浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

お邪魔虫の小泉さん

2006年07月13日 | Weblog
中東訪問中の小泉首相、「最後の御奉公」でなんとか世界の耳目を集めたかったようだが、現地ではまるで相手にされず、観光旅行に毛が生えた程度のものとなった。

 12日にはイスラエルのオルメルト首相と会談を行なったが、これは予定されていたもので、オルメルト首相とすればキャンセルしたかったというのが本音のようだ。今オルメルト首相は、パレスチナ武装勢力だけでなく、北に接するレバノンの武装勢力とも対峙しており、「この非常事態にもうあと数ヶ月で辞めてしまう日本の首相と今さら会ってもなんになるのか」と側近に語ったそうだ。

 パレスチナ武装勢力には、イスラエル兵2人を連れ去られ、2人を連れ戻そうとガザに軍事侵攻、70人以上のパレスチナ人を殺したものの、未だ成果は何も得られていない。一方、レバノンのヒズボッラー(神の党)には8人の兵士を殺され、2人の兵士を拉致されてしまった。それに対しても、軍事行動を開始したものの見通しは立っていない。しかもそのイスラエルの軍事行動も、「天才バカボン」に出てくるケーサツカンのごとく八つ当たり気味で、レバノンの首都ベイルートの空港の滑走路までミサイル攻撃をしている。

 そんな状況の中に空気を読めないライオンヘアーのおじさんに気楽に飛び込んでこられてもオルメルト首相も対応の仕様がない。思わず前述した不満を側近に対して口にしてしまったようだ。会談後、共同記者会見を行なったが、日本のTVをご覧になった方は、小泉首相が主役であるかのような印象を受けたであろうが、実際は欧米記者団からオルメルト首相に軍事作戦に対しての質問が集中していた。小泉さんはいわば「刺身のつま」状態で、随行の日本記者団に退屈気に苦笑いをしていた。

 今夕にはパレスチナ自治区の実質上の首都であるラマッラに入り、アッバース大統領と会談する予定であるが、まあ軽くあしらわれて、「マーアッサラーマ(さようなら)」ということになるのだろう。

 TV各局は昼のニュースで、小泉首相が中東和平のイニシアティブを取ろうとしているかの報道を行なっているが、現地での「小泉首相訪問」の報道はほぼ押しなべて小さな囲み記事であることを最後に付け加えておきたい。

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