大学受験狂想曲

大学卒業後20年間某全国規模大手予備校の職員をやっています。仕事の中で得たリアルの情報から大学受験を読み解いていきます。

東洋大学の都心回帰とその影響

2009-11-21 | 日記
中堅私大の代表格、日東駒専。その中でも東洋大学はどこか影が薄かったのが今までのイメージでした。ところがその東洋大学がやってくれたのがこのキャンパスの都心回帰。その準備はまだ工場等制限法が撤廃される前から始まっていました。東洋大学はまず白山キャンパスに隣接した敷地を購入しました。それほど広くはない土地ですが、これによって白山キャンパスを拡張します。そして法律撤廃と同時に校舎を嵐の様に建てまくります。こうして大学設置基準をクリアしそれによって川越キャンパスにあった1~2年生を白山キャンパスに吸収。4年間の一貫教育体制を成し遂げました。この東洋大学の動きに受験生は敏感に反応します。この年から東洋大学の志願者数は激増を始めました。さらに東洋大学は白山第二キャンパスを作り板倉にあった国際地域学部をここにまとめます。これも同様に受験生が大激増となりました。
 東洋大学の都心回帰の最大の特徴は大学4年間をワンキャンパスで一貫就学させることでした。もともと4年間一貫就学は国立大学が教養課程と専門課程に分断されていることに対する私立大学の最大の長所のはずでしたが、戦後の私立大学は無茶な拡大を続けて自らの長所を放棄してしまったようなものなのです。東洋大学はこれを本来の姿に戻したといっていいでしょう。東洋大学の成功を見た各大学の動きはとても敏感でした。法政、共立などがこれに続き、さらに長年遠隔地のキャンパスとの学年割れに悩んできた青山学院がとうとう2012年に全学部を渋谷の青山キャンパスに集約することを決定。青山のこの決定は大学の人気勢力図に大きな影響を与えることになりました。また実践女子は日野市のキャンパスから現在中高しかいない渋谷キャンパスの一角を高層化して2015年に主要の学部を4年間渋谷キャンパスで就学とすることを決定しました。
 ただこうした動きができる大学というのは実際はかなり限定されています。つまりもともと都心部にある程度の規模のキャンパスが存在していることが大前提です。それと文系学部すべてを4年間一貫して通わせられるかどうかが鍵です。法政の場合は経済学部や新設学部が多摩キャンパスなので、学部間で人気格差がはっきりでてしまいます。全学部を全学年出ないとあまり意味がないということです。これができた(できる)のは青山学院大学と東洋大学くらいでしょう。あとは明治なんかだと学生数が多い一方で都心キャンパスの敷地は非常に狭くまた既に高層化しきっているので現状の学年割れを続けるしかないし、中央なんかも学生数が多く、しかも都心キャンパスは多摩移転で売却してしまっているので帰れる家自体ありません。もしこれから都心に土地を購入するとしたら莫大な土地購入費に校舎の建設費用、それに多摩キャンパスを捨てるわけにはいかないので学年割れにしても学部割れにしても管理経費が倍増して間違いなく大学は破産してしまうでしょう。したがって中央大学が都心回帰することはもうありえないでしょう。
 全学部4年間一貫した本当の都心回帰ができる大学は今後人気が確実に高まり、できない大学は当然ですが人気が落ちます。4年間都心キャンパスで一貫して就学できる大学でなければわざわざ地方から東京に出てくる意味もあまりなくなるでしょうしね。似非の東京の大学では地方の受験生だけでなく首都圏の受験生もあまり魅力を感じなくなります。早稲田でも所沢にある学部や慶應でも藤沢にあるSFCなんかはそろそろ早慶ブランドだけじゃ持たなくなりますね。だから大学選びは本当に良く考えてしたほうが良いです。今までのネームバリュや情報操作された予備校の見せ掛けだけの偏差値に流されて入学してしまい、いざ入学したらとんでもない僻地キャンパスで毎日辛い思いをしながら通ったり、日大や明治法政のように大学というよりも専門学校のような高層ビルだけのキャンパスで学生生活を送るのはかなり味気ないですよ。日大は人数も多いのでその分目立つケースが多いのですが、日東駒専の中でダブル合格して一番選ばれているのはじつは日大ではなく東洋です。これは日大も学部によっては4年間都心就学ですが、法学部や経済学部などは都心にあってもビルだけですし、またなによりも日大は総合大学というよりも単科大学の集合体であるので、学部が集まることによるダイナミズムが全く感じられないためだと思います。なんと驚く話ですが、最近では中央大学を蹴って東洋大学に入学する受験生も少なからずいるらしいです。

