マイペースおくやまの進化的考察

進化の研究は楽しい!というわけで、日常の研究生活で考えたこと、感動したこと、あるいは思いつきのネタの備忘録です。

"混合"モデルによる系統推定

2006-12-12 03:11:26 | 論文紹介
最近自分の論文のために系統解析法を色々勉強していますが、すごいものを見つけました。特にこのソフトウェアは素晴らしいです。基本的にはベイズ法による 系統樹構築ソフトです(MrBayesと類似)。ちなみに塩基データ以外に01データも扱えます。一応元になった論文を私が理解した範囲で簡単に紹介しま す(数式やそれに類する理論が苦手なので誤りがあるかもしれません)。

Pagel and Meade (2004) Syst. Biol. 53: 571-581
ソフトウェア"BayesPhylogenies"


系統解析に用いる配列データは往々にして不均一な分子進化メカニズムを持つ領域が混在していますが、その不均一性を系統推定に組み込むことは容易ではあり ません。例えば、タンパク質をコードしている領域ならばコドンの1番目、2番目、3番目といった違いが重要かもしれませんし、複数の遺伝子をデータセット に組み込んでいる場合はその遺伝子間の違いも重要かもしれません。機能的なRNAをコードする遺伝子ではステム構造やループ構造といった違いが重要だとさ れています。
私達が与えられたデータセットから系統推定を行うにあたり、どのようにモデルを立ててこの不均一性を評価すれば良いでしょうか。これまでに用いられてきた 主な方法は、ガンマ分布により不均一性を近似する方法と、あらかじめデータセットを分割してそれぞれに異なるモデルを与える方法でした。
しかしこの論文で著者らは、あらかじめデータセットを分割することなく、各々のデータサイトに最適なモデルを振り分ける手法を提唱しています。例えば2つ のモデルを使うことだけを事前に想定して、あとはそれぞれのモデルを最適化しつつデータセットを最も良く説明できるようにモデルをサイトごとに振り分けるということで す。
実際に著者らはこの方法をこれまでに解析されたいくつかのデータセットに適用し、従来の手法と比べ尤度スコアが大幅に上昇することを報告しています。
またこの方法を用いれば、逆にあるデータセット内で異なる分子進化のメカニズムがどのように分布しているかを事前の知識無しに評価できます。

このPagel博士は他にも系統樹から祖先状態を復元する手法の第一人者で、彼の仕事はどれも本当に画期的で、感動させられます。

系統学は本当に奥深い、、、。でもついて行くのがかなり大変ではありますが。

追記:幾霜様のご意見(トラックバック参照)からも分かるように、データセットから系統樹の尤度を最適化するようにモデルを分ける手法を手放しで受け入れるのは危険という見方もあります。
系統推定のためのモデル構築アプローチのひとつとしては面白いということで、今のところ選択肢として考慮するくらいが良いというところでしょうか。

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