています。仕事の中で得たリアルの情報から大学受験を読み解いていきます。

マーチ人気の激変

2009-11-14 | 日記
 私大受験の華といえば早慶ですが、最近ではその次のマーチクラスがかなり注目されてきています。なぜ注目されてきているかといえば、早慶は多少の学部間格差もありますが、人気は安定的であるのに対しマーチの人気は実際はかなり流動的な要素を持っているからなのです。
 さて、マーチといえば明治、青学、立教、中央、法政ですが、各予備校の偏差値を見ると多少の上下こそあれどおよそ同じ偏差値グループに収まっています。しかしこれは信用してはいけない!予備校の偏差値というものははっきり言うとかなり情報操作されている部分が大きいのです。予備校と大学の付き合いとでも言うのでしょうか。それと各予備校ごとに実態以上に偏差値が高い大学と意図的に偏差値を下げられている大学があります。Yゼミなどではご丁寧に偏差値分布までネット公表していますが、そんなものは予備校が勝手に作るものであって、実際綿密に調査して作っているわけではないのです。

 それではマーチ内各大学の分析を順に行っていきたいと思います。マーチの中で今後大きく人気を上げるのは間違いなく青山学院です。その要因にはいくつかありますが、最大要因はやはり文系学部の青山キャンパス回帰でしょう。青学文系学部は現在1~2年次を神奈川の相模原キャンパス、3~4年次を東京の青山キャンパスでの学年割れ就学ですが、これが2012年度入学生より4年間青山キャンパスとなります。現在青山キャンパス内で大規模な校舎建設も始まっており、昨年の2009年度入試ではマーチの中で最も多い7千人以上の志願者増(全大学でも最上位の増加)となりました。私の勤務する予備校でも各学部とも偏差値がかなり上昇しましたが、これはまだ序曲にすぎません。今後3年以内に青学は立教を抜き偏差値でもダブル合格でもマーチトップになることは間違いないでしょう。特に新しく作られた総合文化政策学部や教育人間科学部の人気は非常に高いです。またその他の既存学部の人気も上がってきています。2009年度入試では青学が大幅増で法政が大幅減でしたが、これは一見法政から青学に受験生がシフトしたように見えますが、実は明治から青学にかなりシフトしています。青学は来年度から全学部入試も導入され一般入試の定員が減少しますので合格者数も当然少なくなります。こうしたことから多分5~6年くらいで上智と同じくらいの偏差値になるだろうというのが予備校関係筋の大方の意見です。
 次に立教ですが、立教はイメージアピールが非常に上手な学校で実績的にはマーチの中でもちょっと見劣りするんですが、人気が安定的に高い大学でした。主要学部が池袋の蔦の絡まる煉瓦の校舎で4年間一貫して就学できる理由もあり特に女子受験層の人気を集めています。ただ先述の通り同じミッション系の青学が青山キャンパスに全面的に戻るとなるとやはり受験生をかなり食われてしまうだろうことは避けられないと思います。また立教の場合、現在でも池袋就学の学部の人気はかなり高いのですが、新座就学の学部はかなり厳しくなってきています。現代心理学部なんていうのは、以前は心理学科として文学部(池袋)の中にあって偏差値も早慶並みに高かったのですが、今はじつは青学心理、明治心理社会に次いで3番手になってしまっています。今後池袋の学部と新座の学部の格差は一層開いていくんじゃないでしょうか。多分新座の学部は成蹊クラスくらいになるんじゃないかと思います。
 明治ですが、この大学は受験者数がマーチで一番多いんですが、それは明治の全学部入試というのは一度の受験で複数学部を出願できることによるもので、ダブル合格になった場合安定的に人気が高い立教にどうしても劣ります。当然今後は青学にも合格者をさらわれていくことになるでしょう。したがって今後明治は各学部とも2ランクくらい下がってんじゃないでしょうか。
 中央ですが、この大学は受験生評価が非常に厳しくなります。なんといってもキャンパスの立地が悪すぎます。そのため偏差値はそれなりに高くなっていますが、じつは現状でもダブル合格した場合法学部を除けば明治青学立教にほとんど逃げられています。よく週刊誌に出るダブル合格データがありますが、あんなものは予備校が有名大学には気を使ってかなり着色されています。実際は一般入試でダブル合格して明治青学立教より中央を選ぶ受験生は皆無に近いと思ってよいでしょう。中央の場合特に志願者数のうちにセンター入試受験者数の占める割合が非常に高く昨年度は50%を超しています。3万5千円払って一学部を受験する一般入試ではもう受験生を集めにくくなってきています。中央の場合一般入試受験料として3万5千円払えばセンター入試受験料が免除されるという大盤振る舞いのため一般入試受験生の80%以上がセンター分も申し込みますので受験者数がダブル計上されているだけなのです。じつは文学部では中央と法政でダブル合格した場合6割以上が法政を選んでいます。法政の文学部は東京市谷のキャンパスで4年間就学できるからです。各予備校ともそういうことはわかっていて本当は中央の偏差値はマイナス2~3くらいさせたいわけなんですが、中央の場合偏差値を下げると大学とかOBの方がものすごい剣幕で予備校にクレームを言ってくるんですよね(苦笑)それ以外にもいろいろしがらみありますし・・・・・・。
 法政は今まで学部を増やして定員を振り分けて偏差値を上げてきましたが、まあもう限界でしょうね。昨年法政が1万人以上受験生を減らしたのは受験生が実態以上に偏差値が上がりすぎた法政ではお買い損と判断したからです。一昨年作ったグローバル教養学部なんて内部とか推薦などで定員確保して合格者数を無理やり絞ったので法政の格に見合わないとんでもなく高い偏差値になってしまいましたが、そのため昨年度の受験生は前年比30%と大激減しました。今年は多少増えるでしょうが、元々そんな学力の高い受験生が受かったって法政に入学するはずもないんですからやはり無理が祟ったといったところでしょう。

以上見てきたように、今後のマーチ内では青学がマーチトップ、次いで立教(池袋)、そして明治(国際日本学部はその不可解なネーミングと学問内容そして4年間杉並区の和泉キャンパス就学のため明治の中でもワンランク落ちます)ときて、立教新座学部と中央、法政がマーチクラスから外れる可能性が高くなってくるでしょう。なお中央法学部については別途取り扱いたいと思います。