中央と明治の中野戦争

2009-11-21 | 日記
 以前中野駅北口にあった警察大学校が移転してその13万9千平米という広大な跡地をめぐって大学間でかなり争いがあったことがありました。ネット内でもこの件に色々憶測が言われているようです。
 これについてはまず中央大学が動いたことに端を発します。ご存知のように中央大学では文系学部が通うのは多摩キャンパスですが、このキャンパスの立地はかなりとんでもない僻地にあります。キャンパス前にモノレールが通ってはいるんですが、とにかく新宿などに出てそこからまず立川や多摩センターなどといった郊外のターミナルに行く。そしてさらにそこからモノレールなのですからアクセスは不便極まりない。またキャンパスの周りには数軒のコンビニがあるだけでほかに商店などは一切無く山に囲まれてるだけの環境です。これでは受験生が集まらなくて当然です。その結果中央大学では受験料が安いセンター入試でしか受験生が増えずセンター割合は有名大学の中でずば抜けて高く50%を超してしまいました。そこで中央大学ではなんとか基幹の法学部を中心としたいくつかの学部を23区内に移すか、もしくは学年割れという形で3~4年生を都心あたりに置きたかった。それで随分と以前から23区内の土地を物色していました。警察大学校の移転もかなり以前から具体化してましたので中央大学は当然目をつけます。最初は丸々13万9千平米を手に入れれば文系全学部全学年を中野に移転させて多摩をグラウンドにでもしてしまえという目論みもあったようですが、そこまで甘くはなく(笑)全体13万9千平米のうち大学キャンパス誘致分として割かれたのは4万平米ちょっとでした。中央大学としては目論見外しでしたが、まあこれでも2~3学部くらいだったらなんとかなります。そこで中央大学はOBである中野区長に依頼しこの敷地を中央大学が落札できるよう画策しますがこれが裏目に出ました。中野区議会で跡地売却についての中大OBである区長の関与を追求する動きがでてしまいました。この追求を行ったのが御茶ノ水でかつて中央大学のご近所ライバルだった明治大学出身の区議。まあここまで言えば後は想像つくでしょう。23区内の貴重な敷地をめぐる大学間の戦争はあっさり中央大学の敗北に終わりました。そしてさらにおどろくのは中央大学敗北後この敷地を実際に買収したのは、明治(そして早稲田と帝京の3分割)でした。
 中央大学は多分これで23区内回帰の夢はほぼ捨てたのでしょう。その後は文系学部の教育は今後もずっと多摩キャンパスで行うと中大理事長が明言し、多摩キャンパスでの施設拡充の方向を決定しました。
 いやー。大学間の醜い土地戦争です。

Yゼミの青学嫌いは本当か

2009-11-21 | 日記
 ときどきネットで見ますが、Yゼミの青学嫌いって本当なのか。はい。これは本当です。予備校業界ではけっこう有名な話です。Yゼミでは意図的に青学の偏差値を相当下げられてますよ。なぜかというと、これは前にもお話したように大学と予備校の関係にあります。昔は青学とYゼミの関係は悪くなかったんですよね。悪くなり始めたのは相模原キャンパス開設あたりです。各大学にはアドバイザー的存在として予備校が受験生の動向とかの情報を流しているんですが、この時期青学はYゼミを見限ってK塾にアドバイザーを変えたんですよね。理由はYゼミがあまりにもいい加減な情報ばかりだから。この予備校は数が多いだけで実際はたいして使えないんです。かつては講師のYゼミなんていわれてましたが、今では良い先生はほとんど他の予備校に引き抜かれてしまいましたしね。そしてそれにYゼミが激怒して、この年からYゼミでの青学の偏差値は志願者数がどんなに増えようが下落街道まっしぐらとなりました。それに青学も頭に来たんでしょう。青学はこの頃からYゼミに広告とかも一切出さなくなってしまいましたね。Yゼミの行事にもほとんど参加していませんし。2ちゃん学歴板なんかを見ますとYゼミの理事長が國學院出身だから同じ渋谷の青学にコンプレックスがあるんじゃないかなんて書かれていますが、これは全く的外れです。青学は昨年度入試で7千人以上増えて私大で3位の志願者増でした。実際受験生のレベルもあがってK塾、S台、Bネッセのいずれも2012年に青山キャンパスへ全面回帰するという前提もあり今年度以降の青学入試を厳しくなると予想してますが、Yゼミだけは全く無反応、というよりなにやら青学に対する憎しみさえ感じられるほどです。その結果K塾とYゼミでの青学偏差値はかなり大きな隔たりになってしまいました。たとえば新設ですが人気の総合文化政策学部を見た場合、K塾は65でYゼミは59、S台はネット公表はしていませんがBネッセなどでは中央法を除けばマーチでトップクラスの偏差値です。実際青学の総合文化はYゼミ偏差値59じゃとても受かりませんね。まず間違いなく落ちます。多分Yゼミ偏差値だと現状は63くらいが妥当なところなんじゃないでしょうか。
 しかしこれで来年度入試での青学入学者は2年生から青山キャンパス、さ来年度入試の入学者になると1年生から4年間ずっと青山キャンパス就学となりますからYゼミも青学嫌いをどこまで続けるのかが見物ですね(笑)このままあまりに露骨だと、もしかしたらそのうち青学はYゼミにだけ入試などの情報を与えなくなるかもしれませんね。もしかしたらYゼミの模試で出た問題は青学が入試で意図的に外したりとか・・・。

関関同立

2009-11-15 | 日記
 受験生の東京集中化が一層進み関西系大学ははっきり言って非常に厳しい状況です。関西の地元志向がある受験生ならともかく、やはり東京を中心とした首都圏と関西圏ではかなり大きな格差がありますから、九州や名古屋などの受験生はどうせ一人暮らしするならやっぱり東京のほうが学生生活も楽しいし将来のためにも得だろうという価値観が強くなっています。そのため関西系有名私大は東京の上位私大よりワンランク下がった学力層になってしまっています。はっきり言ってしまえば今後私立大学で勝ち残れるのは東京の有名大学だけでしょう。

<同志社大学>
 関西系私大のNO1です。現在は文系学部の1~2年生と理工系学部全学年が郊外の田辺キャンパスに、文系学部の3~4年生が京都市中心部の今出川キャンパスに就学していますが、2013年度からは文系学部が4年間今出川キャンパス就学となります。このパターンは青山学院大学とほぼ同じですが、それでもやはり京都と東京しかも渋谷では周辺の情報環境は比較にならない差があります。青山学院はメインキャンパスへの全面回帰を教育学問研究へのフィードバックにするという大きなメリットを作ろうとしていますが、同志社の場合どうも単なるメインキャンパス回帰に留まり大きなメリットを感じられません。心理学部を田辺キャンパスに作ったのは明らかに失敗ですね。

<関西学院大学>
 私大バブルのときは全学部がメインの上ヶ原キャンパスに集まっていることもあって早慶上智に次ぎ偏差値が高かったんですが、最近はかなり厳しい状況になってしまっています。郊外のとんでもない立地にある三田キャンパスの学部はかなり不人気ですが、上ヶ原もメインキャンパスとはいっても実際はけっこう田舎にあります。バブル時期には土地が高かったのと大学が都心部に立地するのが難しかったこと、それと関学の上ヶ原キャンパスの校舎っていうのが日本でもいちにを競うくらい美しい凝った校舎ですので、ミッションスクール人気ということもあって同志社に近いくらいの高い偏差値だったのですが、最近は規制緩和で大学キャンパスが都心に回帰してますからね。そうなると上ヶ原のような田舎ではいくら外国の大学みたいなキャンパスでも受験生としては魅力を感じにくいのでしょう。そういうこともあって大学全体が明らかに地盤沈下しています。近くの聖和大学を吸収合併して教育学部を作りましたが、どうもあまりうまくいってないように感じます。お荷物をしょいこんでしまったように見えます。また国際学部を設置することが決まっていますが、あまり人気がないようですね。上ヶ原のような田舎に国際系の学部を作っても受験生はイメージしずらいでしょうし。関学に限りませんが、東京以外の大学で国際系の学部を作ってもあまり受験生の支持は得られないと思います。

<立命館大学>
 大学改革の旗手として知られた立命館、ここ15年間でものすごい勢いで偏差値も上げてきました。しかし知る人は知るようにその偏差値上昇の要因は特殊な入試形態によるもので、実態的にはあまり変わってないんじゃないかというのが大学関係者の大方の意見です。立命館は1学部だけでも十数通りの入試方式があり学部を問わない場合星の数ほどの受験機会があります。すなわち募集定員を細分化すれば1回の受験方式に集まってくる受験生が多くなくても倍率的には高くなります。受験業界では有名な話ですが、立命館の受験では偏差値の高い方式だと最終的な入学者がゼロというものもけっこうあるそうです。こういうこともあって5年前くらいから志願者数の伸びにかなり陰りが出てきました。また立命館の場合びわこ草津キャンパスという郊外キャンパスがありますがこれがかなり僻地にありますし、メインキャンパスの衣笠キャンパスもいちおう京都市内ですが、金閣寺の近くで京都市のはずれのはずれにあってキャンパスの裏はずっと山ばかりですから立地が良くないですね。この立命館も中央と同じように予備校が偏差値を下げると学校やOBがものすごい勢いでクレームをつけてきますので、表面上はまあまあの偏差値になっていますが、実際は法政か中央(法学部以外)に受かる力があれば十分合格できます。

<関西大学>
この大学偏差値はあがっているんですが、予備校の操作によるものですから信用しない方が良いと思います。実際は東京で言えば中央や法政クラスです。話題性も乏しく書くことがありません。

マーチの新設学部

2009-11-14 | 日記
明治
<国際日本学部>
この学部を通称コクポンというそうですが、この学部の内容はかなり意味不明です。一体なにをしたいのか何を目指しているのかまったくわかりません。昨年度入試では、表向きでは早稲田と日程が重なったため志願者数を減らしたということになっていますが、実際は受験生に「キワモノ学部」っぽく見られ始めているようです。最近の明治はマンガ図書館とかいったいわゆるサブカルチャーに力を入れているようですが、大学のやることとしてはちょっとピントを外してしまっていますね。どうしても明治という方には良いかもしれませんが、ただしこの学部は4年間和泉キャンパスなので駿河台キャンパスには通えません。

青山学院
<総合文化政策学部>
明治の国際日本学部と対照的にやりたいことが非常に明確なのが青学総合文化政策学部でしょう。今年で設置3年目となりますが、設置初年度にかなり人気が高く昨年度も受験生のレベルが上位層に集中した結果偏差値は上昇。そして今年はこの学部の認知度がさらに広まり受験生の人気はますます高まってきています。この学部は現在でも2年生から青山キャンパス就学ですので、その内容の関しどの高さもあって、マーチ内では明治の国際日本学部や中央の総合文化政策学部との併願関係がありますが、ダブル合格した場合には受験生はほぼ100%青学総合文化政策学部を選んでますね。都市文化のプロデュースをテーマに青山キャンパスに隣接して実習施設を設けそこにNHKのサテライトスタジオを誘致するなどかなり力を入れています。青学のイメージにも非常に適合しています。教員もかなりの大物がいますね。
新設学部というとスタートダッシュだけで実際の内容は既存のお荷物学部を改組したに過ぎないものが多いのですが、青学の場合は国際政治経済学部もそうなんですがほとんど当たりですね。

<社会情報学部>
設立初年度は非常に低倍率でどうなることやらと思いましたが、その反動で昨年度入試ではいきなり前年比400%というとんでもない増加となり、また偏差値も大幅上昇しました。文理融合学部ということですがもともと理系色が強く初年度入試では文系受験生に敬遠されてしまいました。しかし2年目からは理工系の学部との併願対象であることが認識されて一気に人気が上がってきたようです。4年間相模原キャンパス就学ですが、青学相模原キャンパスは理工系のキャンパスとしては日本の私立大学の中でもトップクラスの施設規模なので入学した後の学生の満足度は高いようです。

<教育人間科学部>
文学部にあった教育学科と心理学科を改組独立させたもので、既存の実績としてかなり高いものがありましたが、これもヒットとなったようです。青学の教育学科はもともと東京都の公立学校校長輩出で私大NO1であり、また毎年の教員合格者数もトップクラスでしたので、受験生にとってもイメージが掴みやすかったのでしょう。また教育学科と心理学科を文学部から独立させて作ったことも学問的に成功だったといえます。

立教
<異文化コミュニケーション学部>
非常におもしろい学部です。英米文学系ではどうしても立教より青学の伝統や実績の方が格が上であるため人文学系そのもので青学と勝負するのは難しい。そこでコミュニケーション学という観点で活路を開いたといえるでしょう。池袋キャンパスの就学であるため初年度からものすごい数の志願者数を集め一気に高偏差値をつけました。しかし立教の予想外だったのは青学の青山キャンパス回帰でしょう。青学にも国際政治経済学部に国際コミュニケーション学科があるので今後食われてしまう可能性は高いでしょう。ただ立教の異文化コミュニケーション学部の場合はほとんど純粋な人文系であるのに対し、青学の国際コミュニケーション学科の場合社会科学系から見たコミュニケーション学です。しかし受験生がこういった点をどこまで理解してくれるかは疑問です。

<現代心理学部>
心理学科は立教の看板のひとつだったのですが、新座キャンパスに移転させたのは明らかに失敗でした。身体表現といったダンス学科も作ってしまったし。でも立教の心理は内容的にはけっこう良いと思っています。しかし新座に4年間通うのでは高レベルの学生を集めるのはちょっと厳しいでしょうね。池袋キャンパスはただでさえ狭いキャンパスに無理して異文化コミュニケーション学部を作ったのでもう満杯ですし。噂では池袋キャンパスからまたどれかの学部が新座キャンパスに飛ばされるかも・・・という話もありますしね。

法政
<キャリアデザイン学部>
法政はわけのわからない学部を乱立させてわけがわからなくなってしまっているのですが、あえてその中でも特にわけの分からないのがこのキャリアデザイン学部でしょう。意味不明度は明治の国際日本学部と双璧です。正直言うと、受験生では主に日東駒専レベルの学生があわよくばマーチの夢を見て受験してきます。多分日大法学部に受かるレベルの学力があればこの学部にも受かるんじゃないかと思いますので一発勝負で受けてみたらどうでしょうという学部です。